田舎の経済は協力ゲーム的だ。抜け駆けは許されない。グローバルの経済は競争だ。出し抜いてなんぼだ。さて、田舎の経済や日本の閉じた経済はしばしば繰り返しゲームで説明される。フォーク定理という名前で言及されることもある。
平たくいうと、「あるコミュニティに悪評がしっかり記録されるとき、そのコミュニティから退出できないなら、ズルをすると損をするので協力した方がいい」という話である。コミュニティ内の悪評の伝播速度や記録期間やコミュニティ間の悪評の交換など、深堀すればいくらでも楽しめそうなテーマである。
法人という仕組みや本人確認という仕組みも、このジャンルに当てはめて考えることができる。逆にいうと、permissionlessな系では基本的に評判は蓄積しないので、みなネオヒルズ族みたいなもんだと思って設計したほうがいい。
さて、翻ると、「繰り返しゲーム(法人やKYCなどによる評判の蓄積を利用した途中退出できない関係性等)を構成してしまえば、将来の期待利益が明らかに詐欺による利益を上回る限り、システムは安定して動くだろう」という予想も立てることができる。
これを "Repeated Game Assumption" と個人的に呼んでいる。
規制の厳しい業界となった中央集権取引所も "Repeated Game Assumption" に則って動いているし、0xのRelayerもMakerのPrice feedもPoWもその一種に見える。
トラストを定量化する切り口として良いと思っていて、いずれ何か生まれると思う。
PlasmaでエスクローTxを用いれば Compound Financeに類似したノンカストディアルなアプリケーションが作れそうなことがわかってきたが、"Repeated Game Assumption" を満たすpartially trusted third partyを前提にしている。普通にトラストを使っているが、冷静に資産保全性の観点から見るとそこまでわるいものでもない。Blockstreamのサイドチェーンも彼らによって言語化はされてないが、同じようなノリなんだろうと思っている。
LNのこれも "Repeated Game Assumption" を暗黙に前提している。
Ethereum L1のコントラクトはなまじ表現力があるので、一切Trusted Third Partyを許さない姿勢で書いてしまいがちだが、多くのケースでそこまでしないでいいように思える。
先日、世界初のテスト動画を出したPlasma Fast Finality(Hub Payment ChannelをPlasmaベースでチューニングしたもの、あるいはBetter Raidenみたいなもの)についても、対面取引である小売決済用途であれば払いきりの決済基盤として使ってもいいし、客単価(Customer Average Value / CAV)の低めな通販であれば「在庫がなければ返金します」という信頼ベースの話で問題ない。
LNだと返金にルート確保が必要なので上記の発明が必要らしいが
C2Cアプリケーションのような売り手にアイデンティティやトラストを求められないケースのみ、partial trusted third partyの信頼を借りてエスクローTxを構成すれば解決する。トラストも使いようということだ。
余談だが、不動産や通貨発行などのCAVが高い用途は不正ダメージがでかいので、L1で潔癖症的に作った方がいいし、セキュリティの高いチェーンで作ったほうがいい。そうでもなければtoC向けのこまごました用途はPlasma + FFやPlasma + EscrowにTPPを組み合わせて作ってしまえばいい。あと、運営を完全に匿名にしてlegal liabilityを回避したいユースケースもL1で中心なくつくるべきだけど、法人としてはそれはおすすめしない。個人としては好きにすればいいと思う。
英語圏を含めて誰も言ってないので不安感はあるが僕は脳汁出てるのでたぶん世界が遅れて着いてくると思う
新しいノンカストディアルアプリケーションの設計論がこれから発見されていくはずで、もっと肩の力を抜いて宗教戦争せずに開発できるようになると思う。