脱毛は老若男女問わず、悩みの種になり得る症状の一つです。
2022年6月には全頭型、汎発型を含む円形脱毛症に対しての治療薬(バリシチニブ)が開発(承認)されており、症状の改善が見られるケースが増えています。
今回はそんな脱毛に対する新薬と研究のお話です。
参考記事)
・New Hair Loss Drug Approved: Restores 80% of Hair Loss In Some Alopecia Patients(2023/06/27)
参考研究)
2023年4月に発表されたイエール大学の研究によると、自己免疫疾患による円形脱毛症などの重度の脱毛は、数ヶ月毎日経口薬を服用することで回復する可能性があることが分かりました。
脱毛症は頭皮、顔、体の脱毛が特徴です。
免疫系が自分の毛包を攻撃し始めることで発症します。
多くのの患者は脱毛以外は健康なのにも関わらず、精神的、感情的に深刻な影響を及ぼすことがあります。
症状が重い患者の中には、頭皮の毛髪、まつ毛、眉毛、その他の体毛もすべて失う“全身性脱毛症”という症状が現れてしまう場合があります。
こういった重症例の場合、利用可能な治療法に対して抵抗性を示す傾向がありますが、“リトレシニチブ”という新薬がこの状況を変える可能性があります。
臨床試験では、この内服薬を服用した患者の4分の1近くが頭皮の脱毛を80%まで回復させることができました。
無作為二重盲検臨床試験の結果、米国食品医薬品局(FAD)によって12歳以上の患者への使用が承認されました。
2022年にFADによって承認されたバリシチニブに次いで2番目の経口脱毛治療薬であり、現時点では、小児にも使用できる唯一の治療薬となります。
今後数週間でリトリシチニブは、必要とされる代替薬として患者に提供されることになります。
ファイザー社「LITOFULO」という商品名で販売され、推奨用量は1日50ミリグラムとされています。
日本においてもリットフーロⓇカプセル50㎎(リトレシチニブトシル酸塩)として製造販売承認済みとなっています。
イエール大学の皮膚科医師Brittany Craiglow氏はファイザー社のプレスリリースでこう述べています。
「円形脱毛症の患者は何歳になっても発症する可能性がありますが、多くの場合十代から30代で症状が出始めます」
LITOFULOは、脱毛症と闘う若い患者にとって大きな役割を持つことになるでしょう。
LITOFULOの臨床試験では、18か国700人以上の脱毛患者の症状と投与後の効果が記録されています。
参加者は全員、頭皮の半分が10年以内に脱毛した経験があり、半数は頭皮全体の脱毛の傾向がありました。
プラセボ(擬似薬)を服用した患者と比較すると、LITOFULOを1日50ミリグラム服用した患者は顕著な発毛を示しました。
プラセボ薬を服用した患者の1.6%の発毛効果と比べ、LITOFULOを6ヶ月間服用した患者の28%は80%以上の頭皮毛髪をカバーしました。
このことは、数ヶ月から1年以上続くこともある脱毛症の初期段階において、この薬が最も効果的であることを示しています。
LITOFULOが脱毛回復させ、発毛促進する正確なメカニズムはまだ不明です。
マウスモデルや頭皮生体検査の研究では、身体の過剰な免疫反応を抑制することが分かっています。
酵素阻害剤として働くこの薬は、免疫細胞が毛包に炎症を引き起こす特定のシグナル伝達経路を阻止するようです。
一方、免疫系の通常の機能に影響を与える可能性があり、LITOFULOを服用している患者は感染症や病気にかかりやすくなる危険性があります。
これらの結果を踏まえてファイザー社のコマーシャル・オフィサーAngela Hwang氏はこう述べています。
「これまでにFADが承認した治療薬では、青少年が選べる選択肢はなく、成人に限定されるものでした。LITOFULOは、脱毛症という自己免疫疾患に対する重要な治療法の進歩です」
今回の承認によって、脱毛に悩む人達の新たな希望になりそうです。