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「男は度胸、女は愛嬌」が正しかった時代の話

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  • 2022/09/24 01:54

以前『「チ。―地球の運動について―」で、何故かマズローの欲求5段階説と日本人の価値観の話に発展』という記事で私は、以下のようなことを書いていました。

(個人的には「男は度胸、女は愛嬌。女の子は黙ってニコニコしてたらえーの!」というハタ迷惑なおばはんもどこにでもおったし何とかして欲しいと思ったもんです)

怒りのあまり文章がちとおかしくなっていましたが、実はこの「男は度胸、女は愛嬌」という価値観で、幸せになることができた時代もありました。

それは以前に出した電子書籍『ニート・引きこもりで悩む親御さんへ』の「第二章、世の中の定義とインフラの充実追記」でお話ししたことです。

まずは以下、その引用から。

今回はこの「需要側が供給側よりも強くなった」ことについて、それをもたらしたのは「インターネットというテクノロジーの進化」ですが、それだけが理由ではありません。

立場が逆転する決定打になったことは確かですが、それまでの間に徐々に需要側の地位が高くなってきていました。つまり、まとめて言えば「テクノロジーの進化によって需要側と供給側の地位が逆転した」ということになると思います。

ここで一つ例を挙げたいと思います。

江戸時代に紀伊國屋文左衛門という豪商がいました。みかんと塩鮭で大金持ちになった話が有名です。

そのエピソードは、江戸で生まれたかっぽれという宴会芸に「沖の暗いのに白帆が見ゆる、あれは紀ノ国みかん船」という唄の一部にも残っています。紀州和歌山と言えば、みかんの名産地として今でも有名ですね。

ある年、紀州ではみかんが大豊作となりました。しかし最大の消費地であった江戸には海が荒れ続けていたために船を出すことができず、運ぶことができません。そこで地元の近くで売るしかありませんが、江戸ほどの需要はないので上方商人に買い叩かれている状態でした。

江戸でみかんの需要が旺盛だったのは何故なのか。人口が多いというのもありますが、実はそれだけではありません。その頃の江戸では「ふいご祭り」という、鍛冶屋さんなど火を使うお仕事をされている人のお祭りがありました。この「ふいご祭り」では屋根の上からみかんをばら撒いて振る舞うしきたりがあるため、みかんがたくさん必要です。しかし海が荒れていたので江戸までみかんを運んでくれる船はなく、みかんは高騰します。

そこで紀伊國屋文左衛門が登場し、命懸けでみかんを紀州から江戸に運ぶわけです。買い叩かれているみかんを高騰している江戸で売るわけですから、ちょっと考えただけでも滅茶苦茶儲かりますよね。その当時の人がどれだけこのことに気付いたのかはわかりませんが、毎年みかんを江戸に運ぶ商いをしている人にはわかっていたことでしょう。

そんなわかりきったことなのに、何故誰もやらなかったのか。命が惜しいからに他なりません。海は大荒れですから、途中で船が難破して溺れ死ぬかもしれません。紀伊國屋文左衛門はただ一人、勇気を出してそれをやってのけたわけです。その動機はお金なのか故郷や江戸の人々のためなのかはわかりませんが、いずれにせよ「命を懸けて商売した、その見返りは十分にあった」という話でした。

(ちなみに江戸からの帰る積み荷のない船には塩鮭を買い込み、当時伝染病が流行っていた上方であらかじめ「疫病には塩鮭が効く」との噂を流しておき、その後上方でその塩鮭を売って大儲けしたそうです。これまたすごい話ですね)

というわけで、私が言いたかったことは「確かにこの時代なら、男は度胸で大儲けできて幸せになれるよ」ということであり、かつ「女はそんな男と結婚し、浮気されても愛嬌を忘れずにいると、離婚されず幸せに過ごせるよ」ということでした。

今現在、この紀伊国屋文左衛門と同じようなことをしてお金儲けできるかと言えば、無理ですよね。

今は天候にかかわらず、普通にみかんでも塩鮭でも何ぼでも運ぶことができますし、かなり大きな災害が起こった後でもしばらくすると復旧されますし。

何と言うても、日本の運送屋さんは皆さん優秀ですからねー。

要するに「今は時代が進んでテクノロジーやシステムが発達したから、紀伊国屋文左衛門のような度胸は必要とされていない」ということです。

そして「(その時代のお客さんに)必要とされていないものをがんばって出したところで、お金にはならない」という話でもあります。

さらに言えば「(その時代のお客さんに)必要とされているものを出すことのできる女は、愛嬌がなくともお金を稼ぐことができ(て生きていけ)る」という話でもあるわけです。

とはいえ、中には「男は度胸、女は愛嬌」で幸せになれる人もいるでしょうから、最終的には「その人による」という結論になるとは思いますけども。

概ね「男は度胸、女は愛嬌」が万人に当てはまる原則ではない時代になっているのは確かなので、こんなことを言うてるおっちゃんおばちゃんはええ加減口をつぐんで欲しいもんです(もしもまだおったら)。

……さすがにもうおらんかなぁー(そうであって欲しいです)。

今回の話は以上ですが、せっかくなのでもう一つおまけで。

いつぞやの記事(外部)の画像に追記し、加工したものをどうぞ。

Content image

岩本勇先生の論文「チャネル・リーダー移動と社会環境要因の関係に関する研究 ― 業界別PB比率とハーフィンダール指数 ―」より作成した画像です。

少々補足致しますと、以下。

(1)は「当時は地産地消(地元で生産されたものを地元で消費)が当たり前で、別のところで需要が高くなっているという情報を持つ卸売業者は、より強い立場に立つ(チャネルリーダーになる)ことができる」ということです。

(2)は「戦争の後でありとあらゆるものがない、または足りない状態だと、製造することのできる業者さんが強くなる」ということです。

(3)は「ある程度のものが既に存在する状態だと、よりたくさん売ることのできる小売店の業者さんが強くなる」ということです。

(4)は「インターネットが普及し製造者から直接買うこともできる上に、中古で別のお客さんから直接買うという手段もあり、かなりたくさんの業者さんが不要となる(そのことでよりお客さんが強くなる)」ということです。

以上です。

何らかのお役に立てたら嬉しいです。

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