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12/24 ヒーローの描かれ方日米比較(シリーズ②)

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  • toyo
  • 2019/12/24 01:17

これは「鬼滅の刃」にハマった大人が書く素人ヒーロー論です。
本日は第2回目の記事をお届けします。

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一回目の記事はこちらです。併せてご参照下さいませ。

 

【目次】
・正義の執行者としての勧善懲悪型ヒーロー
・関心はヒーローの内面世界へ
・社会と接続したヒーロー/人間味を持つヒーロー
社会と接続した悩み/社会と断絶した悩み

正義の執行者としての勧善懲悪型ヒーロー

水戸黄門に代表される勧善懲悪型のヒーローは世代を問わず日本人にとっても非常に馴染みが深い。

 

「勧善懲悪モデル」

このモデルの良いところは「味方=善、敵=悪」という構図が揺らぐことはなく、ヒーローは敵との闘いを続けていくにあたって「なぜ俺は戦うのか?」といった自問自答をする必要はなく、迷い悩むことはない。ただ粛々と敵を蹴散らし続ければ良く、それは、まるで正義の執行者といえる。

日本のテレビ放送フォーマットとも相性が良かったために、1話完結型で、「街に到着→事件が起きる→助けて水戸黄門→控えおろう→印籠ポーン」という固定フォーマットをブラさずに続けることが可能だった。

こんな記事もあるのでご参考に。

子供のヒーロー仮面ライダーも同様。1話完結型で勧善懲悪的なフォーマットを採用。しかしながら、根底には「その出自が特殊(悪の組織に生み出された改造人間)」があるため、純粋な勧善懲悪型ではないかもしれない。「善だが出自は悪」というライダーの存在を考えると、悪から寝返った善の存在が元同類に復讐する構図ともいえる。

そして、時代は「自分探し」など人の内面にフォーカスするようになったためか、徐々にヒーローへの関心も内面へと移っていったように思う。

関心はヒーローの内面世界へ

その代表例が、エヴァンゲリオンの碇シンジではないか。

彼の登場以降、ヒーローの内面性に人々の意識がどんどん向いたのではないだろうか。世界のために闘う彼らは、決して望んでその立場になったのではない、どんな悩みを抱え、何に苦しんでいるのか。それは、等身大の若者として作品を楽しむ視聴者らが自己投影し、よりその世界観に没頭できるキッカケにもなったし、世の中に深く浸透したようにも思う。

後日書く内容にも関連するが碇シンジには彼の代名詞である「逃げちゃダメだ」というセリフがある。お化けを怖がり暗闇の中を目を瞑って走り抜けるような幼稚さを感じる一方で、今回の記事一式を書くキッカケにもなった竈門治次郎には、どこか成熟した大人な雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。

ともかく、勧善懲悪型のただ無心に正義を執行するヒーロー像から、ヒーローも我々と同じ血の通った人間であり無敵な存在ではないということが、ごくごく当たり前のことだという認識が浸透した。

社会と接続したヒーロー/人間味を持つヒーロー

次はアメリカにおけるヒーローの描き方に目を向けていきたい。

アメリカが描くヒーローといえば、DC ComicsやMarvel Comicsのようなアメコミヒーローだろう。

日米ヒーローの違いは何だろうか?

先ずは「キャプテンアメリカ」から。

星条旗を思わせるコスチューム、額に描かれるAの文字、名前や風貌からしてアメリカへの愛国心に溢れた存在であることが分かる。そもそも、作品の舞台設定が第二次世界大戦であり敵はナチスである。当時の社会情勢に寄り添った制作意図が感じられる。

続いてはバットマン。「バットマンビギンズ」から始まるクリストファー・ノーラン3部作が傑作として語られているが、それまでにもティム・バートンはじめ多くの映画監督がバットマンを描いている。そこで語られるのは、幼い頃に両親を殺された主人公「ブルース・ウェイン」は、両親(や一族)が生涯を通じて守り通してきたゴッサムシティを守るために、闇の騎士ダークナイトとして正義を執行する役回りを担う存在として生きることを選ぶ。

バットマン(ブルースウェイン)はいちゴッサムシティで生活する市民であり、同時に自警団的役割を担う存在である。彼の暴力行為には法的根拠はなく犯罪者と同様の違法行為として認識されてしまう。警察組織とは表向き対立する存在として世間から孤立して孤独に闘う姿は、どこか日本の仮面ライダーとも重なるように思う。

何よりバットマンは財力こそあれど何か特別な能力に恵まれた超人的な存在ではない。つまり、一般人が最先端の科学技術などで武装して闘っているだけでブルースウェインは我々と同じ肉体を持つ一般人だ。

小田切は著書の「戦争はいかに『マンガ』を変えるか」(2007 NTT出版)で以下のように指摘している。

「傷つくヒーロー」とその内面がスーパーヒーローコミックスのテーマとして急速に浮上してくることになる。

映画「バットマンビギンズ」ではバットマンのスーツを脱いで上半身裸の状態で裂傷を縫う痛々しいブルースウェインのシーンが映る。傷ついたヒーローを見せることは新たなヒーロー像を描いているといえる。

一方でマーベル作品の代表作「X-MEN」シリーズ。遺伝子の突然変異によって超人的能力を獲得した人たちの物語。彼らミュータントは、その驚異的な力や能力から人間から恐れられる存在となる。「X-MEN」シリーズのなかで、スピンオフ映画も制作されるほどの人気を抱えたキャラクターは「ウルヴァリン」だろう。彼の境遇も「仮面ライダー」のそれとかなり似通っている。

ウルヴァリンは動物的な鋭い感覚と反射能力、そして実質的にどんな怪我からも回復することができる治癒能力(ヒーリング・ファクター)を持っている。この治癒能力はスーパーソルジャー製造計画「ウェポンX」において、骨格に世界最硬の金属であるアダマンチウム合金を組み入れることを可能にした。コードネームの「ウルヴァリン」とは、クズリというイタチ科の、小さいが獰猛な動物を意味する。
※Wikipediaより引用抜粋

しかしながら、ウルヴァリンはバットマンのように傷つくことはない。正確には外傷を受けることはない。彼の治癒能力は銃で撃たれても、ナイフで切りつけられても時間が経てば治癒してしまう力がある。それは人間が成せる力ではない。

水戸黄門が水戸光圀公を描いており当時の支配層を主人公に描いていたのは、キャプテンアメリカが米国を前面に押し出していることと似ている。そして、仮面ライダーの出自や根底にあるものはバットマンやウルヴァリンと似ているといえる。日本が描くヒーローも米国が描くヒーローも大きな違いはなさそうだ。

敢えて異なる点を見つけるとしたら?

「X-MEN2」でアイスマンが作品中で一時的な避難先として実家に戻ることになったとき、彼の両親からこのような言葉を投げかけられる。

「普通に戻ることはできないの?」

「ミュータント≠人間」、つまり普通ではない。つまり多数派ではないということ。米国は他民族国家という背景が色濃いため人種やLGBTなど「差別」ということと常に闘っている国だ。ヒーローも特殊な能力を持ってしまった人間という描き方のため、ある意味で差別や迫害を受けてしまう対象となる。

社会と接続した悩み/社会と断絶した悩み

日米におけるヒーローの違いを述べるなら、社会との結びつき方が異なるのではないか。それは、仮面ライダーや碇シンジがまるで殻に閉じこもるかのように自己の境遇と向き合うのに対して、「バットマン」や「X-MEN」は社会との関係性の中で自己をどう規定し、社会とどう結びついていくかに苦心している。それは、国民性の違いといえばいいのか、本稿ではそこまで踏み込まないようにしよう。

 

 

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