甘いものは避けようと心に決めるも、一歩外に出ると街に漂うドーナツの甘い匂いに誘われてついついお菓子屋さんにふらり……。
甘いものの誘惑に逆らうことは容易ではありません。
しかし、将来の病気になるリスクを減らそうと考えているなら、どこかで断ち切らなければならない習慣でもあります。
では、健康的なライフスタイルを手に入れるためにどのようなことに気をつければ良いのでしょう。
今回はそんな悪習を断ち切る手助けとなる研究記事まとめです。
参考記事)
・Use These Three Mind Hacks to Avoid Temptation When Eating Healthily(2024/01/05)
参考研究)
・Undermining Desire: Reducing Unhealthy Choices by Highlighting Short-Term (vs. Long-Term) Costs(2023/01/23)
APA Psyc NETで取り上げられている研究では、不健康な選択を避けるための最善の方法は、“長期的な結果について考えること”と伝えています。
例えば、ドーナツを食べ過ぎると糖尿病や肥満につながることを知ったり、清涼飲料水に含まれる異性果糖(果糖ブドウ糖液糖など)を習慣的に摂取していることで、病気のリスクが跳ね上がることを知ったりすることで、そういった誘惑から遠ざかるチャンスを得るというものです。
「こうした長期的な結果について考えれば、今は贅沢をせずに目標をしっかりと守ることができるはずだ」という主張です。
しかし、コーネル大学の行動経済学の教授であるケイトリン・ウーリー氏らが調査した25年の研究データに照らし合わせると、「例えリスクを知っていたとしても、人々はその瞬間の誘惑に耐えられず、長期的な視点に焦点を当てた戦略の有効性を低下させてしまう」としています。
これを受け研究記事では、研究に裏付けられた、短期的に健康的な習慣を続けるための3つのテクニックを紹介しています。
誘惑を避け、健康的な習慣をつけるための戦略の一つは、不健康な行動がもたらす短期的な悪影響を考えることです。
述べ4,000人以上の参加者を対象とした研究では、ある広告を見せた大学生が、その後エナジードリンクとそれ以外の飲み物のどちらを選択するかという実験を実施しました。
広告は2つ用意され、一方は、“糖尿病や肥満など、糖が多く含まれたエネルギードリンクを飲むことによる長期的なリスクを強調”しました。
もう一方は、“砂糖やカフェインからくる不安障害などの短期的なリスクを強調”しました。
その結果、短期的なリスクについての広告を読んだ人は、長期的なリスクについて読んだ人よりもエナジードリンクを選択する可能性が25%低いことが示されました。
同様の設定による別の研究では、砂糖を食べることによる短期的なリスク、砂糖を食べることによる長期的なリスク、あるいはマイナス面については何も強調されていないという3つの広告パターンが提示されました。
その後、参加者はクッキーかトートバッグのどちらかを選択することになりました。
短期的なコストについて読んだ人は、長期的なリスクについて読んだ人よりもクッキーを選ぶ可能性が30パーセント低く、砂糖の悪影響について読んでいない人より45パーセント低いことが示されました。
これらのことから、短期的なリスクを重視すると、他の誘惑を避けるのにも役立つことが分かりました。
短期的なリスクを知ることは、発生までに数十年かかる可能性のある長期的なリスクよりも強力な動機付けになると言えます。
アルコールの場合は、過度の飲酒が睡眠不足や二日酔いにどのようにつながるかを考えたり、ファストフードの場合は、消化不良によって起こる体の不調などかを考えると良いでしょう。
不健康な食事を摂ることとは反対に、より健康的な食品を摂取するように自分を促すためにはどうすれば良いか……。
行動科学者のアイレット・フィッシュバックらとともに行った研究では、リンゴやニンジンなどの食品の健康上の利点ではなく、美味しさに人々が注目するように促すと消費が増加することが示唆されました。
実験では、健康食品のおいしさに焦点を当てたラベルと、健康上のメリットに焦点を当てたラベルをそれぞれ使用し、5つの大学の食堂において、健康的な食品を手にするかどうかを分析しました。
これは、「健康になる!」という長期的なモチベーションよりも「美味しい!」という即時に得られる報酬によるものとされています。
この戦略は、運動などの他の健康的な行動にも応用が可能です。
また、研究の中で、ジムに通う者の中から重量挙げを伴うトレーニングを行うグループとエクササイズを行うグループに分け、指定の日数ジムで運動を行うよう指示をしました。
長期的には重量挙げの方が理想的な体格を得ることができるにもかかわらず、指定回数よりも多くこなしたのはエクササイズのグループでした。
このため、健康的な食事や運動などによる長期的なメリットで習慣づけが難しい場合、短期的なメリットに注目することで内発的動機付けが高まり、行動自体がご褒美のように感じられ、活動に没頭できる可能性が高まります。
健康的を維持するために必要なことは、そういった行動を始めること、そして最も重要なのは行動し続けることです。
行動を続けるための戦略の一つとして、報酬を利用することが挙げられます。
ウォートンスクールのマーケティング助教授のマリッサ・シャリフ氏とケイトリン氏が主導した5,000人以上を対象とした研究によると、運動やデンタルフロスなどの健康的な行動の習慣づけを図るに当たり、一度に多額の報酬を得るよりも定期的で少額の報酬を得る方が継続には効果的であることが判明しました。
研究では、最初は参加者に無報酬でトレーニングに取り組んでもらい、その後は運動後に少しずつ報酬を受け取るグループと、一定の運動をこなした後に大きく報酬を得るグループに分けられました。
その結果、小さな報酬が細かく設定されたグループは、後で大きな報酬を受け取るグループよりも長く継続し、より多くのワークアウトを完了することができました。
同様の効果は、デンタルフロスの習慣づけの実験においても見られました。
これらの研究結果は、戦略的に報酬を自分自身に与えることで、行動を習慣に落とし込むことができることを示唆しています。
4回のジム通いのご褒美として週末80分のテレビを見るのではなく、毎日ジムで運動した報酬として番組を20分間見ると言った具合です。
ただし、自分へのご褒美が早すぎると逆効果になる可能性があります。
報酬は、得るために努力しなければならない状態が最も効果的です。
ここまでをまとめると、健康的な習慣を身につけるためには、
・誘惑に負けないために短期的なリスクを考えること
・長期的な利点の他に、短期的な楽しみを見つけること
・自分に継続的に細かい報酬を与えること
が大切であることが示されました。
これらのテクニックを組み込むことで、長期的な目標を達成できるようになる可能性が高まることが期待されます。