こんにちは、ヘクトです。
前回の記事ではSwap系DeFiの構造をふわっと解説してみました。
この記事で、変動損失というものがあると書きましたが、
どれだけ変動したらどれだけ損失になるのかが今ひとつ分からないと思います。
今回は変動損失の影響の大きさとしくみを解説してみようと思います。
バイナンスアカデミーというところで良い記事があり、ここを読むと変動損失について説明されています。
これを読んですべて分かるならそれで終わりなのですが、読んだだけではスッキリしなかったため、まとめてみます。
バイナンスアカデミーの記事では、例としてアリスという人物がETH-DAIのプールにETHとDAIを預け、ETHが4倍になったあとに引き出した、という話ですね。
プールシェア10%と考えていますが、変動損失を考えるだけなら、特に考える必要はないのかなと思います。
●預けるときのレートは1ETH = 100DAI
●アリスは1ETHと100DAIをペアにして流動性を提供した
●その後ETHの価格が4倍になり、レートが1ETH = 400DAIになった
全部取り出したらETHとDAIはどれだけ出てくるか?
流動性プール内では、ETHの量とDAIの量を掛け算した数値(流動性)が一定になる
という法則があります。
掛け算した数値が一定ということは、
ETHが2倍の量になったらDAIの量は0.5倍、
ETHが0.5倍の量になったらDAIの量は2倍ということですね。
Swapするときのレートは、プール内の量の比率で決まります。
預けた流動性は1ETHと100DAIなので、1×100=100で流動性は100です。
1ETH=400DAIのレートかつ、ETHの量とDAIの量をかけたら100となるのは、
0.5ETHと200DAIですね。
ということで、0.5ETHと200DAIが出てきて、
1ETH=400DAIとなっているので0.5ETHは200DAI相当、
合計400DAI相当がプールから出てくるということになります。
では、もし流動性を提供せず、ウォレットにホールドしていたなら、
1ETHと100DAIがそのまま残り、
1ETH=400DAIになっているので、
合計500DAI相当になりますね。
ガチホなら最初200DAI相当持っていたものが500DAI相当まで増えます。
流動性提供していても増えてるといえば増えてるのですが、ガチホしているほうがもっと増えてたかも。。という計算結果になることから変動損失と言われるのですね。ガチホならトランザクション手数料もかかりませんし。
ただし、プールに預けることによって交換手数料がもらえるので、変動損失より多くの手数料収入が入っていれば、流動性提供する方がガチホを超えられます。
では、変動損失がどれだけあるのか、バイナンスアカデミーの記事でもグラフが載っていますが、表を作ってグラフを描いてみました。
通貨Aが変動する通貨(ETH等)、通貨Bが基準の通貨(DAI等)としてみました。
D列(通貨Aの量)とF列(通貨Bの量)をかけるといつも1になっています。
「ETHの量とDAIの量を掛け算した数値(流動性)が一定になる」法則がここで成立しています。
そしてE列(通貨AのB換算)とG列(通貨Bの額)が同じになっています。
プール内の通貨Aと通貨Bが時価総額で1:1になる法則も成り立ちます。
変動があまりなければ気にならない程度ですが、変動率が大きいとガチホの直線からかなり離れていきますね。
損失がけっこう大きいので、流動性提供でもらえる手数料とFarmで掘れるトークンが多くないと厳しいかもしれません。
提供しているペアであまり交換されないのにレートがどんどん変化していくようなペアには流動性提供しないほうがいいかもしれませんね。
変動損失が少なくて、手数料が多くもらえるペアはどんなものなのか、考えてみました。
①2つの通貨のレートが一定 (DAI、USDT、USDC、BUSDの組み合わせ、BETH-ETHの組み合わせ)
もしくは、連動して同じような値動きをしている通貨同士
ペアになっている通貨同士でのレートがあまり変動しないなら、変動損失が少なくなります。もしくは変動しても預けたときと同じくらいのレートに戻ったときに引き出すようにすれば変動損失を回避できます。
②提供されている流動性がある程度多い、でも多すぎない
流動性が著しく少ないペアは、たくさんSwapしようとするとレートがすぐに変わってしまいます。
すると、流動性の多い通貨同士のルートのほうがレートがよくなり、他の通貨を経由して流動性の多いペアを2つや3つ使って交換が行われてしまいます。
例えば、通貨A、B、C、Dとあって、AとDのペアを少ない流動性で作っても、通貨BとCがメジャーな通貨で、A→B→C→Dと交換してしまったほうが流動性が多くてレート変動が少なく、結果多くの通貨Dが手に入るとしたら、A-Dのペアの流動性プールは使われません。
逆にプールの流動性が多すぎる場合は、自分の提供する流動性のシェアが少なくなり、手数料をみんなで分け合って取り分が少なくなります。
③ボリューム(出来高)が多い
交換される量が多ければ、プールに入ってくる手数料がそのぶん増えます。
流動性が多すぎても、出来高が多ければたくさん手数料が入ってきます。
②と③は、使える流動性の量がありつつ、プールシェアが確保でき、ボリュームがあるペアを選ぶということですが、APY(年利)が高いペアが単純にその条件を満たしているので、表示されているAPYで決めると簡単です。
あとは、変動しにくいペアを選ぶか、変動リスクを許容して高いAPYを狙うかの選択をするというところですね。
流動性提供の側からみて人気のペアと不人気のペアがあります。
独自トークンが多くもらえる通貨ペアがFarmsとかPoolページにも表示されているので人気になり流動性も多くなります。
また、ステーブルコイン同士のペアも、変動リスクの少なさから流動性が多くなる傾向があります。
それなりに人気のある通貨同士なのに流動性提供が少ないペアというものも探せばあって、そこに直通トンネルを通す感覚で流動性を提供してみると、プールシェアが意外に多くとれてボリュームもそれなりに多くなり、手数料収入がいいペアもあるかもしれません。
流動性が少なすぎるとレート変動が激しいので使われないで経由されてしまうと上で書きましたが、
ボリュームが期待できる通貨ペアの流動性を増やしてあげれば、経由ルートを通らずに直通してくれる確率も上がるので、手数料がっぽり独占できるペアがないか、いろいろな組み合わせを調べてます。
というわけで、今回はめちゃくちゃマニアックな話でした。