少子高齢化によって形成された人口ピラミッドにおいては、若者は少数派です。
あるとき、地元出身の大学一年生が、すぐ年下の高校生たちにアンケートをとってくれました。
その中で、「今、町に欲しいものは?」という項目がありました。よくある質問です。
私たちオトナが話すような会議では、病院が近くにない・買い物が不便だ・もっと福祉補助を充実させるべきだ等のお話をよく聞きます。
高校生に聞いても同じようなことが返ってくるか、遊ぶ場所がないとかなのかなぁと思っていました。
ところが、その圧倒的1位はとても意外な回答でした。
「夜道が怖いので、街灯が欲しい。」
正直、膝がくだけるような感覚でした。
そうか、そこだったのか、と。
私たちオトナになってしまうと、夜は車で移動することも多く、ライトには困りません。そもそも、車内にいればそんなに夜道を不安に思うこともありません。
ところが、よく通るような道も、真っ暗で静かな状態で歩いてみると途端に恐怖感が増します。だいたい飲み会帰りなのでほろ酔い気分で歩くと気持ちも陽気だったりするのですが、完全シラフだと超怖いのです。
それを改めて体験するまで、意識もしませんでした。
だって"車で行けば良いじゃん"と思ってしまうから。
この意識の断絶に、地方の根深い問題が眠っています。
彼らにとっては、毎日の半分は恐怖体験だったわけです。しかも、過ごした人生も短いので、その比率は大きい。
そして恐ろしいことに、多くのオトナが「別に街灯ぐらいなんて」と思ってしまう。ともすれば、おれたちのころはな、なんてことを吐き捨てる人さえもいる。
いや、そうじゃない。
問題はそこじゃない。
彼らとの問題意識の視点が大きくズレてしまっていること、そして、彼らの声の絶対数が少なすぎてもう届かなくなっていること、その全体感に気持ちが砕かれてしまったのを今でも思い出します。
たまたま生まれるタイミングが違っただけなのに。
ひずみを少しずつ解消していく。
それしかないですよね。
灯りがともる日まで。
てらけん