
ミスター(Mr.)の複数形ご存じですか?
──メサーズ(Messrs.)ですね。
Messrs. Brown and Thomas (ブラウン、トーマス両氏)という風に使います。
みんな英語の授業で習っているはずですが、私は実生活では一度も見たことがありません(笑)
では、「様」の複数形ご存じですか?
──「様々(さまざま)」? とか言わないでくださいね(笑)
正解は「各位」。
厳密には「様」や「殿」の複数形が「各位」という言い方は正確ではなくて、対象となる相手がひとりなら「様」や「殿」、多数なら「各位」を使います。

つまり、田中や野村営業部長や代官に対する場合は、「田中様」「営業部長 野村一郎殿」「お代官様 お願げぇでございますだ」などと呼びかけ、複数の関係者や組合員に呼びかける文書では「関係者各位」「組合員各位」などとなる訳です。
では、田中さんが田中姓の一族郎党10人を引き連れて現れたらどう呼ぶか?
──この場合は「田中家ご一同様」とか「田中様ご一行様」とかになるんですかね。
田中夫妻2人の場合は?
──うーん、この場合は複数でもやはり「田中様」でしょうか。
さっき書いたことがすでに辻褄が合ってないですが…(笑)
ひとつだけ整理できるポイントは、姓名が前に来た時は「各位」は使わないようだということです。また、相手が誰と誰というようにはっきりしている場合は「各位」ではなく「様」が用いられる傾向が強く、かつ「各位」が使われるのは書き言葉の時だけのようです。
「各位」と「様」はこのように使い分けるものです。両方並んで使われることはありません。
例外的に「お客様各位」という表現がありますが、この「様」は「お」と一緒に「客」にへばりついて1単語になっちゃってるので仕方ないのでしょうね。「客各位」では馬鹿にしているみたいですしね。
「各」の字の印象から「各位」の意味を each one や everybody (=各自、皆)だと思い込んでいる人がいますが、そうではありません。そう思いこんでいる人がやってしまうのが「各位殿」という表現で、これは誤りです。
書いた人は 「皆様へ」くらいのつもりでしょうが、残念ながらそうはなりません。
「皆様へ」と言いたいのであれば、単に何もつけずに「各位」と書けば良いのです。「各位殿」だと英訳すると Messrs. Mister(s) になってしまいます(いや、Mr. Messrs. ですかね)。
1980年代に MR.ミスターというバンドが活躍していましたが、あのバンドを複数連れてきた感じでしょうか?
しかし、考えてみれば、バンド(つまりは集合体)のくせに「Mr.ミスター」なんて単数の名前をつけてくれるから、余計ややこしくなってしまったんですよね。
それで思い出すのは日本のバンド、Mr. Children ですね。このネーミングのセンスは素晴らしいと私は思います(こっちはちゃんと複数形ですしね)。
成人男子であって子供でもある。一人前の男であり、かつ、子供の心を失っていない──そんなニュアンスを感じます。
でも、これも考えてみたら、Messrs. Children でなければおかしいような気がしてきました。で、和訳すると「お客様各位」と同じような形で「お子様各位」? いやいや、メンバーは固定だから誰と誰と決まっているわけで、そうすると「各位」は使えない?
書き始めたのは良いですが、もうなんだか訳が解らなくなってしまいました(笑)
うまく整理のつけられる方がおられたら是非教えて下さい。
賢明なる読者各位










