
最近「一段落」を「ひとだんらく」と読む人が多いのが気に懸かります。これは「いちだんらく」なんですよね。
先日も twitter で ZOZO の前澤友作社長が
『ひと段落』だと思っていたら、正しくは『いち段落』だということを教えていただきました。お恥ずかしい。もうしっかり覚えました。
とつぶやいておられました。
こういう「一」の読み方は単に慣用で決まるのではなく、一応緩やかながら原則があるのです。つまり、後ろに来る単語に対して「いち」のほうが親和性が高いか、それとも「ひと」のほうが馴染みやすいか、というところが判断基準です。
たとえば「段落」という語は漢字の音読み2つを重ねた「漢語」です。こういう漢語には「ひと」という訓読みより「いち」という音読みのほうが親和性が高いんです。
一家言(いっかげん)
一個人(いちこじん)
一見識(いちけんしき)
一時期(いちじき)
一段落(いちだんらく)
一面識(いちめんしき)
一文字(いちもんじ)
みんなそうです。逆に後半が「やまと言葉」の例を挙げれば、
一思い(ひとおもい)
一区切り(ひとくぎり)
一芝居(ひとしばい)
一っ走り(ひとっぱしり)
一風呂(ひとふろ)
一寝入り(ひとねいり)
一休み(ひとやすみ)
と「ひと」になっています。我々が目にするのはむしろ「ひと寝入り」のように平仮名を使った表記のことが多いですが。
でも、「一推し」は「いちおし」で、音読み+やまと言葉じゃないか、って?
いや、それは「一番に推す」の短縮形だからたまたまそうなっただけです。
じゃあ、「一安心」は? これは「ひとあんしん」だから、訓読み+漢語じゃないか、って?
はい、何ごとにも例外はあります。
じゃあ、「一苦労」「一呼吸」「一騒動」は?
ありゃりゃ、随分例外見つけてきましたねえ…(笑)
そう言われるとおっしゃる通り。降参です。
ただ、後半が1字の場合はかなり厳密に当てはまるんですよ。音読みの前に付くのは「いち」、訓読みの前に付くのは「ひと」。例えば、
一度(いちど/ひとたび)
一重(いちじゅう/ひとえ)
一夜(いちや/ひとよ)
ってな具合に。
ところが、2字の漢語になった途端に「ひと安心」「ひと苦労」「ひと呼吸」「ひと騒動」「ひと悶着」などという例外がたくさん出てきます。
ざっと眺めてみますと「いち」のほうは「たった1つ(1回/ひとり)だけの」「1つのまとまった」という意味合いが強くて、「ひと」のほうは「ちょっとした」(「決して小さくない」というニュアンスの場合もありますが)という感じでしょうか。
「ひと苦労もふた苦労もした」とか「ひと悶着もふた悶着もあった」なんて使い方もあります。
ま、規則通りにならないのが言葉の面白さで、ルールが見つかったと思ったら例外も見つかって、なんかちょっと悔しい気もします。でも、なにごとも一事が万事という訳には行きませんからね。










