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199X^8 コミックアートの知識に不足を感じた話

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  • 2019/11/19 20:27

どうもアート屋です。

先日、国立のアートギャラリーshuuueさまにて行われていた展示、『199X^8』に行ってきました。

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武蔵野美術大学の芸術祭に行ってきたときに川又麻由さんという方の変形キャンバスを用いた作品が気になったので、その際告知されていた展示にもせっかくだし行ってみますかとなった次第です。『も☆ららら☆とりあ~む』だったかな。作品タイトルもよかった。

 

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コミック系の展示ですね。2枚目の左半分がその川又さんの作品だったのですが、芸祭で気になった作品と同じような変形キャンバスのものは拝見できず。

 

ただ中央あたりの少し大きめの女の子の顔のアップのやつが変わっていて、ベニヤのパネルに油彩でグレージングのように薄く塗り重ねており、下の木目が透けて見えました。板が劣化しないかちょっと心配ではありますが、面白い表現ですね。

 

この日は写実絵画系の友人と一緒に見に行ったのですけれど、彼はこういったコミック系の美術作品に触れることがあまりなくて、アニメ的な絵柄をアート作品としてキャンバスなどに描く意味がいまいちよくわからないというようなことを言っていました。

 

「村上隆さんが日本のオタクカルチャーを美術史に乗せたところからの発展系ですかね?」「基本的にはそうですね」というくらいのやりとりはあったのですが、私もコミック系のアート作品を制作していながらコミックアートには美術的な文脈での理解が追い付かないことがよくあり、この日もそこまで考察を語れない作品が多かったです。

 

自分のやっている作品はプラスアルファで美術作品のオマージュだったり日本の文化や社会問題・価値観・死生観などだったりをそれぞれの切り口で再構築していることを説明できるのですが、他のコミック系アートの人がやっていることは見てわかりやすい人や詳しい説明に触れる機会があった一部の人を除けばほとんど私もわかっていないわけです。かわいいとかかっこいいとかサブカルエモエモしてるとか、それ以上のことが言えないことが多くて。お恥ずかしながらどうやって美術史に乗っけてるのかいまいちわからないことが多いジャンルなんです。だからこそそれをきちんと学びたいと思っています。

 

 

このことに気付くきっかけとなったのは私が7~8月に新潟のNSG美術館で個展をやったとき、元新潟市美術館のスタッフで現在ギャラリーを運営されている方が古民家の戸板にマンガを描いた作品『異説 藤五郎狐』をはじめとしたコミックアート作品群を見て私に言った一言でした。

 

「君といい竹井くん(竹井友輝さん:漆ででっかいマンガを描くアーティスト)といい、最近こういうマンガをアートにする面白い人が出てきているけど、よくわからない。我々の上の世代がやっていた前衛芸術と、君たちのやってるマンガの現代アート、その中間の世代にいる私たち世代はその過程をやっていたはずなのに、どこか流れが飛躍しているように感じる。私たちを置いていくなよ!どういうことなのか教えてくれよ!」

 

私自身の制作コンセプトは自分で把握しているし、竹井さんのやっていることもいくらかはわかっていました。

(漆という日本の伝統工芸的手法を用いて現代日本を代表する工芸であるマンガを描くこと、『魔法少女』『カタストロフィ』『パラレルワールド』『侵略者との戦い』などのマンガにありがちなテーマを戦略的に薄っぺらく扱いながらも内容は断片的で完全読解は不能であり、概念としての『マンガ』を提示していることなどは想像できます。密度が高く圧のある絵柄であることが記号化された内容にパワーと説得力を持たせています)

 

 

ですので「マンガのアートはよくわからない」という言葉が真の意味で理解できたのは、冒頭お話ししたムサビ芸祭のときでした。

他の人が作った『アート作品としてのコミック絵』で、完成度・質は高いのだけど中身がわからないという感覚をここで初めて味わい、この人の展示は見ておきたい、あわよくばご本人にお話を聞きたいと思ったわけです。

 

川又さんの隣に作品があった野澤梓さんなどは近頃特に話題になっていて、村上隆さんのカイカイキキが主催するギャラリーZingaroで昨年個展をされた気鋭の作家さんなんですけど、この方はステッカーボムというステッカーを下地が見えなくなるまでベタベタ貼り重ねる加工の視覚感を絵で再現したものから表現を発展させているらしいんですよね。具象画の重ね合わせによって抽象化が為されて概念認識が歪む絵画空間に、BLなどのテーマを加えることで性認識への揺らぎを視覚化して現代のジェンダー問題に言及するといった具合なようです。

他の方の作品にも、そういったなにかしらのプラスアルファの要素があると思われるんです。

 

この日在廊していらしたのはグループ展の企画者であり参加作家でもある金田涼子さんだけでした。いろいろとお話を伺ったのですが、なかでも印象的だったのが「上の世代の人たちはマンガの絵であることを戦略的に用いてそれ自体に意図を見出だしますが、私たちの世代は自然でありのままの表現として当たり前にマンガの絵を用いるんです」といったニュアンスの発言でした。(解釈を間違えていたらごめんなさい)

 

私はおそらく金田さんの言う『上の世代』と『私たちの世代』の中間の感覚を持っていて、「描きたいように描いたらマンガの絵になっちゃうんだけどこの嗜好を作品の機能として活かしたい」と思っているんですね。

 

私のなかでは写実的な図像と記号化されたマンガの絵柄は機能的にはほとんど等価です。何を描いているのかは伝わるし、あとは好みの問題であって。

 

それどころかむしろ私自身のパーソナリティーにマンガの絵柄は染み付いていて、私と社会、私と世の中といった関係性を描くうえでマンガの絵柄を選ぶのはある意味自然と言えます。

 

ただおそらく違うのは、「マンガの絵柄で描くのはなぜ?」と聞かれたときにより合理的な選択理由が必要だと強く感じていることかと思います。ですのでテーマによってはマンガの絵柄を使わない場合もありえます。

 

 

つまり私たちが息をするようにマンガ絵を描く世代とすれば、金田さんたちの世代は息をするようにマンガ絵を描くことを当然と思っている世代といった感じがします。より純度の高いコミックアーティストですね。コミックアート文化の発展を肌で感じました。

 

同時に現代の世代はマンガの絵柄で描くのが当たり前になっているというわけですから、逆に言えばマンガの絵柄をいろいろこねくり回しながらポストマンガ的な個性を研究する時代が終わりを迎えつつあるようにも思えました。マンガの延長線上からさらに大きく踏み出さなくてはならない気がします。

 

かといって古典絵画に回帰したり、西洋の真似事をしても認められるわけはないので、新しい表現の方向性を見つけていかなくてはならないでしょう。まずはやっぱりもう一度、日本文化の掘り直しから。カワイイカルトが上手く乗っかる新たな手法を探していきたいものです。

 

とりあえずゲームを媒体にした作品を作りたい今日この頃。技術とか全くないんですけども。いろいろ模索中です。うまいことやっていこう。

 

今日はここまで!ではまた!


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