シャクトリムシやナナフシ、タコやフクロウ(ミミズク)に至るまで、多くの生物の生存戦略として有効とされてきた“擬態”。
天敵に狙われた際、危険を回避する有効な手段として用いられてきた特性ですが、どの生物も自身が周りの環境に合わせたものに擬態します。
しかし、最近中国の熱帯雨林で発見された生物の中には、2匹で役割分担をして擬態するクモが発見され話題となりました。(現時点では仮説段階)
今回のテーマはそんな面白いクモについての研究の紹介です。
参考研究)
・There Are Two Spiders in This Picture, And It Could Be a First of Its Kind(2024/04/04)
参考記事)
・Male and female crab spiders “cooperate” to mimic a flower(2024/04/04)
今回フォーカスされたのは、カニグモ科アズチグモ属に分類されているThomisus guangxicusというクモ。
カニグモは日本においてアシダカグモやハナグモなどで有名な種類で、気候に大きな違いがない中国においても同じ種類のクモは多く生息します。
このThomisus guangxicusもそんなクモのひとつで、今回確認されたのは熱帯雨林にいる種類とされています。
雲南大学の環境科学者Shi-Mao Wu氏とJiang-Yun Gao氏は、花に擬態するためオス(小さくて茶色)とメス(大きくて白い)が協力をする姿を記録したと報告しています。
この種のクは、巣を作らず植物の葉や花びらに偽装して身を守ったり獲物を待ち伏せたりすることが多いです。
今回の擬態行動を見たMao Wu氏は「今回の例のように協力して擬態する姿を見たのは初めのことだろう」と、この小さな生物の習性に驚きのコメントを残しています。
Thomisus guangxicusの場合、オスとメスの見た目は非常に異なっていて、オスはメスよりもはるかに小さく、かなり暗い色を持っています。
このオス・メスの差異は多くのカニグモ種に当てはまり、たいていの場合メスの方が周りの環境に擬態しやすい見た目をしています。
これまで科学者らは、オスの擬態能力がなぜこんなにもメスと違うのかを疑問に思っていました。
今回の発見は、この疑問の答えを見つける手がかりになるかもしれません。
Thomisus guangxicusなどのクモはメスの上に乗ることが知られていましたが、これは本来交尾のためだと考えられていました。
なぜメスの高い擬態能力をわざわざオスが台無しにするのか……。
これは擬態の効果を下げるのではなく、花の雄しべなどに模倣することで、天敵から見つかりにくくなるための生存戦略などかもしれません。
しかし、これが事実かどうかは不明です。
クモはただ交尾行動に従事していただけで、偶然そう見えただけかもしれません。
今後も、性的二型を持つカニグモや他の種を観察し続けることで、擬態することに関連性があるかを解き明かしていくことが期待されています。
研究者の詳細は、Frontiers in Ecology and the Environment: EcoPicsにて確認をすることができます。