外国語には日本語にない音があるのは当然で、それを日本語的に発音しようとするとどこかおかしくなってしまうのは当たり前のことです。
英単語の発音を日本語に置き換えるときに一番やりようがないのは単独の子音の表し方でしょう。日本語ではほとんど常に子音と母音がセットで使われるので子音1字の表しようがないのです。
慣例としては、単独の子音は、語頭の場合も語末の場合もウ段の音に変換されます。
dog → ドッグ
sale → セール
flash → フラッシュ
cream → クリーム
ただし、例外もあって、
cat → キャット
card → カード
trick → トリック
dream → ドリーム
のように t と d はウ段ではなくオ段の音になります。日本語にはトゥ/ドゥという音がなかったので(かと言って、ツではあまりに違いすぎるから)こうなったのでしょう。
でも、昔はやっぱりツやズで代替していたわけで、
tree → ツリー
drawers → ズロース
子音単独の場合だけではなくて u 音が続く場合も、
two/to → ツー
tool → ツール
てな感じですが、最近この置き換えはすっかり廃れてしまいました。
──と思っていたら、twitter は最初からトゥウィッターでもトゥイッターでもなくツイッターと音訳されたので驚いたのも確かですが(笑)
不思議なのは語末の ch。語末の sh はシュなのに語末の ch はチュではなくチなのです。
much/match → マッチ
bench → ベンチ
似たような例では、
badge → バッジ
dodge → ドッジ
いやいや、ウチのおじいちゃんはバッ「チ」、ドッ「チ」ボールと発音してたよ、と言う人もいるでしょうけれど、だからと言って dg や j の音はチと書き表されるのが一般的であったということではなく、
image → イメージ
garage → ガレージ
の例からも判るようにジにするのが原則のようです。確かに耳から入ってくる印象からすれば、これらをウ段ではなくイ段に置き換えることに抵抗がありません(ただし、英語として発音する際には語末に i は付いていないことを意識するべきですけどね)。
以上をまとめると、英語の母音を伴わない子音を日本語で表記するときは、
1)原則としてウ段を用いる
2)タ行・ダ行の場合はオ段(即ちト・ド)
3)チュ・ジュは用いずにイ段のチ・ジとする
になるようです。
ところで解らないのが strike です。なんで野球やボーリングではストライクで労働運動の場合はストライキになるのでしょう?
似たような例もないではなくて、stick に対するステッキとスティック。shake に対する(ミルク)セーキと(マック)シェイク。でも、cake は常にケーキ。steak は常にステーキ。NIKE は常にナイキ。
クを充てるのは上記原則の1)に倣っただけなのでしょうが、k に限ってどうして表記が(イ段の)キになることがあるのか不思議です。これは上記原則の3)ともちょっと違うような気がします。
ただ、確かに語末の k をはっきり発音すると、その空気の漏れ方がキに聞こえないでもありません。百歩譲って(って一体誰に譲るのかよく解りませんがw)語末の k に限ってはキでも良いとしましょうか。でも、語末だけじゃないんです。
x の読みは通常クスと表記されます(もちろん後に母音が続けばクサ、クセなどと変化します)。ところが text はテキストで定着してるし、expander はエキスパンダだし、express は最近でこそエクスプレスと書かれることが多いようですが、昔はエキスプレスのほうが一般的でした。
これは何故なんでしょう? この部分での空気の漏れ方は決してキには聞こえないように思うのですが…。
x 単独だとエックスなのに、どうして語中に収まると時々キスになるのか?
そう言えば、20世紀の小説に出てくるアメリカの若い女性が恋人に宛てた手紙の結びに書く"XXX OOO"(数は何個とは決まっていない)は kiss kiss kiss hug hug hug と読むらしいのですが、それ関係あるかなあ。あるわけないよね。
どうも気になって仕方がないのですが、こういうことをいくら考えても苦にならないのが私の性分です(笑)