DOGVILLは、ある小さな町で起こる事件をきっかけに、人間の善と悪を垣間見る事ができるサスペンス映画です。
物語の主役であるグレース(パッケージの女性)が、町の人々と生活する中で触れる優しさ、偽善、本能の中荒波に揉まれていきます。
物語は全部で9章+プロローグからなる、約3時間にも及ぶストーリー。
その全貌をまとめていきます。
プロローグ
まずこの映画は、以下のような白線と舞台セットのみが用意されています。
このセットが「ドッグヴィル」を丸々表現しており、ナレーションと役者の演技で物語が進んでいきます。
銃声と追われた女性
主役の一人であるトムはある夜、町の近くで銃声が鳴り響くのに気づきます。
しばらくすると町の番犬が騒ぎ出し、何者かから追われているであろう女性が逃げ込んできます。
彼女がこの物語の主人公グレースです。
直後、隣町のマフィアが彼女を探すために村に来ますが、トムは「彼女は来ていない、見かけたらすぐに連絡する。」と言ってその場を丸く収めます。
トムは正体を明かさないグレースを不思議がりながらも、次の日彼女を全員に紹介します。
この町で匿うか追い出すかを町の人たちで決めようと言うのです。
結論は…、2周間町で過ごしてもらい、最後は投票で決めるというもの。
投票のときに一人でも彼女が村に残ることに反対するものがいれば、彼女は町から出ていくという取り決めをしました。
ここから、彼女は常に誰かに監視される日々を送ることになります。
「してもいいとは思うけど、特にするひつようも無いこと」
彼女は町の人に認めてもらおうと、積極的に仕事の手伝いをしようとします。
しかし、よそ者の彼女に仕事を与える人などどこにもいません。
そんな事hあトムも承知の上。
ここである助け舟を出します。
「してもいいとは思うけど、特にするひつようも無いことは?」
「例えば、野生のグーズベリーの手入れをさせるとか…。」
そんな提案があってからか、彼女は徐々に村の人達の役に立つ仕事を任されるようになります。
一人ぼっちの老人の話を聞いてあげたり勉強を教えてあげたりと、全員ではないけれど町の人と打ち解けていきます。
グレースの運命
グレースが町に来て約束の2周間が過ぎました。
彼女が町から追い出されるか留まるかが決まる日です。
話し合いには15人の村人が参加し、全員の許しを得なければなりません。
グレースはその場を後にし、すぐに町を去れるように準備をします。
荷物をまとめていると、その中に見知らぬ物が入っていることに気づきます。
パン、ナイフ、地図、パイ…。
どれも町の人と触れ合ったときの思い出の品です。
町を去ろうと決意し、山に続く崖を登っていきます。
しかしここで投票の可を知らせる鐘がなります。
彼女は町の人々から認められ、留まることが許されたのです。
以前にも増し、より親密になったグレースの町の人々…。
遂には家まで貰って、一人で生活できるようにもなりました!
という幸せなお話が、この映画「ドッグヴィル」です。
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という話でしたらどれだけ良かったことか…。
この映画の本当の物語はここから始まります。
グレースの不幸の始まり
アメリカの独立記念日を祝うお祭りの日、そこに警察の車が乱入し、手配書を貼っていきます。
そこに書かれていたのは、グレースの顔写真と罪状。
銀行強盗の犯人の一人として賞金がかけられていました。
これはギャングが彼女を見つけるための嘘の情報でしたが、当然町の人々は彼女を不審がります。
リスクに見合う働きを求め、彼女にもっと町で働くよう指示されます。
トムはグレースの身を案じて住人に色々と交渉をしましたが、結局労働量が増え報酬が減る条件で彼女は働くことになります。
労働に耐えながらも、匿ってくれる町のために一生懸命働くグレース。
ある時、突然警察がドッグヴィルの町に訪れます。
本来は部外者が町に来るときには鐘が鳴る仕組みでしたが、今回はその鐘の音が聞こえませんでした。
その原因は、あるリンゴ農家の亭主チャックがそれを止めていたから。
彼女を欲したチャックは、騒いだら警察に突き出すと脅し彼女を襲います。
警察に突き出されることは免れた彼女ですが、その日から住人の嫌がらせは増していきます。
グレース、町を出る
日に日にエスカレートする労働と嫌がらせ。
そんな生活が続いたある夜、グレースを襲ったチャックの妻が彼女の元を訪ねます。
話の主題はもちろんチャックのこと。
妻はグレースが夫を誘惑したと思い込み、一方的に彼女を責めます。
挙げ句の果に、グレースが労働の対価として集めていたガラスの人形を粉々に砕いてしまいます。
それ以降も続く嫌がらせに、トムはグレースに町を出る提案をします。
町の外に出るためのトラックを持っている運び屋のベンにお金を渡し、町から出る計画を実行します。
計画通り町を出るも、「危険な割に値段が釣り合わない」とゴネられ、結局彼にも襲われてしまいます。
それでもなんとか町を脱出するために気を強くもったグレース。
彼女を乗せたトラック町の外へと向かっていきます。
こうしてトラックがたどり着いた先は…。
…ドッグヴィルでした。
運転手のビルは「運び屋は中立でなければならない」と、町の人を騙して彼女を外に出すことを止めたのです。
計画は失敗に終わりました。
グレースは重い車輪付きの首輪を装着され、更に普段通りの重労働を強いられるようになります。
グレースの訴え
労働に次ぐ労働、そして来る日も男に襲われる日々を過ごすグレース。
それでも味方でいてくれるトムはある提案をします。
彼女に集会の場での発言権を与え、町の人に変わって貰おうと考えたのです。
彼女は提案に乗り、自身の行いについて訴え赦しを請おうとしましたが、それも届かないと諦め、その場を後にします。
話を聞こうとしない住人たちに怒りを覚えたトムも、彼女を追うように会場を後にます。
しかし、自分の身を守ろうとする町の人々が言うことにも理があり、彼自身もグレースがいることで、自分の作家になる夢が絶たれてしまうのではないかとも考えます。
グレースが逃げてきた日に、ギャングに渡された連絡先を見ながら…。
町の人の変化
グレースが訴えた次の日、いつもは労働のために起こされるはずが、この日は誰も起こしに来ません。
町の人に話しかけると、いつもは煙たがられるはずなのに、みんな愛想良く接してくれます。
トムは昨夜の集会の訴えが、みんなの心を変えたんだと言います。
しばらく休みが必要だと言って、彼女に数日の休暇を与えます。
穏やかな休暇を過ごした数日後、町の人が道が塞がって通れないと、普段はしないような心配をして騒ぎになっています。
どうしたのかと思いながらもグレースは、動労を始めていくことになりますが、ある予感が彼女の脳裏によぎります。
ドッグヴィルとの別れ
道の封鎖が騒がれた数日後、ギャングの車が町に乗り込んできます。
ギャングたちはすぐにグレースの居場所を言えと迫ってきます。
グレースを見つけたギャングたちは、首輪や重りを付けられていることに激怒。
すぐに外すように支持します。
そうです。
グレースはギャングの一味であり、しかも首領の娘だったのです。
ギャングから逃れていた原因は、倫理観の違いから父と口論になり、組織を抜けてきたという、いわゆる家でのようなものでした。
車の中で父と再会し口喧嘩も再開。
しかし、ドッグヴィルの人々見てきた彼女は、自分の倫理観に自信を持てなくなってしまい、父の後を継ぐ決意をします。
最後に自分に優しくしてくれたトムと話をしますが、「自分の作品(小説)のために利用して悪かった」と見当違いのセリフを吐きます。
愛想が尽き、車に戻ったグレースは、「こんな町なくなった方が良い。」と言います。
父はすぐさま町を焼いて住人を皆殺しにするよう指示。
命令通り、一人残らず殺していきます。
最後はトムを自分自身の手で殺し、ドッグヴィルは世界から消えることになるのです。
最後に残ったのは、唯一犬のモーゼスだけ。
町に残ったのはモーゼスの鳴き声のみになったのです…。
最後に
以上が映画ドッグヴィルの大まかなストーリー。
人間の寛容さや暖かさが映える前半に比べ、後半は欲望と偽善にまみれたドロドロの展開ですね。
あれだけグレースに寄り添っていた主役のトムですらも、最後はいい作品ができそうだと自分のことを考える始末。
最初から彼女を追い出しておけば、こうならなかったかも知れないというジレンマが残るような作品ですね。
中途半端な優しさが身を滅ぼすかも知れないという教訓にもなりました。