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オリエンタル・ウィンド・チャイムの設計書

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  • sphiarno-88
  • 2020/04/12 02:19

 

◇序

Content image

 

本当は自分で作りたいものがあった。

風の音を聴きながら、それがオリエンタルな響きを伴って、自分自身を新たな感覚の世界へ旅立たせてくれるとしたら。

アイデアはそこにある。作ってみたら販売するのもいいかも、とか考えたりした。しかし、自分はどうも臆病風が吹きやすい。今回、楽器がテーマでなかったなら、公表すらしなかっただろう。

それは楽器だろうか?

少なくとも、自動で音を奏でる機械とは言えそうだ。

それは音楽的といえるだろうか?

それは分からない。なにしろ、まだ作ってないのだから。

 

 

今回は、オリエンタル・ウインド・チャイムの設計書と題して色々書いてみる。少し早いが、夏休みの工作にはちょうどいいかもしれない。

 

◇目次

全体の容量が大きく、すべてを確認するのに30分程度かかるので目次を表す。全体をコンパクトにするため、「おまけ」は有料にしている。

<オリエンタル・ウインド・チャイムの設計書>

◇序
◇目次
◇提案
◇表記における仮定
◇現物作成時の注意点
◆標準チャイム(Ⅵ=Ⅰ、Ⅱ=Ⅳ、Ⅲ=Ⅴ)
◆アジアンチャイム(Ⅰ=Ⅲ)
◆飛翔チャイム(Ⅴ=Ⅶ)
◆さくらチャイム(Ⅳ=Ⅵ)
◆マニアチャイム(Ⅶ=Ⅱ)
---(以下は有料)---
◇おまけ1 ペンタのハッタリ技術
◇おまけ2 ギター用の図
◇おまけ3 Python Code (平均律のみ)

 

◇提案

黒鍵作曲法、というのがある。鍵盤楽器の黒鍵の部分を自由気ままに弾いたら、それなりに気持ちのよいメロディになる、というものである。

また、音楽療法に使用される特殊な木琴のような楽器がある。こちらも好きに叩いたら、伴奏者(音楽療法士)がそれに合わせて伴奏で飾り付けるというものである。

どちらも、基本的にはペンタトニックである。ただ、後者の方は飽きさせない工夫が必要で、演奏者をハイテンションにするちょっとした裏技(別のキーを借用する。例えばCメジャーペンタを弾かせて、キーをFやDmにする)があったりする。

Content image
微妙にブルージーなペンタの響きがします

ペンタトニックとは、いったいなんなのだろう。5音のスケールではあるのだが、自由に演奏できるのなら自動でランダムに演奏できないか。街で、長さを変えた金属の棒をぶら下げた鈴を見る。この金属棒に5音を割り当てたら、面白い響きがしないだろうか?

都合のいいことに、自由に鳴らして独自の雰囲気を醸し出す5音の組を、これ以外にもいくつか知っている。今回は、その中でもあまり偏屈でないものを提案する。話は簡単だ。7音を順番に環状にならべて、ペンタトニックの形を保ったままぐるぐる回したものを取り出す。下図左が早い。

 

Content image

ペンタトニックの旋律の自由性は、その構成にある。白鍵上で順番に弾くと不規則にジャンプしているように見えるが、5度圏上で見ると7音階に比べてより中心にあることが分かる。つまり、ペンタトニックの方がより本源的であると言える。

そして、5度圏はドミナントにしたがって回転する(上図右)と仮定すると、シの音が最も古く、ファの音が最も新しいと言える。現代風の用語で言えば、シは口うるさい老害であり、ファは生意気な新参者である。トライトーンの不協和は、老害と新参者のバトルによって起こると妄想していただいても、さして差し支えはない。

これらの妄想から、7音をランダムに鳴らしてもうまくいかないのは、バトル発生源となる音と、利害がありながら平穏であろうとする音が同居している矛盾にある。したがって、自由であろうとするならこれらのどちらかを2音排除したら良い。といえそうだが、こんな妄想よりは実際に奏でていただいた方が早いだろう。

 

◇表記における仮定

表記について仮定をおいておかないと、いろいろ問題がおこる。しかし、もし意味がわからないときは一向に読み飛ばしていただいて構わない。

表記方法が、伝統的なクラシック音楽とポップ音楽で異なるのだが、使用しやすいポップ音楽の表記を使用する。平行調は同一のものとみなし、またそれを拡大解釈して平行モードも同一のものとみなす。そして、それらを代表して主長調上(またはアイオニアン上)の表記を共通して使用する。例えばキーがA minorの場合、Amやaは、Ⅵmとⅵになる。(クラシック表記ではⅠ、ⅰであり、ややこしい)

また単純化のため、すべて相対音程とする。周知であろうから、ⅰの音だからと言って「ピアノのドの音と合わないじゃないか」とか言わないでほしい。

そして、ペンタトニックはⅠ△69や、Ⅵm7(11)というような表記でも表現可能ではあるが、数字の嵐となってもいたずらに混乱するだけである。ここではキーをCとした場合のAマイナー・ペンタトニックをCメジャー・ペンタトニックと同一のものとみなし、それをa音からa,c,d,e,gと5音全て押さえ、その形をキープしたまま白鍵上を平行に上昇(低音基準でa,b,c,d,e,f,g)したそれぞれの5音スケールを、下から

a:Ⅵ=Ⅰ
b:Ⅶ=Ⅱ
c:Ⅰ=Ⅲ
d:Ⅱ=Ⅳ
e:Ⅲ=Ⅴ
f:Ⅳ=Ⅵ
g:Ⅴ=Ⅶ

というように表記することにする。下に例を示す。

Content image

 

また調律については、平均律と調和音程の2つを記載する。

平均律は、f(x)=f0 * 2 ^ ( x / 12 ) を使用する。

調和音程は、純正律でもピタゴラス音階でもない独自のものだが、完全4度の関係(3:4)を優先しながら、適度に長3度の関係(4:5)を適用するものとする。

他の楽器との調和を意図するのでなければ、比率がわかりやすい調和音程が使用しやすいだろう。

 

 

◇現物作成時の注意点

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材料は東急ハンズで売ってある。細い金属管になっているものでも、バーになっているものでも、叩いて音が響けば十分だ。番線は響かないので面白みがなく、また鉄釘も硬すぎるので難しいことは確認している。間隔を保たせる上部の保持部材も必要だろう。

仮定を長さのみとしているため、実際には穴を開ける場合や素材、大きさなどの影響を受けて、思ったような成果が得られないかもしれない。また平均律の場合は、設計時点で完全な調和音程とならず、かといって調和音程の場合は普段聞きなれない響きがするかもしれない。

金属で作成した場合、少しずつ削ることで音高を上げることができるので、そこで調性はできる。その場合、他の音との影響性を考慮しなければならないが、影響のネットワーク図(特に調和音程を仮定した場合)をそれぞれ掲載したので参考にしてほしい。

ネットワーク線の両端の2つの音を鳴らして、きれいに響いたらOKだ。◎がもっとも影響が大きいので早期に決定し、逆に破線で繋がっているものや、ネットワークの端にあるものは最後にまわして良い。ただし、後から音高を下げるのは難しいので、すこし長めに切っておいて短くする方法が良いと思う。

長さは、ある長さを1とした場合の比長で示しているので、基準とする好きな長さにあわせ、それぞれ掛けるといいだろう。有料部分のつまらないプログラムをコピーするのも手だが、手計算でも十分早いと思う。

また、最低音を任意の音に変えるのもいい。その場合は、最低音にしたい音の金属棒の長さを、2倍にしたものを作ればいい。

 

◆標準チャイム(Ⅵ=Ⅰ,Ⅱ=Ⅳ,Ⅲ=Ⅴ)

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まず、一般的なペンタトニックである。全ての民族の共通の音階などとも言われている。

同時に掲載したⅥ=Ⅰ、Ⅱ=Ⅳ、Ⅲ=Ⅴ、ともにフォームは同じであるが、機能は異なる。アンサンブルのときは留意しなければならないが、単体使用であれば特に機能の違いを気にすることはない。

アンサンブルの場合の個人的に感じた注意点も述べる。Ⅵ=Ⅰはキー全般で良。またⅥ=Ⅰ/♭Ⅶも良かった。Ⅲ=Ⅴ/T(Tonic)はスリリングな感じだが、Ⅲ=Ⅴ/D(Dominant)はあまり面白みを感じなかった。Ⅱ=Ⅳは基本的に使いづらく感じたが、Ⅱ=Ⅳ/Ⅴは実質Ⅱm7/Ⅴと同じでこれは良かった。まあ、非常に主観的なものなので使いようなのかもしれないが。

既に述べたように、老害と若造がいないので「平穏な村」というやや野暮ったい感じもするサウンドである。「ヨナ抜き」という演歌の作曲方法もあるように、なにか古臭い感じもしそうだが、必ずしもそうではない。Perfumeあたりを調べてみると、近未来的サウンドの中にも、この標準ペンタトニックが使用されているのがわかると思う。

アレンジも加えやすい音階なので、迷ったらこれを作ってみるのがいいだろう。ⅲやⅵの音が規定の高さに届かなければ、ブルージーな感じになるだろう。

 

 

◆アジアンチャイム(Ⅰ=Ⅲ)

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アジアンチャイムと名したが、一般的にはOkinawa Scale(琉球音階)と呼ばれるものである。「島唄」というTHE BOOMの曲を知っていれば、だいたいそんな感じだ。この音階でなぞれば、すべて「島唄」のようなものができる。ガムラン音楽もこんな感じだったと思うが、ずっと聴いていると異様なトリップ感を味わえる。

 

 

◆飛翔チャイム(Ⅴ=Ⅶ)

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「飛翔チャイム」という名称が適切かは不明だが、主観的イメージでそのようにした。ロックンロールでも出てくる(相対位置が異なる)し、故・小川文明氏いわくは「ヤン・ハマー・スケール」である。スティーブ・ヴァイ的な響きもするし、ワクワク冒険に…という感じだ。これと同主調関係でⅥ=Ⅰに行ったり来たりというのも面白い。

 

 

◆さくらチャイム(Ⅳ=Ⅵ)

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華やかな名前であるが、どちらかというと陰陽のある「和」の感じだ。「さくらさくら」の歌の構成音なのでそうした。この手のものは「君が代」もそうであるが、主音がふわふわしている。陰陽五行思想の影響もあり、ややマニアックで深い。

 

 

◆マニアチャイム(Ⅶ=Ⅱ)

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マニアチャイムと名したが、これに魅力を感じる人は少ないかもしれない。非常に不安定で経過的なイメージがする。どうだろう、実際に環境音となった場合に行動心理に影響を及ぼすだろうか。案外良かったりするのだろうか…なにか、次の世界への入り口を提示しているのかもしれない。

 

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