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日本語の中の動物たち

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  • yamaeigh
  • 2020/09/13 04:24

私は日本語がいかに豊かな言語であるかということをしょっちゅう書いているのですが、最近気づいたのは、日本語には動物になぞらえた表現がたくさんあるということです。

いや、日本語だけではなく、各国の言語にも同じような例は少なからずあるのかもしれません。

そう言えば前に、工事で使う起重機のことをクレーンと言うけれど、あれは英語では「鶴」の意味なんだというようなことを書きましたね。

あるいは、タートルネックというのは翻訳したら亀首ですからね(笑)

ま、今回はそれは措いといて、日本語に限って書きます。日本語、特に昔からの表現には、動物になぞらえたものがすごく多いことに気づいたのです。

例えば人間の顔貌を表わす言い方には、「鷲鼻」とか「獅子鼻」とか「アヒル口」とか「猫背」とか「鳩胸」など、そんな例がたくさんあります。でも、人間の顔や体の部分がどの動物に似ているかを表したもので、想像力の発露としては、それほどすごいものではありません。

そうではなくて、生き物とは全く関係のないモノの形状を動物の一部に当てはめてしまう表現があります。例は後で挙げますが、言わば日常生活の中に動物の姿を見ているわけで、日本人、日本語のこの発想はなかなか素晴らしいなと思うのです。

例えば、がま口は財布の口がガマガエルの口に似ているところから来た表現です。こうもり傘(昔の人たちはそれを「こうもり」と略していました)は、西洋の傘の布の形がこうもりの羽に似ているところから付けられたものでしょう。

同じ傘でも日本古来の和傘は蛇になぞらえて蛇の目などと言われていました。

製図用具の烏口はペン先がカラスの口に似ているから。

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海鼠壁(なまこかべ)なんて表現を聞くと、よくもまあこの壁の柄からナマコを連想したもんだと驚いてしまいます。

亀の子たわしは、親亀ではタワシのサイズとして大きすぎるので子供にしたあたりにネーミングのセンスが伺えます。

開き戸の金具である蝶番(ちなみにこれを「ちょうばん」と読んでいる人をたまに見かけますが、「ちょうつがい」です)はまさに蝶が羽ばたくようにして開閉するからです。同じ蝶では蝶々結びなどという言葉もあります。

掃除道具の熊手はそれこそ熊の手を連想させたからなのでしょう。トンボめがね、とかミミズ腫れなんてのもそのまんまの表現です。狸寝入りなどという、形状を模したのではなく動作をなぞらえた表現もあります。

しかし、読み返してみると、上で挙げたもの全てが、もうほとんど死語ですね。いま死語でなくても50年後には完全に死語になっているのではないでしょうか?

私の祖父母の世代はよく上記のような言い方をしていましたが、私たち以下の世代で「あ、会社にこうもり忘れてきた」とか言っている人はいないし、「がま口」と言うにふさわしい形状の財布を持っている人もいなくなりました。

胸の大きな女性を「鳩胸」なんて言ってる男子は今はいません。そもそも和服を着ているからこそ、鳩の胸という喩えがぴったりだったんでしょうね。

次第に和服を着なくなり、海鼠壁も亀の子たわしも姿を消し、そんな風に生活が変わることによって、言葉も変わって行くのだと思います。

 

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放送局で働いていました。今はただの爺です。

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