もう8月になってしまいましたが、5月に米国特許庁(USPTO)で特許されたアップルの特許公報を紹介。すでに特許登録になっているので、単にアイディアを出願したというものではなく、少なからぬ費用をかけて特許権を取得しているものです。製品化の可能性は少なくない、と考えることができます。
蛇足ですが、日本では特許権を取得するのにかかる費用は概算で35万円~80万円程度といわれています。
さて、今回紹介する特許は、書誌的事項としては以下のとおりです。
Patent #: US010656719B2
特許公報公開日:2020年5月19日
出願日:2015年9月28日
発明の名称:Dynamic input surface for electronic devices
発明の名称にDynamic(動的)とあり、これがこの発明のキモです。では、さっそく中身をみてみましょう。
請求項1と2とを見てみるとなんとなく言わんとしていることがわかると思います。
請求項1.
A dynamic input surface comprising: a metal contact layer defining an input area; a group of indicators selectively illuminated based on a gesture performed on the metal contact layer; a sense layer distinct from and positioned below the metal contact layer; a drive layer positioned below the sense layer; a compliant layer positioned between and coupled to the sense layer and the drive layer; and a rigid base layer positioned below the drive layer, wherein: a size of the input area dynamically varies from a first non-zero size to a second non-zero size, based on the gesture; and a subset of the group of indicators indicates a visible boundary of the input area.
請求項2.
The dynamic input surface of claim 1, wherein a position of the input area on the metal contact layer dynamically changes, based on the gesture.
ざっくり訳すと、請求項1は、「入力領域を画定する金属接触層と、金属接触層に対して実行されるジェスチャに基づいて選択的に照明されるインジケータ群と、金属接触層とは別個であり、金属接触層の下に配置される感知層と、感知層の下に配置される駆動層と、感知層と駆動層との間に配置されると共に、表示層のグループのうちの第1の非ゼロサイズから第2の非ゼロサイズへと動的に変化する剛性ベース層とを含む、動的入力面。」といったところ。
請求項2は、「前記金属接触層上の前記入力領域の位置が、前記ジェスチャに基づいて動的に変化する、請求項1に記載の動的入力面。」というものです。
明細書の背景技術のところを読んでみると、この発明の位置づけがよくわかります。
従来のラップトップのキーボードやトラックパッドというのは、PCの筐体からむき出しの、筐体の外側にあるものでした(まあ、当然ですよね)。ただ、そのような構造だと、外部からの損傷を受けやすいものといえます。そして、特にトラックパッドについては、ラップトップにおいて固定された位置にあるものですが、これは、「その位置」にあることが必要というわけではないし、なにより、大量のスクロールまたは他のトラックパッド機能を伴う動作を実行するときに、固定寸法であることが不利に働くことがありました。
(なんだか、ラップトップの根本的な概念をくすぐられている感じがしますね)
そこで、従来のトラックパッド機能を金属筐体の中に入れてしまい、トラックパッドとしての入力領域の大きさをジェスチャに基づいて動的に変化させられるようにしたというわけです。設定された入力領域は(LED等で)イルミネートされ、領域の境界がわかるようになるとのこと。
この特許発明が実装されれば、ラップトップの剛性を上げることができ、トラックパッドの物理的保護が可能となります。また、従来の固定寸法のトラックパッドに比べて根本的に概念の異なるものとなり、新しい使い方、可能性が広がるものとなりそうです。
トラックパッドが大きいと入力時に邪魔、という話は10年ほど前によく聞かれたことでした。しかし、この技術によれば、トラックパッドを「任意の大きさで」「好きな場所に」設置するということができるわけですから、キーボードを使う際においても、操作性がかなり向上しそうですね。
個人的に実装してほしい特許技術の一つです。
では、今日はこのへんで。