告白します。
私には不思議な力が備わっています。
それは、あの日の深夜勤から、始まりました。
いつも、重症患者を受け持つ時、心の底で、「今日は、この人が危なそうだな~」て思うんです。
「どうか私の勤務時間帯での急変は、ありませんように」と、祈りながら勤務します。
でも、たいがい、予想は当たります。
その日、深夜の2時にナースコールが鳴りました。
ナースコールの赤いランプが目に止まります。ナースステーションにいる時は鳴りません。私が巡回している時に、ナースコールを押してくるのです。
ナースコールを鳴らした部屋に赤いランプがともります。
でも、その部屋には、誰も居ません。
誰かのいたずらでしょうか?
深夜に、動き出す患者さんは、重症者の多いこの病棟には居ません。
確かに、空きベッドからのナースコールなんです。
私は恐る恐る、部屋の中に入って、ナースコールを止めました。
真っ暗な病室には、白い煙のように漂う人影がボーっと、現れます。
確かにこちらを見ています。白い煙の様な人影ですが、しっかりと、誰なのか伝わってきます。
ゆっくり、ゆっくり、こちらに顔を向けているのがわかります。
私と目が合うと、静かに、すっと消えて行きました。
私は、怖いというより、厳かな気持ちになるんです。
「お世話になりました」と、言っているように、思えるからです。
それから、数時間が経って、朝日が昇る直前の闇の中に、その人は静かに帰って行きました。
不思議な事に、ナースコールは、私にしか聞こえないのです。
今日も、深夜2時に、ナースコールが鳴ります。
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