……いや、悪いところはまだまだありますけどね。
例えば、私は小学校低学年の時に男子にいじめられていましたが、それははっきり言って母のせいでした。
母は子育てや家事の才能がなく、勉強はできたけど頭は悪い人だったので、私の離乳食はカルピスとヤクルトやったわけですよ。
これらは非常に甘い食べ物なので乳歯は全部虫歯になり、全部溶け落ちて歯が全くない状態になりました。
ある時、法事の席でどこぞの親類のおっさんに「歯抜け婆」と言われ、指を差されてめーっちゃめちゃ笑われました。
それはそれでショックだったので、歯を見られたら(いや、見られへんけど)大変なことになると思い、それから私は「できるだけ喋らない笑わないように」心がけるようになりました。
そしたら隣の席の男子に「こいつ、暗い」と言われ、それからいじめられるようになったわけです。
後になってこのことで母を責めたら「乳酸菌は体に良いとメーカーが言っていた、悪いのはメーカーだ(だから私が悪いのではない)」と言い放ったのです。
それだけではありません。
理科の授業の時に「次回、持って来ることのできる人は、昆虫を持ってきなさい」と先生に言われました。
私は母に「持って来ることのできる人だけだから、持って行かなくて良いよね」と朝になって言ったら、母は庭にいたダンゴムシを捕まえてムリヤリ私に持たせました。
「気持ち悪いから嫌だ」と言うと母は「勉強のためだ」と言って怒りました。
そこで「皆に気持ち悪いと言われるのが嫌だ」と言い方を変えてみましたが、再度母に「そんなことを言うのはお前だけで、そんなことはない」と説得されました。
「そうかなぁー」と思ってダンゴムシを持って行ったら、やっぱり「便所虫、気持ち悪い」と言われて、やっぱりいじめられました。
まだまだあります。
……でも、キリがないからやめます。
そんな母は昔から本が大好きで、常に家中が本だらけでした。
母は私同様に片づけられない女だったので、読んだ本はそのまま放置されており、そんな本がそこら中に転がっていました。
小学校低学年だった私はある日、床に落ちている本を蹴ってしまいました(本の角に足が当たって、とても痛かったことを覚えています)。
その本をパラパラとめくってみると、フランス革命についての記述がありました。
そう言えば、学校で一部の女子が「オスカルにアンドレ、マリーアントワネットにルイ16世に~以下略~」という話をして、盛り上がっていたのを思い出しました。
その当時、アニメの「ベルサイユのばら」が放送されていたのです。
私は観ていませんでしたが「へぇー」という気持ちで読んでいくと、ルイ16世についての記述が出てきました。
ルイ16世は決して暗愚な人物ではなく、むしろ非常に博学で優秀で、おまけに手先まで器用で、本職の錠前職人も顔負けレベルだったそうです。
しかしたった一つだけ、絶望的に向いていない職業があって、それが国王だったと。
その理由は、彼は良く言えば慎重な性格でしたが、それは同時に決断力に欠けるという欠点にもなり、国王にはその決断力というものが最も必要だったからでした。
そのことも一因となり革命が発生し、たくさんの人の命が失われましたが、その中に「徴税請負人という仕事に就いていた」という理由で処刑された科学者のラヴォアジエもいました(質量保存の法則で有名です)。
後になってこの本を読んだことを思い出した時、革命になってたくさんの人が亡くなった原因の一つには「国王に職業選択の自由がなかったこと」がある(つまり「人がどうこうよりも、社会システムの方に大きな問題があった」のではないか)ということに気が付きました。
(本を読んだ時ではありません。かなり時間が経って大きくなってからです。本を読んだ瞬間にそう考えることができたなら、私は天才でしょうけども)
というわけで、結論です。
母が非常に本が好きであったことと、母が怠惰でかつ家事能力も劣っていたことは、私にとって幸いでした。
家中に本が散らかっており、それらの本は読み放題な状態ですから。
これは他の子供にはない、素晴らしい環境と言えなくもありません。
しかし、もしも私がもう半歩先を歩いていたら、どうなっていたか?
本を踏んで滑って転んで、そこで命を落としていたかもしれません。
となるとやっぱり、私は不幸な子供と言わざるを得ないでしょうね。
……って、やっぱり悪いところになってもーたがな。笑。
とはいえ、これ以上書いても書いてもキリがありません。
過去はもうどうにもならないし、母もなくなりましたし。
これからはこのことを利用して、どうにかしようかなと。