ファイザー社とバイオエヌテック社(BioNTech SE)はCOVID-19向けワクチンの開発臨床試験において、11/9(月)の初めに「成功した」という中間データを発表しました。
発表によれば、複数のワクチン候補のうち、mRNAベースのワクチンが90%以上の有効性を確認できたとのこと。ただし、この中間データの段階では、まだアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可(緊急使用認可 : FDA Emergency Use Authorization)は適用できません。緊急使用認可を取得するには、第III相臨床試験の結果が安全で、かつ効果的であり、利益がリスクを上回っていることを示す必要がありますが、現段階では安全性データが不足しており、もう少し時間がかかるとしています(それでも11月中には安全性データを確立するとしている)。
この発表を受けて、株式市場や為替相場は一気にリスクオフの流れに動き、円相場はとんでもない急騰を見せました(ショート勢が焼き尽くされましたね)。
しかし、今回発表された合成mRNAを利用したワクチンには、大きな問題点があります。それはこのワクチンの保管条件です。ワクチンは化学的に非常に不安定で、安定的に保管するには常に-70~-80℃(-94F)以下の温度に保つ必要があります。
-80℃の環境は、当然ながら一般的な冷蔵庫では実現できません。具体的な例でいえば、-79℃の昇華温度を有するドライアイスで常に冷やし続ける必要があるということです。
これは、ある程度大きな病院なら不可能ではないでしょう。しかし、発展途上国や地方の小さな病院では、輸送手段を含めて、なかなか実現できない問題といえます。なお、米国の有名な大病院の一つであるミネソタ州ロチェスターのMayo Clinicでは、このような超低温の保管環境がなく、今回のワクチンを取り扱うのは困難であると、ロイターのインタビューに答えています。
現在、ファイザーでは米国、ドイツ、ベルギーに有する同社の配送センターから、ドライアイスを使用して冷凍ワクチンバイアルを空輸と陸送の両方で、超低温を保ったまま10日間輸送する計画を持っているといいます。
しかし、それでも世界中で急増するCovid-19罹患者に対して、平等にワクチンが接種できる可能性は、非常に低いのではないかと予想できます。
今後、FDAの認可が下り次第、日本での使用に向けて、厚労省をはじめとして輸送機関各社との官民連携をもって配送計画が練られるかもしれませんが(同時に薬機法と倫理委員会の審査を通すための治験もスタートさせるかどうか、そこまでは不明)、正直、ワクチン開発を手放しで喜ぶ状況にはないかな、と個人的には考えています。
では、今日はこのへんで。