私の友人が、翻訳出版プロジェクトを立ち上げました。
『Kids Like Us』という、自閉症スペクトラム障害の子どもの思春期以降(恋や自立に関する問題群)を描いた本の翻訳です。もし良ければ、プロジェクトのご支援をお願い致します。
少々長くなりますが、上記プロジェクトのページから、友人の言葉を引用致します。
自閉症スペクトラム障害のお子さんを育てる親御さんが、口を揃えて言うこと。
「この子はどんな思春期を迎えていくのか。やがてどんな大人になっていくのか。」
子どもが自閉症スペクトラム障害という診断がおりてから、様々な療育を施した方も沢山いることでしょう。特に幼児期は、病院や療育施設で様々な療育が準備されているため、親子共々忙しい日々をおくるかもしれません。そして幼児期の療育が終わると、今度は学校に入り、学習支援に走り回る日々が始まります。そうこうしているうちに、子どもはあっという間に育ちます。親御さんのほうも悩んだり不安になったりすることもあるでしょうけれども、この時期は割と明確な「支援」の形が見えています。
けれども、その先は…?
その先、つまり、自閉症スペクトラム障害の子供が自立へと向かい始める「思春期」以降のヴィジョンが、なぜかぽっかりと空白になってしまうのです。
恋をしたり、「友情」を築いたり、あるいは自分の才能や将来の夢について考えを巡らせたり、そんな思春期の子供たちの毎日を、自閉症スペクトラム障害の子供たちがどのように迎え、感じていくのか。それが見えてこない不安を抱えながら、とにかく幼少期の療育と支援に奔走せざるを得ない親御さんがなんと多いことか。親御さんにとっては、その先は荒野に投げ出されるかのような不安感をおぼえるに違いありません。私自身もそうでした。自閉症スペクトラム障害と診断された我が子の将来への不安ばかりが先に立ち、幼少期は「療育博士」のようになっていました。通常の幼稚園生活に加え、言語療法、作業療法、音楽療法、運動療育、そして家庭療育…。我が子も私も休む暇は全くありませんでした。ある日、我が子に「僕、疲れた。ママといるときは、もっとゆっくりしたい」「自分が『できない子』だと思うのはもう嫌」と言われたとき、「自分は一体何をやっているのだろう」と立ち止まることになりました。子どもの将来のためにはどうすることが良かったのか、私は一体我が子にどうなってもらうことを目指していたのか、その答えがまるで見えないままに子育てをすることは、本当に辛いことでした。
どんな子育てだって、正確な航海図を描き出すことは難しいですよね。それが自閉症スペクトラム障害の子どもの子育てであればなおこと。
そんな親御さんたちのたくさんの声が、この本を翻訳しようという私の気持ちを後押ししました。どちらかというと使命感に近いです。特に、暗中模索の状態で療育や支援に駆け回っている親御さんへ。ぜひ本書の翻訳出版プロジェクトをご支援ください。マーティンが最終的に「自分は自分のままでいいのだ」と受け入れることができたように、きっと読み終わった後に、「私は私のままで、我が子は我が子のままでいいのだ」と思うことができます。この読後感、ぜひ味わってみてください。思い描く未来が、いつの間にか優しい色合いに変わっていることに気づくはずです。
今回の翻訳プロジェクトの意義は、上記の友人の言葉を読めば、一目瞭然ではないかと思います。しかし、蛇足ながら、今回の翻訳プロジェクトについて私自身の思うところを、以下より述べさせていただきます。
『どんぐりの家』という漫画があります。これは、特別支援学校高等部を卒業した思春期以降の子ども達とその両親達の物語であり、障害を持つ子ども達の仕事場(自立の手段である就労先)を社会に作り出すまでを描いた漫画でした。
私の友人が翻訳しようとしている『Kids Like Us』においても、障害を持つ子どもの思春期以降が描かれています。特に、恋という、生物としての人間にとって無視できない話題に焦点があてられています。この点において、『Kids Like Us』は『どんぐりの家』と同じく、障害を持つ子どもの自立に関する、多くの人に広く読まれるべき重要な本だと私は考えています。
私は現在、特別支援学校小学部の教員採用試験を控えて、受験勉強に励む日々を送っております。臨時任用教員として某小学校で特別支援教育コーディネーターをしていた関係で、去年12月に第47回沖縄県特別支援教育研究大会に参加する機会に恵まれました。そこで、かつて特別支援教育の学習指導要領の編集に係わった経験のある大学教授が、「特別支援学校の卒業生が、卒業後に自宅に引きこもったり、暴力を家族に振るったりしている事例はけして少なくない。特別支援学校を卒業した後のことも視野に入れて、我々は子ども達を教育しなければならない。」と述べておりました。卒業したら終わりではなく、そこからが自立を巡る本当の闘いの始まり。この現実を、特別支援教育に携わる教員の卵として、改めて強く感じています。
障害を持つ子どもの自立と社会参加を可能にすること。これが、特別支援教育の使命です。この道を目指す私のような人間にとって、障害を持つ子ども達が思春期以降に直面する就労や恋の話題は、絶対に避けては通れないものです。自立と社会参加に密接に関係したこれらの現象を無視したまま、特別支援教育に従事することは決して許されないでしょう。私はこれらの分野にも精通する必要があります。『Kids Like Us』はそのための重要な参考文献であるため、翻訳プロジェクトへのご支援をお願いさせていただく次第です。ご協力の程何卒宜しくお願い致します。