最初はただの思いつきだった。
免許を取った当時、ショットバーのオーナーバーテンダーをやっていた。
六本木のBARを訪れるお客様は場所柄もあってほんと多種多様な方々ばかり。一人客が多かったお店だったけど、友人同士、彼氏彼女、上司と部下、職場の同僚、不倫のカップル等々も。
ある日役職サラリーマンとキャパ嬢さんがやって来た。男は女を言葉巧みに口説き、女は何かをせしめるために甘えてるようにも見えた。そんなやり取りを何気なく耳にしていて閃いた。男と女のそれぞれの欲望をうまく仲介するとビジネスになるって。真夜中の六本木のBAR、お酒の酔いと勢いで交わす安易な約束にも少なからず常軌を逸するレベルの内容があった。酔いに任せての突飛な約束事…明日になれば覚えてないで通せばいいなんて手前勝手な思いも計算もあったのだろう。
例えばカウンターで交わされる二人の会話…
男が「マンションでも買ってあげようか?」って女性の気を引くためか冗談交じりに口にする。女は「ほんとに…嬉しい」って会話にのっていく。
男「今ちょうど金あるし、今夜がチャンスかもよ。どこがいい?」
女「だったら麻布十番がいい、ほんとに買ってくれる?」
男「よし、週末は不動産巡りしようよ」
女「やったー!(私に視線を向けて)マスター証人になってね」
私は「分かりました」の言葉に続けて「こんな物件ありますけどどうですか?」って間取り図をカウンターに座る二人の前に差し出す…驚く二人。
こんな展開できると面白そうだなって思ってしまったし、中にはそのまま契約に至るケースもあり得るのではと思った。
※厳密にいうと…BAR営業中の不動産案内から契約締結までは法律上認められないこともあるけど、うまい抜け道はありそう。
そんな閃きがきっかけで宅建免許受験を決めたんです。
実際、宅地建物取引主任者免許(今は宅地建物取引士と呼ぶようだ)は国家資格な訳だから簡単に取れないと思ってて、試験受けるの決めたのが確か7月くらい、受験申請締め切りギリギリで申し込んで10月に試験があったかな。そこからは案外頑張って勉強してみたが本心では受からないだろうと思ってた。落ちたらそれもネタになるかなってノリだった。そして受験を終えて12月の発表、四択だし奇跡が起きるかもとちょっとは思っていたけど結局落ちた。だけどあんだけ突貫工事的な勉強にしてはギリギリの点数で落ちてることに自分でも驚き、もう少しちゃんと勉強すると受かるなって確信が持てた…で翌年見事合格。
実際にはカップルに物件売ることは最後まで叶わなかったけど、お客様の持ってる分譲マンションに客付けするなど不動産がらみのことは時々やっていた。
その後、東京卒業後の移住先大分では宅建免許を生かして不動産業界に転職できたこともあり、無駄にならなかったことはほんと良かった。
人生何がどう影響してくるか分からないね。