以前の記事にて、夜勤が身体に及ぼす害について紹介したことがありました。
体内時計とも言える概日リズムの乱れが、ストレスホルモン異常を引き起こし、過食など生活習慣に悪影響を及ぼすといった旨の記事です。
今回もそんな夜勤によって強制的に生活習慣が乱れることによる弊害についての研究を紹介です。
参考記事)
・Most Night Shift Workers Have a Sleep Disorder, Study Confirms(2023/12/12)
参考研究)
・Shift work is associated with extensively disordered sleep, especially when working nights(2023/12/07)
フローニンゲン大学、アムステルダム大学らの研究によると、定期的に夜勤をしている人のおよそ10人に1人には問題があるという。
そのうちの半数以上が不眠症など、何らかの睡眠障害を発症している可能性が高いことが明らかになりました。
研究チームは、ベルギーの広告紙から募集した37,662 人から、仕事と睡眠のデータを収集し、仕事のスケジュール(日勤、早朝、夕方、夜勤、シフト制)に基づいてグループに分けました。
分析では、不眠症、過眠症(日中の過度の眠気)、パラソムニア(異常な動きや夢)、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、概日リズム睡眠覚醒障害の6つの一般的な睡眠障害カテゴリーとの関係を調査しました。
その結果、定期的な夜勤を行う人の51%は、少なくとも 1 つの睡眠障害に関して陽性スコアを示しました。
また、通常の夜勤労働者の4分の1以上 (約26%) が2つ以上の睡眠障害を報告しました。
研究全体を通じて、すべての勤務スケジュールを合わせると、1つ以上何かしらの睡眠障害を抱えている人の数は約3人に1人でした。
フローニンゲン大学の睡眠科学者マリケ・ランセル氏は、「交替勤務や定期的な夜勤で働く人は、日勤で働く人と比較しすると睡眠障害の発生率が高いことが示された」と述べています。
チームはまた、特定の人口統計的要因に基づいて結果の内訳も分析しました
30歳以下の若い参加者は睡眠障害をもつ可能性が高い傾向にありましたが、平均睡眠時間が短かったのは高齢者の方でした。
教育水準との関連性も見られました。
教育水準が低く若い場合は、睡眠障害に関連する睡眠と覚醒のパターンの乱れが顕著にみられました。
ランセル氏は、「交代勤務が睡眠に及ぼす影響は、低学歴の若者に最も顕著に表れる」と述べています。
注意点としてこのデータは、新聞広告の呼びかけに応じた人々によるもので、夜勤がこれらの健康問題を直接引き起こしていることを証明するものではありません。
ただし、研究による統計はこの2つの間に重要な関係があることを示しています。
不規則な時間勤務、特に夜間勤務は、糖尿病、がん、うつ病などの多くの健康上の問題と関連していることは過去の研究でも明らかになっています。
夜勤労働が現代社会に欠かせないことは明らかですが、「夜勤期間をできるだけ短くし、睡眠不足を改善するために十分な休息日を設ける勤務スケジュールが推奨される」と研究者らはまとめています。
論文の詳細は、科学情報サイトFrontiersにて確認できます。