19年6月にBank of England(BOE)が発表した新しい時代の金融の在り方/中央銀行の姿勢を示した"Future of Finance"について若干遅れましたが読んでみて、概要&示唆をまとめました。デジタル通貨/課税条件しかりで金融行政周りがゴタゴタしているところでありますが、先立って取り纏めたBOEは先見の明があるなあと。
しっかし、この時代の金融行政ってコントロール範囲が広かった過去と比較すると難易度が非常に高いんだろうなあと。
<所感>
・新しいTechや高齢化/気候変動/複層的な経済など、外部環境のVUCA化は地理的にはGlobal/業種的にも全産業に波及する中、本レポートは新しい金融ビジネスと規制の在り方に方向性/示唆を投げかけている。
・中央銀行の機能/役割は決済システムの円滑/効率/安定的な運営がメインだが、近年の新しいTechで当該領域のアップデートへの対応は必須。対応のためには業務範囲の広範化/深化(活動分野を広げる)を行うべき。
・規制当局はこれまで以上に民間/行政の垣根を低くして回転ドア方式(米国のような)にするのが一番の早道とみられる。
・社内組織の有り様への示唆としては、柔軟な対応しうる組織への変革提言が参考に。
-継続して専門性を持つ職員の配置/育成は実施(基盤として)
-教育/研修はより広範なナレッジ集積のために「Open/旅に出す」方式へ
┗他国との連携や、異業種との意見交換(職員交換派遣,データサイエンティストの採用も)
-勤務体系も提示体系からプロジェクトベースの働き方とし、評価基準にプロジェクト参画数も追加
<BOEレポートの内容サマリ>
[概要]
・技術革新/デモグラ変化/気候変動等による外部環境変化が金融や経済に与える影響を検討、結果として下記2点が重要と認識。
└1;Tech影響/低炭素経済対応には業態全体の低コスト化/高効率の実現が必要。
└②;地政学要因(新興国台頭/Brexit)が金融取引における英国の役割を変容させる
・究極的に技術/経済の変化が伝統的な規制/経済モデル/中央銀行のありようを変化させる
[BOEへの提言;3分野/9提言]
A.デジタル経済への貢献
1:未来の支払/決済システムの造成
・支払/決済の慣習変化に伴う、決済インフラ/規制を改善する戦略策定が必要
┗社会に最適なCash/Digitalの両方の決済についての共同ロードマップ策定
┗複雑化したシステムとリスクを反映/対応しうる規制促進
┗Techで円滑化したクロスボーダーな決済システムの促進/規制
2:技術革新を可能とする金融インフラ整備
・実業や金融のアップデートに必要な決済インフラ整備や、BetterなDID(デジタルID)の支援
・各国当局と連携した取組整理/進展を行う(航空管制のように)
3:データ経済の支援
・機械学習に基づく意思決定への関与を深める
┗責任ある AI 原則の策定(公平性/説明責任/透明性などが基盤)
┗SMBむけ貸出に関する与信データの整備支援
B.経済の重要な移行支援
4:国際基準の整備
・効率的/安全な資本移動を維持するには強固な国際基準が重要
┗新興市場のニーズ対応
┗金融サービスの将来像の策定と対応促進
5:低炭素経済への円滑な移行促進
・低炭素経済への移行は、リスク/機会の双方を経済/金融部門にもたらす。
┗気候変動に係る情報開示をデフォに
┗気候リスク管理を金融機関に組み込むとともに、ストレステストを実施
6:変容する人口動態への適応
・世代で異なる金融ニーズへの対応
┗退職保障をメインとして、幅広い投資のオプションを作り
C.強靭な金融システムの形成
7:多様化するリスクから金融システムを守る
・Fintechは機会と危機の双方を齎す
┗規制/インフラが革新的Bizモデルに後れを取らないようにする
┗柔軟な規制枠組みとOpen-bankingな政策形成
8:サイバーリスクへの防衛強化
・Tech深化は金融システムでのサイバーセキュリティの重要性を高める
┗データ復旧体制の準備/サイバー演習の強化/サイバーセキュリティ保険の整備
9.デジタル規制の取り込み
・生産性/有効性の改善に向けてReg-tech/データサイエンスを取り込む
┗CDOがデータ収集/共有/利活用/中期戦略を設計
┗監督/規制手続きのデジタル化
[BOEが優先的に行動すべき分野]
・ステニス氏の提言への対応としてBOEは下記5つの優先課題を設定(新しい経済を道開く)
1;英国の家計/企業のために、より強靭/革新的/競争的な決済システムの維持
2;SMBの金融アクセス強化へのオープンPF形成支援(移行を誘導)
3;低炭素経済への秩序だった移行を支援(金融システムの強靭性)
4;世界一流のレグテックとデータ戦略を実現
5;強靭性をより高め、クラウド及び他の新しい技術の採用を促進