地獄の研修が終わり、半人前のMRとして香川県へ配属が決まったワイン氏
この時香川県でうどんを食べる事しか頭になかったが、待ち受けるクライアント上司が天然ハラスメンターである事など知る由もなかった。
香川県には5年間住んでいた。
とても静かで温厚な地域。
どこに行っても人はおらず、何をするにも並ぶ事はなくいい土地だ。
2009年、世界の製造業や金融を中心に大不況に陥っている中、製薬業界は好景気だった。
薬は開発し、世に出すまでに掛かる費用は約500億
製薬企業はこれらのコストを掛け新薬であれば8年の特許がある為、その間に回収し利益を出す。
私が携わった医薬品で1年間で100億以上売上をあげた医薬品もある。
しかし、それ程の莫大な費用をかけて上手く市場に出せる確率は10%〜20%ぐらいだ。
そんな医薬品が新発売となる時はお祭り騒ぎなくらい人材を投入しシェアオブボイスを合言葉に人海戦術で医療機関に接待と言う名の総攻撃を掛ける。
医薬品は広告を出すことができない為、出来るプロモーションは限られる。
訪問、お弁当付き説明会(当時1個3000円までの豪華弁当)、接待で豪遊、講演会で良いことばっか言わせて金払う。
こうして皆さんの手元に素晴らしいお薬が届くのです。とか言うと怒られるのでかなり厳しい自社ルールがあり、それらを守って営業を行う事で上記の様な事になることを防いでいる。
もちろん違反しているMRを見つけると製薬協という組織にチクる事が出来る為、東京などはチクリ合いが凄いと言う噂はよく聞く。昨日まで仲が良かった他社MRが明日は敵になる世界。鬱になる人も多いのは頷ける。裏切り、嫉妬、不倫、金、など様々な人間の汚い世界をこの業界は教えてくれた。
では裏切られる事が当たり前の世界をお話して行きましょう。
香川県の高松市の某ビル内に行く様に指示された。
そのビルや周辺ビルを含め名前の聞いた事ある製薬企業が数多くテナントとして入っている。
言われた様にビルの最上階へ向かう。
着くとワンフロア全てその企業のスペースだった。
早速室内に入り、大きな声で挨拶をした。
すると奥からメガネを掛けた少し強面の方が出てきた。
そうその方が今回のプロジェクトのクライアント上司である日高課長だ。
日高課長「おお〜君がワイン君だね。よくきてくれた。待ってたよ。」
ワイン「宜しくお願いします。」
物凄く優しそうな方だった。その後事務員の藤尾さんにも挨拶し順調に顔合わせが進んでいく。
日高課長から会社概要や担当地区の話など必要な仕事のノウハウを教えて頂いた。
日高課長「今日はここまでだね。じゃあ出勤初日だからご飯でも行こうか?」
ワイン「はい!ありがとうございます。」
なんとご飯にも連れて行ってくれるなんてめちゃくちゃ良い方やんけ!!と思っていた。
そのまま近くの親鳥と若鳥という香川県のグルメを食べれる居酒屋へ連れて行ってもらった。
日高課長「ここの親鳥がうまいんだよ〜。ここの鳥ポン酢もね。最高なんだよ。」
ワイン「そうなんですね。初めて食べます〜w」
こうして日高課長の鳥自慢を我慢して聞きつつ、飲み始めた。
すると
少し変化があった。
日高課長「ワインは実家とかどこなの?奥さんの下の名前は?兄弟は何人?奥さんの実家は?休みは何して過ごすの?今度の土日に俺の家こいよ!」
あれ?なんかスゲ〜んだけど。と心の中で思いながら変わった人だな〜と思っていた。
我々は初対面である。いくらクライアントでもパワハラ、セクハラ、アルハラは対象である。
めちゃくちゃプライベートを聞かれるのである。
ワイン「いや〜ちょっとどうなんですかね〜。実家を教えるのは・・・」
適当に間接的に伝えても伝わる人ではないので直接的に聞かれても話したくない事を伝えた。
日高課長「はぁ?良いだろ!実家くらい。奥さんも名前は?兄弟は?実家は?休みは何してるよ?今度の土日俺の家にこいよ!嫁さんに飯作らせるから」
なんなんだこの人。
誘い方と聞き方がめちゃくちゃだ。
私はここまでデリカシーの無い人は初めてで面食らった。
これは辛い。
早く帰りたい。
配属初日だぞ・・
後日聞く事になるが、この日高課長はクライアント社内でもかなりの問題課長で部下との間に色々確執を抱えていた。
社内では四天王の一人と揶揄され、誰も部下になりたく無い課長の一人であった。
配属初日にまさかのモラハラを受け、戸惑うワイン氏
日高課長から土日に自宅へ来いと誘いを受ける。
どうなるワイン氏・・・
次回:部下との確執
作者