絶え間なく押し寄せる波
エメラルドグリーンの海
その向こうに
干潮になると現れる
幻の浜
日が昇り始め
まだ百合ヶ浜へのボートの
営業が始まる前
太陽に煌めく砂浜が沖合いに姿を見せると
あなたは言った
行こう
今なら二人きりだ
自前のシュノーケルを装備すると
観光客が泳いでいくのは禁止されている浜に
私たちは出発した
あなたが嫌いな言葉
危ない!
禁止!
そう書いてあるといつもあなたは
行こう!という
でも私は知っている
あなたはいつも私のリスクを計算し
いざというときに自分が救助できるかどうかも
考察済
だから私は
いつでもふたりの冒険で
あなたを信じて付いていくだけ
波が腰を洗う深さに至ると
ふたりは泳ぎ始める
ゴーグルの外は
水族館ではない
ほんものの珊瑚の海
ゆらゆら揺れるイソギンチャクから
カクレクマノミが顔を出して
またすぐ引っ込むと
あなたは私の手をギュッと握った
うんうん
気づいたよ
初めて見たわ
ほんもののニモ
浜にたどり着くと
シュノーケルを外し
ちょっぴり泳ぎ疲れた体で
膝まずいたまま抱きあう
うっすら焼けてるあなたの
素敵な筋肉に
ビキニの私の胸がやわらかく押し付けられていく
あなたは
来たね!と言って
私にキスをして
また
来たね!と言う間だけ
唇を離して何度もキスをする
私はそのまま砂浜に
押し倒されて
ふたりは砂まみれで転げまわる
ふたりだけの
幻のアイランド
朝一番の舟が近づいてくると
ペットボトルで水分補給したあなたは
何度も口移しでそれを私に飲ませて
さあ
人間たちの陸に戻るよって
私たちは人間じゃなくて
愛し合う人魚だったのかしら