心のモジュール理論を含め発展した、ケンリックの欲求ピラミッドについて概要をまとめてゆきます。
みなさんは「マズローの欲求5段階説」というものをご存知でしょうか。
アメリカの心理学者マズローが提唱した理論で、「欲求には段階があり、より下層の欲求を満たすことで上層の欲求が表れる」というものです。
5段階は下層から順に次のようになります。
生理的欲求>安全>愛情・所属>承認>自己実現
また「生理/安全/愛/承認」を欠乏欲求と呼び、本能と結び付け、「不足している際に埋めようとするもの」と定義しています。
「自己実現」については成長欲求と呼び、本能より高次元であり、「より自分らしくありたい」という欲求であると定義しています。
ケンリックはこのマズローの欲求5段階説について一定の正しさ(動機は複数存在する/ある動機は別の動機に優先することがある)を認めつつも、進化の視点を加えて再構築する必要があるとして、「ケンリックの欲求ピラミッド」を提唱しました。
ケンリックの提唱する欲求ピラミッドは次のような7階層から成ります。
生理的欲求>自己防衛>提携>地位・承認>配偶者の獲得>配偶者の維持>子育て
マズローとの違いは大きく次の4点です。
1.「配偶者の獲得」が生理的欲求から分離して上位にきていること
2.「配偶者の維持・子育て」が新しく定義されていること
3.「自己実現欲求」が廃止されていること
4.欲求が「積み上げ」ではなく「重ね合わせ」であること
マズローが定義した「自己実現欲求」についてケンリックは「自己実現の大半は承認のカテゴリーに収まり、その究極動機は「俗っぽい」目的に基づいていると語っています。つまり、社会的な地位を上げ、配偶者を得て子孫を残すという目的に。
進化的な視点において、繁殖は自然選択結果が反映される最も重要なプロセスです。
また生物の行動・心理が進化の結果であるとするなら、発生する欲求が「本能より高次」である必要性がありません。そんなリソースの無駄遣いをした個体は自然と淘汰されてゆくことでしょう。
したがって自己実現欲求の根本も生物学的な動機に根差したものであるという考えに基づき、このピラミッドは構成されています。
またこれらの欲求は、上位の欲求が表れると下位がなくなるわけではなく、それぞれは同時に存在し、周囲の環境・状況によって表面化するそうです。
前回の心のモジュール理論から、今回はケンリックの欲求ピラミッドについて概要を解説しました。
次回は、ケンリックの欲求ピラミッドを根源的な動機として現れる「7つの下位自己」について解説していきます。
あといくつかの前提解説を行った後、表題の「なぜ学習に意欲的でない子どもがいるのか」について仮説構築を行っていく予定ですので、よろしくお願いします。










