NHK(特にBS)で、個人的にめちゃめちゃおもしろい番組が続いたので、今回はその一つ、「真実への鉄拳〜中国・伝統武術と闘う男〜」を
※[NHKBS1] 2021年01月03日 午後11:50 ~ 午前0:40 (50分)再放送のようです
中国にMMA(総合格闘技)ファイターの徐暁冬氏という方がいます。リアルに強いようです
そんな徐暁冬氏が、「中国4000年」と言ったか言わないか、伝統や歴史を推しまくる自称達人、しかし実際は格闘家としてはあまり強くない、悪く言えばインチキ伝統武術家−伝統武術の世界にももちろん、達人はいらっしゃいますよ−たちをリアル鉄拳制裁していくお話−かと思いきや、そういう面もあるけど、そこは主題ではなく、歴史と伝統、革新とイノベーションについて考えさせるエピソードが満載でした
カンフー映画などで馴染み深い中国武術。その権威が今、大きく揺らぎ始めた。全く異質の総合格闘技を身につけた男が、「中国武術は実戦の役に立たない」と真っ向から否定。これに反発した武術の達人たちを、軒並み撃破したからだ。その強さと率直な物言いで、熱いファンを獲得している総合格闘家。しかし、その行く手に思わぬ壁が立ちはだかった。果たして闘いの決着は……リングの外にまで広がったバトル…
徐暁冬氏は伝統武術の大家の挑戦を受けたり挑戦状を叩きつけたり、道場破りみたいな伝統武術家をジムのリングに上げたりして、常に瞬殺、ポコポコにした上、動画をSNSで公開して伝統武術の化けの皮を剥がしていきます
そんな活躍により−それにしても、ヒョロヒョロだったり腹の出た伝統武術家もよく、どう見ても強そうな徐暁冬氏とよく対決したもんだ、というところはすごい−人民日報にも「伝統武術は詐欺か」という記事が掲載されるまでに至りました
しかしそれから、徐暁冬氏は恐らく中国のお国の事情(伝統や歴史を誇る伝統武術が欧米風のMMAに負けるのは愛国的にまずい)により百度、微博からBANされてしまいます。強さが最大の価値であるはずの世界で、事実上世界(中国)に存在しないことにされてしまうという…という
一方、徐暁冬氏に瞬殺、ポコポコにされた、腹の出たおっさん武術家が歴史と伝統、愛国でブーストした「インド人死ね」みたいなネトウヨキャラで人気者となり、微博などSNSのインフルエンサーになってしまいます。なんだかなー
そう、徐暁冬氏が闘わなければならなくなった相手は、伝統武術のインチキ格闘家ではなく、愛国教育を進める政府と、歴史と伝統を否定された(と思い込んだ)世間、なんともあれな世相でもあったわけです
歴史と伝統に固執する人たちが、格闘技のイノベーションを阻害しているようで、とっても残念
ところで、MMAというと2020年12月31日のRIZIN.26で、カーフキッキというのが注目されました。UFCでは、以前から使われ始めていたそうです
で、NHKといえば、夢枕獏さんナビゲーターで、1993年11月12日にアメリカ、コロラド州デンバーで開かれた「UFC 1: The Beginning」を、BS特番で放送したことをよく覚えています。まだ学生でした。VHSがまだどこかにあるかも…。再放送しないかな〜
MMA−当時はバーリ・トゥード=vale tudo=every to do=なんでもあり−と呼ばれてました−は喧嘩みたいに凄惨で怖いな−と思いましたが、その後ルールとジャッジが整備され、技術も試合展開も成熟−距離をとって打撃をかわしてテイクダウンを取り、いいポジションを確保して締め技や関節技を極める−したように感じていました。興味のない人が見れば、同じような試合ばっかりに見えるでしょう
そんなところ、朝倉未来・海兄弟が寝技をほとんど使わず、強烈な打撃でKOするというスタイルで人気になったと思っていたのですが、こんどは堀口恭司選手が朝倉海選手をカーフキックで追い込みKOしたりと、まだまだ進化するんだな〜、すごいな〜と感じた次第です
そんなことを考えるに、実力がないのに歴史と伝統に固執し、革新とイノベーションを拒む大家ってのは、本当にダサい感じです。格闘技の世界に限った話ではありませんけど
<スポーツ×ヒューマン「寝技で極める最強への道 柔術 リダ・ハイサム」>も面白かったですよー