今までDeFiでは、過剰担保融資しかありませんでした。
なんとか低担保融資やクレジット(信用)スコア融資が成立できないものかと試行錯誤されています。
そんななか、無担保融資が登場しました。
「フラッシュローン」です。
一つのトランザクション内で借りて返せば、担保は不要ですよ。というもの。
dydxとbZxとAaveがレンディングプール内の未活用(借りられていない)資産を活用する方法として提供している。
(Aaveは借入額の0.09%が手数料、dydxとbZxは無料。)
今回のフラッシュアタックでは、
一回目は10000ETH(約3億円)
https://alis.to/CryptoChick/articles/anL9ndMlzkwb
二回目は7500ETH(約2億2000万円)
https://alis.to/CryptoChick/articles/KeO0b1NVPXzm
を「無担保・無利息・無手数料」で借りて実行されました。
起点になる借入と、途中の交換等の経路、最後の出口。
起点の借り入れと、出口での返済が整合したら、TX(トランザクション)は成功します。(フラッシュローンのチェックポイント)
道中の操作でも、経路によってはスリップ設定や担保割れ設定などによって途中で失敗が起こると、TX全体が失敗に終わります。
いわゆるアトミックトランザクションです。
全て成功するか、全部何も起こらないかのどちらか。というものです。
(「アトミックスワップ」は聞いたことがあると思います、出し手と受け手の双方が合意(条件を満たす)しない限り、TXは失敗する。何も起こらないか成功するかのどちらかしかない。つまり、中途半端に成功と失敗が混ざらないということです。)
(余談ですが、今回bZxが担保割れ貸し出し状態になってしまったのは、借り入れ入り口の担保チェックは動作したけど、返済出口でのチェックが同TX内の場合は起こらなかったという脆弱性によるものです。担保割れでも同TX内だったので入り口(借入)チェックしか作動せず、担保割れクローズを許してしまいました。これがTXが別れていたら、通常の清算動作に入れていたので過剰な担保割れは起こり得ませんでした。)
このようにフラッシュローンで大金を無料で借り入れて、市場を通過させて、多くの場合市場の歪みを発生させて利益を得るのが、フラッシュアタックです。
入り口と出口は整合するけども、通過した道中は荒らされてしまう感じです。
フラッシュローンの意図は、もともとそういった攻撃的な用途ではなく、担保資産の借り換え移転や、DEX間のアビトラなどの原資としての利用が想定されていましたが、利用の想像力は無限ですね。 光と闇は同居するものなのでしょう。。。
一度のTXでどれくらいの取引が可能なのか?
一回目のフラッシュアタックは約3MgasのTXでした。
https://etherscan.io/tx/0xb5c8bd9430b6cc87a0e2fe110ece6bf527fa4f170a4bc8cd032f768fc5219838
二回目は、反復的動作が多く入れられていたため8.4MgasのTXでした。
https://etherscan.io/tx/0x762881b07feb63c436dee38edd4ff1f7a74c33091e534af56c9f7d49b5ecac15
Ethereumのブロックサイズは10Mgasです。
二回目のTXは、ほぼ一つのブロックを埋め尽くすほどの大きさであったことがわかります。
通過する経路によってgas消費量も異なりますし、一概には言えないですが、何度もマージントレードを経由するようなTXは難しいのではないかと思います。
いくつかのマージントレードDEXでのアクションでは一回で1~2Mgas消費することもありますので。
(ちなみに通常のETH転送は21000gasです。ERC20トークンでは概ね30000~60000gasといったところです。)
GasLimit(≒ブロックサイズ)が大きすぎるのもある種のリスクが増大するとも言えます。
(余談ですが、もちろんブロックのノード間伝播の重さにも影響しますので、処理容量を多くするためにブロックを大きくするという安直な考えは成立しません。ブロック伝播速度と重さが(ノード)ネットワーク全体でバランスが取れる必要があります。つまり、「小さく早く」か「重くゆっくり」のどちらかというジレンマがあります。これらは通信帯域の性能向上によってスケール改善されるという見方もあります。)
さて、数億円単位の借り入れが何のリスクもなしに実行できるフラッシローン。
これからもいろいろ良いことも良くないことも起こりそうですね。興味深いですが、怖い一面もありますね。
今のところ、技術者以外は簡単に触ることができません。これからきっと、フラッシュローンをカスタム提供してくれるようなサービスDappが出てくるのかもしれませんね☆
最後までお読みいただきありがとうございました。