最近TikTokで人気を集めている“キャロット・タン”と呼ばれる美容トレンド。
インフルエンサーは「1日3本のニンジンを食べると、春や夏でなくても自然な日焼けができると」主張しています。
これは本当なのか、そして健康的なのか……。
科学者による見解についての記事が注目を集めています。
参考記事)
・"Carrot Tans" Are Trending on Tiktok. Here's What The Science Says.(2023/10/02)
参考研究)
・β-Carotene and Other Carotenoids
・Carotenoderma – a review of the current literature
カロテノイドは果物や野菜に赤、オレンジなど黄色がかった色をつける天然色素です。
カロテノイドには、ルテイン、リコピン、α-カロテン、β-カロテンなど多くの種類があり、その中でもβ-カロテンは、ニンジンをオレンジ色に色つける物質でもあります。
β-カロテンを含む食品が消化されると、腸内の細胞によってβ-カロテンをレチノール(ビタミンAとしても知られる)に分解されます。
このビタミンAは、視力、生殖、免疫、成長など、さまざまな重要な身体機能に使われます。
身体は、必要な量に応じてβ-カロテンからビタミンAへの変換を制御することができ、体内のビタミンAが十分な量になるとβ-カロテンのビタミンAへの変換が遅めたり止めたりすることができます。
余分なβ-カロテンは、肝臓や脂肪組織に蓄積されるか、便を通して排泄されるか、皮膚の外層にある汗腺から排出されます。
この皮膚の外層に影響を与える際の現象が、カロテノイドによる肌の変色が今回言われている“キャロット・タン”と考えられています。
医学的にはこれをカロテノデルマと呼ばれています。
カロテノデルマは、日焼けとは違う黄色やオレンジの色素を肌に与えます。
特に手のひら、足の裏、鼻に近いほうれい線に集中します。
β-カロテンを含む食品はニンジンだけはなく、濃い緑色の葉野菜、黄色やオレンジ色の野菜や果物(パセリ、バジル、ニラ、チリパウダー、サンドライトマト)にも多く含まれ、その他サプリメントでも接種されています。
ではそのカロテノデルマが現れるほどの人参はどれくらいなのでしょうか。
通常、数日間ニンジンを大量に摂取しても肌の色が変わることはまずないとされています。
1日に食べるニンジンの本数と皮膚の色の変化やその他の結果との関係を詳しく検証した試験は実施されていませんが、血中濃度が250~500μg/dLより高くなると、カロテン皮症が現れるという結果は得られています。
ある症例報告では、1週間に約3キロのニンジン(1日に大きなニンジン約7本)を食べた患者は、皮膚の色が変化することが記録されています。
他の専門家によれば、色の変化を起こすには少なくとも1日10本のニンジンを少なくとも数週間食べ続ける必要があると述べており、多くの人はこの量のニンジンを摂取することは難しいでしょう。
肌の色を変えるのに必要なニンジンの量(β-カロテンの吸収量)は、ニンジンの品種、大きさ、熟し具合、調理法、脂肪源と一緒に食べるかどうか、体重や胃腸の健康状態など様々な影響によって左右されるため、一概には言えないというのが現時点での研究者の見解です。
プロビタミンA化合物(β-カロテンを含む)は、ビタミンAの前駆体です。
先程も述べた通り、プロビタミンA化合物からビタミンAへの変換は体内で調節されているため、プロビタミンA化合物がヒトにビタミンA毒性を引き起こすことはないとされています。
しかし、高用量のβ-カロテン・サプリメント(1日20mg以上)を摂取すると、喫煙者や以前タバコを吸っていた人の肺がんリスクが高まるという証拠がいくつかあります。
従って、癌評議会は、特に喫煙者は高用量のベータカロチンサプリメント(1日20mg以上)を避けることを推奨しています。
ただし、過剰摂取という危険性を述べただけであり、喫煙者であってもβ-カロテンを含む果物や野菜を摂取すべきであるとしています。
クイーンズランド大学コミュニティ・ヘルス&ウェルビーイング学部教授エミリー・バーチ氏は、
「ニンジンを食べることに集中しなくても、食べ物で見た目を美しくすることはできる。
肌の自然なトーンアップには、色とりどりの野菜、特にカロテノイドを多く含む野菜を食事に取り入れりよ良いだろう。
一日に何本ニンジンを食べたとしても、外に出るときは日焼け止めで肌を守ることが大切である」
と、日焼けを避けることが肌の健康を守る大切なことであることも述べています。
肌ケアの行き着く先はやはり日焼け(UV)を避けることのようですね。
とは言え全く日に当たらないのも、ビタミンの合成にとっては良くありません。
程よく野菜を食べ、程よく太陽の下で活動する。
結局やり過ぎがよくないということですね。