【契約民主主義FAQ】啓蒙と実証実験について

本編はこちら: 契約民主主義

 

A. 曖昧さについて

Q1. 「審議による意見提案」を実際に実験してみてはどうか?

実験には仮説が必ず必要である。そして、この記事にあるような数多くの思考実験の結果、私はなんとなく実験に難しさを感じている(Jan 4, 2020時点)。理由はおそらく「限定的な機能しかないが専門家の選定だけできる政府」「見ず知らずの国民からなる審議員」「予算獲得にやっきになる行政」「国民に手綱を握られた行政」という登場人物をそのまま実験系に持ち込むことの難しさから来ている。加えて、DAO的にインターネットで参加者を募ろうにも「国民と税金」あってこその契約民主主義なので、泥臭い準備あるいはぶっつけ本番のような難しさを感じている。

レッシグの「審議による意見投票」と、本件の「審議による意見投票」に差があるとするなら、レッシグのそれは改憲レベルの議題を、理想的な専門家とともに、本当に無作為に選ばれたのかわからない審議員を用意して、一つだけやればよい」という点だ。 「1)半端な議題を 2) 半端な専門家とともに 3) 素行不良者や老人を含めた仕事を持っている忙しい完全な赤の他人たちと 4) いくつも審議をする」 これをやると学びは多いと思われるが、実験系としてコストも高い。

また、提案にもいくつか類型があり 「1) 立法レベルの新規の短期プロジェクト 2) 立法レベルの定常的な行政組織が必要な長期プロジェクト 3) 改憲 4) 政府や裁判員などの任命と罷免 5) 既存行政に対する改善提案あるいは予算停止提案」のそれぞれを試したい。

さらに、イレギュラーケースとして「 1) 地方の暇な老人がネトウヨ化して残念な提案を大量に出し、提案を却下する必要性が生じるシナリオ 2) 宗教法人が資金力を活かして多数の提案を実際の審議まで通してしまうシナリオ 3) 対立する専門家2名の資金源が政府とGAFAであり、明らかにバイアスがかかっている審議 4) 審議員同士の多くが知り合いで、レクチャーの内容によらず結論が端から決定しているシナリオ 5) 言論統制局や腐敗した提案選別局が存在すると仮定して、如何に「改善提案」によってその行政を国民が停止させることができるか」を実験する必要があろうと思う。

Q2. 既存の国がパブリックブロックチェーンを信用するとは思えないんですが?

与党が民意のもとに推進すればよいだけなので、新政党で与党になるか、現与党の改革のネタにするか、新しい国で与党になるかすればよい。なんにせよ広い認知と理解が前提条件になるので、そちらが優先かなと。

Q3. 「契約民主主義党」を結党して与党を目指してみては?

非中央集計政治団体の政党トークン のインセンティブを上手く設計して、N国党的に勢力を伸ばすのはありかもしれないと考えている。

 

B. セキュリティや持続性について

懸念なし

 

C. アクセシビリティ

Q1. 既存の国家では導入しようがなさそうに見えるが、どうするのか?

個人の主観だが、単純な民主主義も各種メディアの発達によりハックされてしまったし、独裁がダメなのは分かりきっているので、遠からず「次の民主主義」は必要とされる。中国と台湾のように、「より民主的な分離した小国」の存在は、民衆の反乱のタネになりうるので常により独裁的な国の脅威となる。そういう国家独立の際の政府のシステムがオープンソースに転がっていることに価値がある。

 

D. スケーラビリティ

Q1. 営利組織に応用できないのか?

インフルエンサーのサロンビジネスや法人を、税金とメンバーシップの比喩で理解しようとするとヒントがあるかもしれない。

サロンの場合、これまでのような会費の金額ではなく、もう少し多くの金額を「納税」させることを考える。そのお金は主催者がカストディとして口座に預かるわけでもなければ、全額彼の売り上げになるわけでもなく、国庫に蓄積され、提案によって引出される。サロン参加者なら誰でも提案でき、提案選別局と造幣局がサロン主催者だということだ。興味深いことに、サロン主催者は自国通貨のみを納税通貨として認めることで租税貨幣論的に通貨に価値根拠を与えられるし、MTPL(物価基準の貨幣理論)にしたがって税制を用いた物価調整と新規通貨発行を試みることができる(通貨発行のエージェンシーリスクに対して法的にどのような規制がかかるかは要検討)。参加者はメンバーシップから離脱することでサロンの公共財の受益権を失うため、リピート客として定着する動機にもなる点が興味深い。

法人の場合は、売り上げ入金口座がどうしても銀行口座になってしまうことがある。例えば銀行がステーブルコイン建ての口座を採用しているならば、あるコントラクト口座を定義して、そこへの入金はコントラクトへの入金と同義として処理することも可能ではある。すべてプロジェクトの単位で事業が設計されることとなり、社長の業務としては提案選別のみになるだろう。マネジメントの方法論が制限されるため全ての組織に当てはまるとは思えないが、ギルド型でフラットな組織には向いているだろう。さらに言えば、社員でなくとも提案できるので、DAOと法人の間のような個人事業主の寄せ集めのような組織携帯も可能だろう。まさにTheLAOの法人版というわけだ。

サロンと法人のふたつを止揚した、インフルエンサーを中心としたギルド組織というのが本質的なイノベーションになる予感がしている。特にインドネシアのような個人事業主が7割を占めるインフルエンサーが隆盛でかつ信用基盤の欠如から雇用リスクが極めて高い国において、レピュテーション管理やプロジェクト失敗時のペナルティを組み込むと、爆発力があるように見える。世界との契約のロジックで言うなれば提案選別局が法的に特定可能なエンティティなので、Uberのように提案選別局が雇用しているという判定になりえる点はひとつ潜在的な技術課題だろう。

攻撃ベクターとして、法人としてこの仕組みを利用したときの、提案に基づいたプロジェクトは、もし売り上げが上がったときに国庫に売り上げを入金するインセンティブがないように思われる。また、本来提案とは公共財を維持する行政絵が資金調達するためにデザインされているものであり、営利企業の売り上げを立てる部門と食い合わせが悪いようにも見えている。提案行政と民業の対比のような構造が法人についても見られないか気になるところである。審議員も非常に少数であり互いに知人になり得るとよくないため、社員でなくとも提案できるという性質を利用した、法人とコミュニティの間とも言えるサイズ感で行うべきだろう。

 

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2020/01/07 15.50 ALIS 10.00 ALIS
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田舎の思想家です
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