アルツハイマーと言えば、脳内での神経変性やタンパク質の異常によって引き起こされると考えられている病気です。
運動や食事によっても発症を抑えたり進行を遅らせることができたりと、日々の生活習慣に関係の深い病気とも言えます。
そんなアルツハイマー病ですが、最近の研究では腸内の細菌と相関性が見られたことで話題となっています。
今回はその研究についてのまとめ記事です。
参考記事)
・Differences in Gut Bacteria Could Be The First Warning Signs of Alzheimer's(2023/06/21)
参考研究)
・Gut microbiome composition may be an indicator of preclinical Alzheimer’s disease(2023/06/14)
2023年6月に行われたワシントン大学の研究にて、腸内細菌とアルツハイマーの相関性を示す研究結果が示されました。
アルツハイマー病の初期段階の人は、ある種の腸内細菌が多いことが判明しました。
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、腸内細菌、ウイルス、真菌類を含む微生物の集合体です。
多様な微生物の集団を持つことは、私たちの健康にとって重要です。
しかし特定の状況下では、腸内マイクロバイオームに人体に有害な微生物も含まれている可能性があります。
アルツハイマー病は、アミロイドβとタウという二つのタンパク質が脳内に異常に蓄積することで知られています。
その結果、アルツハイマー病に特徴的な記憶喪失や認知機能の低下が起こり、時間と共に症状は徐々に悪化します。
この二つのタンパク質は、アルツハイマー病の症状が現れるずっと前から蓄積し始めるとされています。
研究によって腸内細菌叢に変化があることを確認したのは、このタンパク質が蓄積し始める段階(前臨床段階)と呼ばれるステージにおいてです。
研究では、115人の健常者とアルツハイマー病の前段階の患者(前臨床AD患者)49人を対象に、腸内細菌叢の状態を比較しました。
比較から、前臨床アルツハイマーの兆候のある高齢者とない高齢者の腸内細菌叢に明確な違いを発見しました。
アルツハイマーの兆候のある人は、健康な人と比べて“Faecalibacterium prausnitzii(F.プラウスニッツィー)”と呼ばれる細菌が減少していることが分かりました。
共通して見られたこの細菌の減少とアルツハイマー病にどのような因果関係があるのかは分かっていませんが、少なくとも相関関係があるものと考えられます。
この研究によって、便などから腸内細菌を検査することで、アルツハイマーの兆候を察知することができる可能性が高まりました。
これは、経済的技術的な理由で検査を受けられない人に対しては有効な手段にもなり得ます。
また検査も比較的簡単になるため、定期的な健康診断によってアルツハイマー病の早期発見につながるとされています。