「四海波静かにて 国も治まる時つ風 枝を鳴らさぬ御代なれや 逢ひに相生の 松こそめでたかりけれ」
(能「高砂」の謡いのなかの「四海波」のところの冒頭の言葉。参考文献: 佐成謙太郎 (1941年) 「高砂」, 『謡曲大観 第3巻』, 明治書院, 1864~1865ページ.)
ここでは、2020年1月1日に、日吉大社でおこなわれた「大戸開き」という神事についてお話したいとおもいます。
大戸開き神事というのは、日吉大社で毎年1月1日の朝5時からおこなわれる儀式です。大戸開きの儀式は、日吉大社の、西本宮の本殿の正面の扉と、東本宮の本殿の正面の扉の、それぞれの扉をあけておこなわれる儀式です。
先日は、この「大戸開き神事」の前半部分である、西本宮での一連の儀式のほうを紹介しましたので、今回は、後半部分である、東本宮での一連の儀式のほうについてお話したいとおもいます。
「大戸開き神事」の前半部分である、西本宮での一連の儀式がおわったあとは、神職の方が担ぐ松明を先頭にして、神職の方々や、参拝者のみなさんが列になって、東本宮まで歩いていきます。
この下のURLの動画は、西本宮から歩いてきた人々の行列が、東本宮の門をとおって東本宮の本殿へ行くまでのようすです。
東本宮の大戸開きのようす(東本宮の大戸開きのときの、神職の方による「おおー」という警蹕(けいひつ)の声と、扉がきしむ音)
東本宮の大戸開きの祝詞(のりと)
この下の動画は、日吉大社の「大戸開き神事」でおこなわれる儀式のひとつである、東本宮の本殿の前の拝殿でおこなわる、能「高砂」(たかさご)のなかの「四海波」(しかいなみ)の部分の謡い(うたい)の映像です。
また、この動画の下にある文章は、「四海波」(しかいなみ)の謡い(うたい)の言葉と、その現代語訳です。
「四海波静かにて 国も治まる時つ風 枝を鳴らさぬ御代なれや 逢ひに相生の 松こそめでたかりけれ げにや仰ぎても ことも愚かやかかる世に 住める民とて豊かなる 君の恵みぞありがたき 君の恵みぞありがたき」
(現代語訳: 天下静穏、国もよく治まって、吹く風も枝を鳴らさぬ泰平の御代です。このような大御代に生まれて、相老となるのはほんとうにめでたいことです。申すまでもないことながら、このような泰平の御代の民として生まれあったことは、わが大君の厚い大御恵みによることで、ほんとうにありがたいことです。)
(能「高砂」のなかの「四海波」の部分。(参考文献: 佐成謙太郎 (1941年) 「高砂」, 『謡曲大観 第3巻』, 明治書院, 1864~1865ページ.))
「これ好奇のかけらなり、となむ語り伝へたるとや。」
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