クリプト

Proof of Excellenceとしての契約民主主義

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  • sg42
  • 2019/12/24 04:14

* We rebranded this idea as #InternetOfDemocraticity. We'll provide more sophisticated version in English sooner :) / 契約民主主義は#InternetOfDemocraticity として順次リブランドされます。より体系化された資料も随時提供されます。

 

序文

読者に、今の民主主義を愚直に続けていけば状況は改善すると思っている人々がいたら、胸に手を当てて考え直してほしい。

読者に、いずれは綻ぶことに目を瞑って独裁制を肯定する人々がいたら、胸に手を当てて考え直してほしい。

読者に、弱者を棄民していることに無自覚なネオリベラリストがいたら、胸に手を当てて考え直してほしい。

読者に、自分だけ豊かであればいいと、政府からの自由を追求するサイファーパンクがいたら、胸に手を当てて考え直してほしい。

この契約民主主義は「愚かな民衆」の意思決定も、「賢く優しい独裁者」のようなファンタジーも、肯定していない。

そのような読み方をしてしまったときは、以下の関連するカテゴリから疑問を解消してほしい。

政府と軍事について / 税と通貨について / GAFAと民業について / 未解決課題

提案について / 審議員について / 大学と専門家について

啓蒙と実証実験について / ソフトウェア開発について / コントラクト設計について

 

本編

Content image
Thomas Jefferson (1743–1826) - wikipedia

An Informed Citizenry is the Bulwark of a Democracy

「よく知らされた市民」は民主主義の砦だ。

−Thomas Jefferson (1743 – 1826),

 

 

ここに民主主義の次としての「契約民主主義」を提案する。

本件は営利目的の事業になりようもなければ、導入や実験も極めて難しい。唯一我々にできることは「どんなに民主主義によって世の中が混沌としようと、より良い民主主義を探す努力を辞めてはならないし、試すことを恐れてはならない。」という認識を共有し、各自にとって最も善なる社会のために行動を起こすことだけだ。

 

はじめに、民主主義の問題点を挙げる

民主主義の問題点

1. メディアやSNSの影響力をそのままに、忙しい中で表面的な理解で投票する人の割合が多くなりがちであること、あるいはInformed Citizenryを前提としているにもかかわらず、投票者の大多数がInformed Citizenryになりきれていないこと。

2. 腐敗していたり無能だったり不要だったりする行政構成員の代表たる政治家と公務員たる官僚と支配的立場にいる大企業の間の不透明なコミュニケーションの中で利権のために創設されること

3. (2)の利権機構を民意で廃止するための労力と工程が多すぎるために腐敗速度に対して浄化速度が追いつかないこと

4. 政府による抜本的な改革も、自らの支持母体となる組織には抗えない。また、政治家生命を考えると本質的に必要な施策もゲーム理論的に打ち出すことができない

5. 資金力のない政治家は政治資金のために金策に苦しむため、結果として利権を求める傾向にある。清廉潔白な政治家たるためには票田と資産が必要であり、世襲議員が強くなる傾向にある。

6. 優れた政策や優れた政治家が選ばれる構造にない

7. 多くの場合、政治家が我々を代表していない

要は、ゲーム理論的に一般人が不利なのである。

そして我々人類はこれまで、技術的にそのようにしか民主主義を実装できなかった

 

 

そして契約民主主義の趣旨を要約すると

契約民主主義の骨子

【大目標】

1. 人々が自らの関心のみに集中して暮らしていても、全体としてはまともな民主制共同体として改善されていく制度設計を実現すること

2. 次々に発展する技術を世界中から積極的に取り込むため、世界中だれでも政策提案できる社会であることを目指しながらも、政府がビッグブラザー化したり乗っ取られたりしないことを仕組みで担保し、より持続可能な社会を目指すこと。

 

【概要と効果】

1. 「審議による意見投票」により独裁制の難点であるテクノクラシーも、民主制の難点であるポピュリズムも克服し、強力だが社会に混乱を招きうる技術の導入の最終決定権を "Informed Citizenry" に持たせることで、政府の暴走衆愚政治も回避すること。

2. スマートコントラクトで税収を管理し、税収の利用権を全世界の人々に拡張することで自由な政策提案を可能にすることにより参政権が拡張され、純粋にその共同体にとって優れた政治家と優れた政策が世界中から選ばれるようになること。

3. いつでも誰でも簡単に行政と法律の是非を問うことができるようになることで、立法・司法・行政の実態を常に最善の状態に保つことができるようになり、少なくとも我々に必要だった合理的な移民政策、合理的な少子化対策、合理的な福祉予算配分ができるようになるし、加えて硬直した社会構造を脱し、行政の効率化、民業の効率最大化、デフレ脱却の施策も打てるようになること。

4. 社会契約をスマートコントラクトに記述し、憲法・司法・行政をその管理下に置く新しく優れた仕組み・道具立てが世界中の人々の暗黙の当たり前水準を引き上げ、オープンソースで共有されたこの仕組みを利用した政党設立や改憲運動が世界で同時多発的に起こること。

つまりは、生活者としての我々の地位を守りながら、知識集約的な政治をうまく実現しようというわけだ。

 

 

何もない現状からだと何もイメージできないかもしれない。

しかし、TwitterやAmazonのような巨大なサービスも初めはガラクタに見えた。支持する者が増えた未来を想像できるか否かで、本件に対する印象は大きく異なることになるだろう。

 

 

 

 

定義

本件は以下の要素で構成されている。

1. 立法・改憲・法改正はスマートコントラクト上の提案によって行われ、あらゆる行政は提案を経て設立・廃止される

2. 政府の機能は本質的には提案選別と構成員ID管理のみであり、それらが機能不全ならば罷免される

3. 提案は全世界誰でも行うことができる

4. 提案は「審議による意見投票(Deliberative Opinion Poll)」に基づいて構成員からランダムに選出された審議員(e.g. 100名)と専門家(2名)による審議を経た匿名投票により選定される

5. 提案はプロジェクトによって執行される

6. 提案を執行する予算は税歳入および通貨発行益により賄われる

7. 予算はvestingされており、廃止提案で返還される

8. 納税は「スマートコントラクト(世界との契約)」に送金されること

9. スマートコントラクトへ税金が未納である構成員は、当然これまでの民主制社会と同様だが、政府によって法に則り罰される

10. この仕組みを使用する共同体の通貨はERC-20として定義され、中央銀行管理か任意のトラストレス通貨を使用する

 

 

 

ショートカット: よくある質問の一問一答

政府と軍事について / 税と通貨について / GAFAと民業について / 未解決課題

提案について / 審議員について / 大学と専門家について

啓蒙と実証実験について / ソフトウェア開発について / コントラクト設計について

 

 

 

各論・詳細

1. 政府の機能は本質的には提案選別のみであり、提案は構成員に委ねられる

政府とは、その領域内で最大武力の保持勢力である。その武力を以てして司法が可能になり、法治共同体として徴税と行政を行う。警察、軍事、司法、病院、大学などの政府の基本的な機能はすべて、行政にカテゴライズすることができる。そして行政の設立や廃止は提案(立法)により行われる。

本件は、民主主義の問題点を解決することを目的としている。そのために、テクノクラシーへの対策とポピュリズムへの対策が必要になる。したがって、参政権を拡張して構成員と政治の距離を近くすることと、提案の審議に必ず決定権を持たない専門家を導入することを提案する。これは、多くの機能を政府から取り外し、政府が明確に何を目的とすべきで、構成員が明確にどう参政すべきなのかを、仕組みとして提示することができる。

提案の評価は、政治家と官僚ではなく、構成員から無作為に選ばれ、対立する2種類の専門家によるレクチャーを受けた審議員が行う。つまり、提案者は世界中誰でもその土地のためになる提案であれば現在の仕事を変えずにスマートコントラクトから予算を引き出すことを試みるチャンスがあるし、その提案の良し悪しはその土地に住む構成員たる審議員が最終的に意思決定する。審議員らは専門家との議論を経てポピュリズム的なバイアスをミニマムにできる。審議員については後に詳述する。

先端技術が人権および憲法と矛盾することもあるため、憲法すらも自由な提案と審議で改憲されるべきである。直接投票は世論操作と印象に左右されるので実質的に改憲に向かない仕組みである。

この仕組みの根幹にはスマートコントラクト(世界との契約)の恩恵がある。これまで政府が徴税を行う際、税金は直接彼らの財布(国庫)に入っていた。したがって、厳重に国庫へのアクセスを法務局という行政が管理する必要があったし、誰にでも引出し権を与えるわけにはいかなかった。しかるに、政治家が国庫からある法案執行のためにお金を引き出すまでの「社会的距離」と、私がある社会課題を解決する提案のために国庫から同じ金額を引き出す「社会的距離」は、間違いなく一般市民たる私の距離のほうが遥かに遠かった。今回、スマートコントラクトを財布として政府が指定することにより、特定の主体が金銭を預かる必要がなくなり、引出し手続きを行政によって行う必要もなくなり、財布から予算を引き出せる条件をプログラムで定義することが可能になったため、その条件を満たす限り誰でも国庫から税金を引き出すことができるようになった。したがって、誰でも提案してよいし、誰でも行政を作れるという構造が可能になり、参政権の形が変わったのだ。

 

2. 立法・改憲・法改正は構成員による提案によって行われ、あらゆる行政は提案を経て設立・廃止される

権力は腐敗する。腐敗した行政を変えるにも、腐敗した行政と政治家の数が釣り合っていない。加えて、行政と政治家の距離が近すぎるが故に、政権や政治家の人気が長くなると、行政の廃止が自己批判めいたものになる。わざわざ新しい候補を一人ずつ立てて、いったい幾つの腐敗した行政を打倒できるのだろうか?

誰でも提案してよいし、誰でも行政を作れる制度設計ならば、行政廃止の手数が足りないなんてことはない。いつでも予算とりあげのプレッシャーがあるため、常に健全な監視と外圧が行政に行き届くことになる。これにより、優れた行政しか残ることはできないし、優れた能力のある構成員が参政するために必要だったコストとフリクションは大幅に軽減され、一種の競争原理が民主主義に導入されることとなる。

 

3. 提案は構成員であれば誰でも行うことができる

提案者同士が競争せねばならない構造によって、全員が政治家であり、全員が提案者として能力を高めなければならなくなる。BitcoinのProof of WorkがASICを発展させたように、契約民主主義は政治家の提案力を競争的に発展させる。いわばProof of Excellenceである。

 

4. 提案は「審議による意見投票(Deliberative Opinion Poll)」に基づいて構成員からランダムに選出された代表による間接民主制により選定される

憲法学およびサイバー法学を専門とし、"CODE" を著したローレンス・レッシグの最新作 "They Don't Represent Us" で紹介される「審議による意見投票(Deliberative Opinion Poll)」に則った提案選定機構を提案する。この方式はすでにモンゴル、アイスランド、アイルランドで実施されている。

この方式は、無作為に構成員から抽出された統計有意な数(レッシグの例では100名)の審議員が、提案に関する知識を事前に1週間以上かけて学習し、理解度テストを通過できた者だけが提案の可否に意思決定を下せるというものだ。

間接民主制にない「審議による意見投票」の利点としては、「我々の代表にたる集団が意思決定をできる」ということだ。

そして直接民主制にない「審議による意見投票」の利点としては、「統計有意な形で我々の認知リソースを節約できる」ということだ。

提案の提出から審議員の選定、審議員の教育、提案可否の決定までの期間は3ヶ月~12ヶ月程度で完了するイテレーションであるべきである。問題の両面を正しく簡潔に説明できる2名の専門家が提案に対するオンライン教材とテストを用意する必要があり、提案者の提案コストにはこの専門家への支払いが含まれていなければならない。この方式の問題は、専門家のコストを支払ったからといって提案が採択されるとは限らないことであり、したがって大量に提案を提出するたびに専門家採用による損失期待値が大きくなりえる点である。一方で、審議済みの「判例」が社会に蓄積するため、無駄になるわけでもない。重複していそうな提案を審議にかける妥当性を、過去の判例を根拠に棄却できるプロセスが存在してもいいかもしれない。

また、審議員は1人1票の原則から構成員なら誰でも選ばれうる。各人の学習能力や意欲はそれぞれであり、全く学習しないこともありえる。したがって理解度のテストを行い、テストを通過した審議員のみが投票権があるものとすべきだろう。そしてテストの正当性を担保するアカデミックの純粋性と独立性がこれまで以上に求められるために、大学は学術的純粋性のために税金で維持されるべきものである。大学のキャパシティの範囲内において提案を処理できるため、提案のコストは大学のキャパシティに反比例して大きくなるべきである。大学のキャパシティの拡充こそがよい政治に繋がるProof of Excellence構造がここにもある

審議員となることで日常生活を一定期間阻害されるために、免税などの金銭的補償もあってしかるべきである。審議義務免除の実施は、慢性的に行われると参政権の欠如を意味するので、悩ましい論点である。

改憲についても審議を用いるべきである。改憲は目立つ見出しと感情的な印象で判断される面があり、なかなか変わらない。そして我々を代表していると感じられない政治家による投票で変わるべき性質のものではない。4年に一度の頻度で裁判官選挙の要領で頻繁に憲法を世間の目に触れさせるのが重要だと考える。

 

5. 提案はプロジェクトによって執行される

本来、提案は行政によって執行されるべきである。しかし、行政と聞くと年功序列制の役所をイメージするように、固定的な組織や設備を用意することはしない。提案に根ざした政治であるが故にプロジェクトベースでの執行になる。

審議員による投票結果をもとに提案者は税金を「世界との契約」から引き出すことができるが、その資金でプロジェクトを立ち上げ、提案に示した定性・定量を目標として達成に尽力する。ピグー補助金で済むなら補助金を民間に分配するタスクフォースを組成すればよい。同様に、「規制・禁止・許可・ピグー税」を民業に対して判断するタスクフォースに関しても腐敗と固定化を防ぐために4年に一度解体・再提案にかけるべきである。

プロジェクトに必要な建物や設備は原則一般的に使い回しが効くアセットにするべきで、その備品調達自体がひとつの提案を構成することもあるだろう。

 

6. 7. 8. 提案を執行する予算は税歳入および通貨発行益により賄われる/予算はvestingされており、廃止提案で返還される/納は「スマートコントラクト(世界との契約)」に送金されること

 

スマートコントラクトで税収を納める国庫を実装することは、新しい社会契約である。そして、政府が構成員の口座残高を知る権利を持たないデザインも、新しい社会契約である。

ではどのように納税金額が定められるのか?全員一律である。全員一律の納税額では、貧しい人間に不利ではないか?それはQuadratic Fundingにより解決できる問題である。

構成員は自分の稼ぎを好きな審査済み提案に対して投じて良い。しかし全額がその提案に供給されるわけではなく、平方根がかけられた金額だけが提案に届く。残りは国庫に送金され、他の提案の財源となる。これにより典型的な「政策の美人投票(コモンズの悲劇)」が起こらずに済むのである。しかも、構成員はある程度強制された気持ちを持たずに裁量で納税でき、政府は構成員の口座残高を知らずとも徴税できる。

国庫の予算はいかなる政治力を用いても強制的に引き出すことはできず、良い提案を行うことでしか引き出せない。

また、予算は一括で引き出されるわけではなく、Vesting機構によって月々分に分割ロックされて引き出し可能額が開放されていく。ある進行中のプロジェクトに対する「廃止提案」が審議により可決された場合、Vestingされている予算は国庫に返還される。

 

8. スマートコントラクトへ税金が未納である構成員は、当然これまでの民主制社会と同様だが、政府によって法に則り罰される

政府とそれを信任する構成員が、スマートコントラクトへ納税することを法で定めている。したがって、期日までに税金が未納である構成員は刑事罰の対象となる。スマートコントラクトに法を連携させる形になる。

税収のうち、基本的な政府の構成要素を維持するための歳入と、提案を実行する予算については異なる残高としてスマートコントラクト内に保管される。

どのような権力者であれ提案プロセスを経なければ予算を得られない絶対的な金庫が、政治を功利主義に寄せることを可能にしている。また、年度予算の使い切りのような不誠実かつ非効率な構造も撲滅されており、余った予算は次年度に繰り越されることから、さらなる提案品質改善へのインセンティブとなる。

 

9. この仕組みを使用する共同体の通貨はERC-20として定義され、中央銀行管理通貨かトラストレス通貨を使用する

その地域だけで流通する独自の通貨を、その共同体の中央銀行がコントロールする。あるいは、DAIやBTC, ETHを通貨として使用しても良い。現金紙幣については、ERC-20の送金と引き換えに必要分だけを造幣局が交換する。発行ルールは提案により制御され、MTPLに基づいて可能な限り緩やかな物価上昇を目指されるが、ハイパーインフレーションを招きうる危険な制御はERC-20のコントラクトのレイヤで制限されている必要がある。

 

 

再掲: よくある質問

政府と軍事について / 税と通貨について / GAFAと民業について / 未解決課題

提案について / 審議員について / 大学と専門家について

啓蒙と実証実験について / ソフトウェア開発について / コントラクト設計について

 

 

興味深い特性

1. バイラル性

極めて有意義かつ旬な議論がそこで行われるはずで、共同体は公共放送を用いてコンテンツを発信することで、広報・透明性・教育などを兼ねることができる。

学術的に優れた人材も好んでその土地に移住することになるだろう。

2. 慣性

一度この仕組みを使い始めると、仮に共同体に停止命令を出されようが他共同体に侵略されようが、提案と審議をしなければ国庫から金は引き出されない。

つまりは、その領土を良くすることにしか使えないお金であり、そこに納税することの絶対的安心感は、政治不信など介在する余地はないし、侵略にすら耐性がある絶対性は過去に類を見ない。

3. 健全な内部告発

クールジャパン機構が民間から107億円出資、公金から756億円出資でファンドを組成し、196億円を民間出資者関連会社に還流させた事件を例に取ろう。

「改善提案で削減できた予算の3%(仮)をもらえる」とするだけで内部告発インセンティブが生まれる。

実社会でクリプトエコノミクス的設計が可能になり、合理的で知識集約的な行政が可能になる。これをこれまでは法とルールで行っていたが、限りなくシステムで行えるようになるのだ。

3. 技術と世論のすり合わせのベストプラクティスとして

米国フリントで起きたAI使用停止の意思決定のような「政治生命を守るための民意への忖度によるキャンセル」は反知性的だ、これを防ぎ、新しい技術を構成員が適切に享受できるようにする必要がある。上記の水道の件においては、「AIによる重み付けをされた水道管検査ではなく公平にランダムな水道管検査をするという非合理的な意見」が如何にして採択されたかについては、「任期付きの政治システムであること」「民営化した水道局を公営に戻した歴史があること」「実際の水質と価格で評価せずにプロセスに焦点が当たっていること」など、過程にいくつも論点があるが、少なくともその各論点においてInformed Citizenryによる審議があれば、おかしな決断であることは未然に分かったであろう。

技術は遅かれ早かれ憲法と衝突する。何も対策を打たなければそこで限りなく無駄が生じる。技術と憲法を親和させる技術が必要なのだ。

4. 税金を運用で増やすということ

スマートコントラクトベースなので、共同体の会計がダッシュボードで行える。つまり、歳入と歳出が「年度」を無視したリアルタイムなものとなる。

したがって予算の使い切り制約はない。提案ベースの政治なので官僚機構の肥大化も競争原理により抑制される。国庫に常に予算が蓄積するようになる。これを $cDAIや$LEND で運用するようにした共同体は、他共同体に比べ資本効率が良くなるだろう。

放っておいても国庫が増えるなら、下手な提案には意味がなくなる。タイトで効率的な提案を求められるようになり、政治の質も極めて高くなるだろう。

個人的にはこの運用益は「専門家を養って提案のキャパや審議の質を上げる」というところに再投資されるべきだと考えている。その再投資の意思決定すらも提案ベースで行われるので、とにかく国庫に金を増やすと提案が増えるという構造を考えるのが重要である。

「暇な構成員はみな自分の興味ある分野の提案を考えながら暮らしてください」くらいのプロパガンダはあっても良いと考えている。このパラダイムにはベーシックインカムも終身雇用公務員もないが、提案と提案プロジェクト雇用はある。そして優れた政策提案によって最適に整備された市場で民業が繁栄している。

5. 効率化の果て

行政は継続的に予算を食うために非効率である。市場原理に基づいた行政を設計できる箇所は積極的に利用したほうが、より競争力のある提案となるだろう。例えば具体的には、区画整理をハーバーガー税で実装し、地価向上を提案評価に用いるロビン・ハンソン教授のモデルなどがそれに当たるだろう。

また、この世界観での民業(審議を含めた市場原理)側は、GAFAが究極的には食い尽くすだろうと考えている。言い換えると「契約民主主義の『政治のProof of Excellence構造』のASIC」はGAFAということだ。

しかし、これはディストピアではない。なぜなら視点を変えると、GAFAが良い提案を出して、市民生活を良いものにしてくれていると見ることができる。スマートコントラクトと、専門家と構成員による審議がハラリの言うホモデウスを善なるものにするのだ。

GAFAというグリゴリに鎖をかけられるのは、スマートコントラクトだけだった、というわけだ。

 

再々掲: よくある質問

政府と軍事について / 税と通貨について / GAFAと民業について / 未解決課題

提案について / 審議員について / 大学と専門家について

啓蒙と実証実験について / ソフトウェア開発について / コントラクト設計について

 

総論

この記事は「世界との契約 x 国の加護」シリーズにおける最も価値あるソリューションとして本件を位置づけるものである。つまり、「最高のスマートコントラクトとは何か?」という問いに自ら答えた結果である。非中央集権でもなく国家でもない曖昧な概念であることから、ブロックチェーン開発者からもエスタブリッシュメント層からも理解は得にくいだろうが、世界中の人々から求められるスマートコントラクトになるだろうと確信している。

本件は国政稟議を通過せずとも、村の単位から試すことができる。その村の上位に位置する共同体の通貨を用いない経済圏を構成する一助となる。このとき共同体の構成員によって、より上位に位置する税(例:沖縄県民にとっての日本国税)の納税義務がいかほどあるのかは定かではない

国税の納税義務を免除できるからと、世界中の共同体がこぞって口コミで導入を進めるような事態があれば、このアイデアは私の手を離れて自ずと実装されていくだろう。

国家はそれぞれに既得権益構造を持ち、既得権益の拡大のために互いに紛争を起こす。一方でウェストファリア条約以降の社会においては、紛争にどちらが勝とうと、共同体の視点からすると「自身の安全保障アライアンス」を構成する主体がリプレイスされるだけである。したがって、洗練された共同体を各自で育むこと(=国家のDIY)が明日の社会を堅実に作っていくことになるのである。

FATFや現代の世論とは真っ向から対峙することになるだろうが、匿名送金(=つまり国という人格が他の自然人や法人の保有資産を知る権利を認めない態度)を初めから認める制度設計は存外可能なのであり、そのようなオープンさや柔軟さから生まれる余白のある制度設計こそが、急激に進歩する技術に淘汰されない真に持続性ある制度設計の、本質的な基盤なのだろう。余白のあるオープンエンドな制度設計なくして存続なし。

私は「国家はダメだ」「DeFiはダメだ」という頭ごなしな批判には、体制側だろうが暗号通貨側だろうが権威があろうがなかろうが一切耳を貸さない。そのような態度からは一切のイノベーションが生まれようがないことを重々承知しているからだ。自ら生み出すことに互いに真摯にありたい。

最後にもう一度。「どんなに民主主義によって世の中が混沌としようと、より良い民主主義を探す努力を辞めてはならないし、試すことを恐れてはならない。」

 

謝辞

カナゴールドさん、Enigma情報ありがとうございます。

Sexy Substratorさん、数多のフィードバックとプロトタイプ実装をありがとうございます。

上田岳弘さん、インセンティブの不在の指摘ありがとうございます。

イベさん、協力ゲーム構造の指摘ありがとうございます。

すみっこyasukoさん、農村地での挙動に関する考察ありがとうございます。

たけぞう.ethさん、専門家や審議へのGAFAや政府やSNSの影響に関する考察、ありがとうございます。

そして過去の私、ようやくあなたの直観を具体化できました。ありがとう。

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