テクノロジー

Pixelシリーズの歴史からその未来を考える

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  • うた
  • 2019/07/25 13:11

スマートフォンといえば、国内では相変わらずiPhoneですね。

 

私は高校生くらいのときからGoogleが大好きでしたが、Androidは一度Xperia arc(懐かしい…)を試して「うーん」となり、大学時代は2年ほどiPhoneを使用していました。

当時は、どんな端末を使ってもカクカクで遅くて、どんな端末を使っても熱くなって(大袈裟かも)、どんな端末を使っても最後は爆発していました(嘘です)

個人的見解が入りますが、KitKat〜LolipopくらいでiOSの背中を捉えてMarshmallow〜NougatでiOSに並んできたくらいの使い心地でしたね。今やPie、そろそろQ(どんなお菓子だろう)ですが、もう完全に横並びだと思います。両OSともに、最適解に近いクオリティだと思います。

iPhone好きはAndroidのややカクついた動きが気になるでしょうが、Android好きはiPhoneの不自由さにイライラすることでしょう。

 

改めて語るほどのものではありませんが、AndroidとiOSの違いを簡単に述べると、

−ウィジェットが置けるAndroid、置けないiPhone

−リンクを開く際にアプリを選べるAndroid、選べないiPhone

−アプリにおいてショートカットという概念があるAndroid、無いiPhone(ホーム画面の有無と言い換えてもOK)

−バージョンの断片化が起きやすいAndroid、ほとんど起きないiPhone

案外この程度しかありませんね。

 

昔は細かい差が沢山あって、AndroidとiPhoneがお互いにいいところを真似し合っていました。

(2011年くらいのときは、AndroidOSでは標準でライト機能が無かったんですよ!信じられますか若い皆さん。そのために「ライト」アプリをみんなインストールして使っていたり、わざわざカメラを起動してフラッシュをONにしたりしていたんです。懐かしいですね)

 

あとはハードウェアの差異に起因する機能差(顔認証、物理ボタン、ノッチ、飛び出すインカメラ、ダブル-トリプルレンズ、その他諸々)はありますが、OS起因で、ユーザに見える部分の差に絞ればこんなものでしょう。

もはや好みの差ですが、私はスマートフォンのOSでは、Androidしか使わない生活を続けています。そのきっかけである端末が、当時の「nexusシリーズ」です。

 

・nexusシリーズとは

Google社が選定したハードウェアメーカーと協力して発売したAndroidスマホ。OEM(original equipment manufacturer、つまり他社が製作したブランド品)です。ざっくり申し上げると、「サムスンやLGやHuaweiが製作したスマートフォンを、Googleが自分たちのブランドとして販売したもの」ですね。

国内で有名なものはやはりnexus5でしょう。

Content image
nexus5。国内では主にY!mobileなどから発売された

 

・nexusシリーズの存在が示したこと

Androidのローンチから二年ほどして初代nexusが発売されていますが、当時は特筆するほど話題になることもなく、インパクトも小さい端末でした。でもその存在には明確な意図がありました。ピュアアンドロイドをユーザに触らせることです。

 

電機メーカーは、Androidスマホに独自の制限を行ったり、独自のアプリをプリインストールしたりします。しかし、メーカーがその端末と共に提供したいユーザエクスペリエンスは、必ずしも常にGoogleの思想と一致するわけではありません。

これは、(特にGoogle目線では)「Androidが最善な状態でユーザに使用されることを邪魔している」と解釈することができます。(メーカーは決して質を落としたいわけではなくても、独自性を出したくなってしまった結果として、余計なアプリが入ったり、ホーム画面アプリの質が低かったり、結果として使い勝手の良くない端末になってしまったケースは少なくないと思います。ハードウェアスペックはハイエンド級なはずなのに、なぜこんなに重くて遅くて熱くなるんだろうか。そんな端末をたくさん触ってきました)

 

そこに一石投じる形で、nexusシリーズが生まれたわけです。ハードウェアこそ他社製であるものの、グーグルと協議をした上で用意されたモノですし、何よりOSに余計な手を加えないままローンチされるので、グーグルは自身を持ってユーザエクスペリエンスの向上に取り組めます。

また、この端末はアプリケーション開発者にとっても有益でした。常に最新OSがカスタマイズ無しに最速で降ってくるのですから、当然、OS適合テストを行うには最善の端末です。

私は「nexus5」を機会に、iPhoneを使わなくなりました。AndroidがiPhoneの背中を捉えた瞬間を見たようで感動した覚えがあります。

 

 

さて、2016年10月、Androidの歴史は大きく動きます。Pixelシリーズの登場です。(※リンクはGoogleStore)

 

・Pixelシリーズについて考える

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初代Pixel。ハイエンド機でDxOMarkスコアが当時1位。

nexusシリーズが比較的安く手に入る端末だった一方、Pixelシリーズは打って変わってハイスペック&高級モデルとなりました。

初代、二代目のPixelはいずれも当時のDxOMark(カメラの性能を多要素で測定してベンチマークスコアを算出する団体)のスコアで1位という高スペックぶり。明らかに方向性を変えてきました。

この方向転換には、いくつかの意図があるものと考えられます。事実に私の推測を織り交ぜながら述べていきます。

 

まず、スマートフォン業界全体の端末スペックが向上してきたことに起因する、ブランド戦略の転換を迫られた可能性が考えられます。

”あのグーグル社”がブランディングして送り出している端末がミドルレンジのスペックしか無い」というのは、ハイスペックが並ぶ昨今のスマートフォン市場では悪目立ちするでしょう。仮にもAndroidの提供元である彼らが自らリリースする以上、ハイエンド端末が必須となったものと考えられます。

(事実、nexusシリーズも後半になればなるほどスペックは向上し、値段も比例して上がっていきました。環境(市場)に適応しようという思いが見え隠れしている気がします。そのツギハギで耐えきれなくなり、ブランディングを根本から変える必要があったのではないでしょうか)

 

次に、ディープラーニングの流行です。

Googleは検索エンジンの品質向上が収益に直結するため、常にそれを中心に据えてビジネスを展開しています。(例えばAndroidOSの普及は、それがそのままGoogle検索エンジンが多用されることに繋がります)

検索エンジンの入力値/満足度の収集や、GoogleMapなどのサービスを利用したユーザ情報のフィードバックは、検索エンジンのディープラーニングを成長させる上で、構造化データの収集には十分だったかもしれませんが、非構造化データ(画像や音声や動画など)の収集には十分とはいえません。

また、非構造化データについては、ユーザの端末スペックが向上すればするほど良質なデータが収集できます。例えば先に述べたDxOMarkスコアが当時1位というのは、当然ユーザエクスペリエンスの向上にも繋がりますが、良質な画像データの収集にも大きく貢献しているはずですし、性能の高いマイクを導入すれば、人々の会話や収集した音声の解析が容易となります。(画像データはGoogleLensや画像検索機能の性能向上に活用されますし、音声データはおなじみの”OK,Google”に活用できますね)

 

ここまでがGoogle純正スマホであるnexusシリーズとPixelシリーズの歴史です。以下で、その未来について考えていきます。

 

・Pixelシリーズはこれからどうなるのか

Content image
Pixel3。初代と似たデザイン的特徴がありながらも非常に洗練されていることがよくわかる

すでに三代目までがローンチされ、三代目はPixelは国内発売していますね。Softbank等が宣伝に力を入れていたこともあって、CMなどで目にしたことのある方が多いのではないかなと思います。(購入者数がiPhoneに迫る、みたいな気配は全く無いみたいですが)

スマートフォン市場に詳しい方はよくご存知かと思いますが、現在スマートフォン市場は飽和状態だと指摘されています。ハードウェア技術の成長にかかるスペック向上のペースはスローダウン気味で、デザインも似通い、大きさ程度の差しかありません。

 

脱線しますが、こういう「みんな同じ」状況だと、iPhoneは更に売れるのだろうなと想像します。どんなにApple製品に憧れて真似をしようとしても、根幹のようなところがどうしても到達しない。個人的見解ですが、ハードウェア製品の質感をあれだけ素晴らしい状態でしかリリースしない企業を、私はApple以外に知りません。

逆に、ソフトウェアの品質でグーグルに叶う企業はそういないでしょう。彼らが奮闘する隙間はおそらくそこにあります。

 

ハイエンド機で情報収集を行っても、グーグルのあらゆるディープラーニング/AIは、未だ到達できていない未来を見上げています。例えば人間とゴリラを区別することができなかったり「OK、Google」で人物特定することが困難だったり顔認証が写真で突破されることを制御できなかったりディープラーニングの改善には、グーグルをもってしても、まだ伸びしろがあるんです。

そのため、Googleは可能な範囲で情報収集を継続していくでしょうし、端末のスペックも市場に合わせる形で向上していくでしょう。

ハードウェアスペックの世界で大きなイノベーションが無くても、Appleとグーグルは粛々と自分たちができることをこなしていくでしょう。Appleは機械や質感の世界で、グーグルはソフトウェアの部分で、それぞれがユーザエクスペリエンスの向上を目指しています。

 

 

とてもシンプルな結論になってしまって恐縮ですが、およそ人間が想像できるディープラーニングの課題をすべて乗り越えたあと、グーグルが何を目指すのかを考えるのも、楽しいですね。きっとその世界こそがシンギュラリティなのだと思います。今からワクワクします。

なお余談ですが、次期PixelであるPixel4ではフロントに赤外線センサーが搭載され、顔認証を視差でない立体視を用いる形で実現しようとしているとの噂があります。またジェスチャー機能を活用し、画面に触れずに端末を操作する機能が追加されるとか、されないとか。

 

続報があれば、またPixelシリーズについて語りたいと思います。

それではまた。

 

 

追伸:

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

グーグル愛が溢れてしまいましたが、iPhoneも語るまでもなく好きですし、あまり執着はしないように心がけています。(視野が狭くなる気がするので)

iPhoneも欲しいです、本当は。流石にそんなお金がないので買えませんが。笑

またよろしければ是非。

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