前回記事「プラスチックを電子レンジで加熱すると数十億個の微粒子が放出されることを科学者が警告」にて、耐熱性のプラスチック容器だとしても熱によってマイクロプラスチックが食品に溶け出してしまう旨の研究を紹介しました。
今回はそれに続き、マイクロプラスチックが人体に与える影響についての研究まとめです。
動物での研究によって、ヒトへの深刻な影響が見えて来たようです。
参考記事)
・Microplastics Could Trigger Inflammation in Human Brain Cells(2023/08/20)
参考研究)
大邱慶北科学技術院(DGIST)の研究者らは、血液中に含まれるマイクロプラスチックと生物の関係についての報告を出しました。
それまでの研究では、マイクロプラスチックが哺乳類の脳血液関門を通過する可能性があることを示す証拠が増えており、とくに自然界で文化され風化したマイクロプラスチックは、ヒトの脳細胞に対してはるかに高い毒性を示すことが明らかになっています。
DGIST)の生物学者、チェ・ソンギュン氏は、「自然環境で風化されたマイクロプラスチックは、脳でより深刻な炎症反応を引き起こす。マイクロプラスチックの有害性の意味は特に憂慮すべきものである」と述べています。
私たちの身の回りにはプラスチックが溢れています。
プラスチックで身を覆い、プラスチックで食事をし、プラスチックで飲み物を飲み、プラスチックを持ち歩く。
これらの大量のプラスチックは、耐用年数を通じてマイクロプラスチックと呼ばれる破片を排出する。
外に置いておいたバケツが月日が経つとパリパリにになるように、プラスチックは雨や風、日光などによって細かい破片になります。
この破片は形や構造を変えながら意図せず生物の体内に入ってきます。
今回DGISTの研究では、この破片のように風化したマイクロプラスチックを使って生物への影響を確かめました。
私たちの脳の免疫細胞であるミクログリアが、風化したポリスチレン由来のマイクロプラスチックにどのように反応するかを調べ、同じ大きさの「バージン(風化していない)」プラスチックとも比較しました。
その結果、マウスに風化したマイクロプラスチックを7日間与えたところ、血液中の炎症性粒子のレベルが上昇し、脳内の細胞死も増加したことが分かりました。
そこで研究者たちは、実験室で培養したヒト脳由来ミクログリア細胞株(HMC-3)を使って、風化したポリスチレンの破片との反応を比較しました。
その結果もやはり風化したマイクロプラスチックの方が、そうでないマイクロプラスチックよりも激しい炎症反応を示しました。
反応を分析すると、風化したマイクロプラスチックが糖を分解してエネルギーに変換する際に関与するタンパク質に影響を与えることが分かり、ミクログリア細胞での発現が対照群の細胞に比べて10倍から15倍増加することを発見しました。
また、脳細胞死に関与するタンパク質の濃度も5倍上昇したことも示唆されました。
研究チームは、これはマイクロプラスチックが太陽光にさらされたときに起こる変化に関係しているのではないかと考えています。
ポリスチレンは紫外線を吸収するためプラスチックがもろくなり、破砕されやすくなります。
研究チームは、風化したポリスチレンの表面積が増加し、化学結合が変化していることも発見しました。
このことは、脳細胞による炎症反応を増加させることになり、同量の風化していないマイクロプラスチックの場合よりもはるかに深刻です。
研究の第一人者であるチョイ氏は、「環境中に流出したプラスチックは風化プロセスを加速させ、神経毒性物質となりうる二次的なマイクロプラスチックに変化し、脳における炎症と細胞死を増加させる」と述べ、風化したマイクロプラスチックの危険性を伝えています。
この結果は今のところ、実験室条件下で生きたマウスやヒトの組織サンプルでしか観察されていません。
しかし、これらの汚染物質が脳組織に到達するとこのような重大な変化をもたらすという事実は、汚染物質が脳の健康に影響を与えることを強く示唆しています。
研究者たちは現在この結果を検証するため、より多くのサンプルと長期的な環境条件をよりよく反映する長期的な研究を計画しています。
この見えないプラスチックについて、より一層の注意が必要だということが分かる研究内容でした。
しっかりゴミ箱に捨てるというならまだしも、ポイ捨てだったり処理の仕方が分からず放置という選択は、後に自分が苦しむことになるということでもありますね。
この研究の内容はEnvironmental Researchにて確認できます。