タイトルそのまんまですが「history」の由来は「his story」ではありません。
「history」の由来はラテン語の「historia」であり、それが「story」でも同様ですので、両者の語源は同じであるということになります。
慶應義塾大学文学部英米文学専攻で英語史・歴史言語学の研究をされている堀田隆一先生は、ご自身のブログで以下のような記事を書かれています。
該当部分を以下、引用させて頂きます。
今日は,英語を学んだ後にフランス語を学んだ方にはお馴染みの話題かと思います.フランス語 histoire は「歴史」と「物語」の両方の意味をもちますが,英語では history 「歴史」, story 「物語」の2つの異なる単語に分かれており役割分担がはっきり区別されています.
容易に想像できると思いますが,history と story の語源は同一です.
まとめれば,中世から初期近代にかけて,究極的にはギリシア語 hístoríā に遡る形態的に少々異なる2つの単語が,フランス語経由で英語に入ってきて,いずれも「歴史」「物語」の両義で用いられていた.ところが,近代英語期にかけて,意味と形態の分化が生じ,現代英語の history および story という異なる単語と意味が定着した,ということです.
引用は以上です。
もうちょっとわかりやすい記事はないかなぁーと思って、検索すると柴田耕太郎主宰|英文教室様の公式ブログに『言葉のつながり 執筆者:田中千鶴香(実務翻訳者)』という記事がありました。
該当部分を以下、引用させて頂きます。
「英語のhistoryとstoryは語源が同じ」と聞いたら、あなたはびっくりするだろうか。フランス語やイタリア語をしっかり勉強した人なら、すぐに察しがつくだろう。多くのロマンス諸語には、「歴史」と「物語」の両方の意味を持つ語があるからだ。たとえばフランス語histoire、スペイン語historia、イタリア語storia、ポルトガル語históriaには、「歴史」と「物語」の両方の意味がある。
上記のすべての語は、ラテン語historiaとギリシャ語ἱστορίαに由来するとされている。
storyも同じくラテン語historiaがルーツだが、借入の経路がhistoryとは異なる。historyがラテン語からダイレクトに取り入れられた語であるのに対し、storyは、いったんノルマンフランス語の影響を受けてから(estorieを経由)、語形を変えて英語に入ってきた語である。
『英語語源小辞典』の解説にdoubletとあるのは、historyとstoryのように、同根だが移入経路などが異なるために語形や意味が異なる単語のペアを指す。「二重語(姉妹語)」と呼ばれ、実は珍しくない。
引用は以上です。
これらをまとめると以下です。
というわけで、堀田先生の引用文冒頭の「英語を学んだ後にフランス語を学んだ方にはお馴染みの話題」がどこまでを指すのかはわからないのですが、一部はこの私でも気付くことができました。
「story」はフランス経由だから、頭の「hi」が消えてしまったんですね。
有名なブランドのHermes(エルメス)もそうですが、フランス語では頭の「H」は発音しません。
日本ではフランス語の発音からそう呼んでいますけど、英語では「ハーミーズ」と発音するらしいです。
これはまぁーちょっとした豆知識であり、知らなくても何にも困らないことではありますけれども。
ところがラグジュアリーを学ぶ際には、このことは是非とも知っていて欲しいと思われるほどの、重要な意味を持つ単語となるわけです。
その話をすると長くなりますので、また後日とさせて頂きます。
(その記事を書いたらリンクする予定です)