「都会と田舎どちらに住みたい?」
どこかでそんな質問をされたことはありませんか?
自然の中でのんびり生きたい、都会の便利な暮らしを堪能してみたい。
などなど人によって意見は様々です。
住む場所によって生活のパターンが決まったり、身の回りで起こるイベントが増えたりと、場所によって生活スタイルが大きく変わります。
そんな様々な生活の中では、うつ病を患うリスクも変わったりします。
今回はそんな生活環境とうつ病リスクについての研究まとめです。
参考記事)
・New Research Reveals Which May Be Better For Mental Health: The City or The Suburbs(2023/05/26)
参考研究)
・Higher depression risks in medium- than in high-density urban form across Denmark(2023/05/24)
人間の活動拠点が密集することは、その他の自然的な場所が保存されるということにもなり、地球環境的には悪いことではありません。
しかし、人にとってより密集した地域で生活することは、騒音、大気汚染、孤独、日照不足などなど、田舎と比べると様々なストレスに直面する可能性を孕んでいます。
西洋諸国や米国の都市部のうつ病リスクが39%上昇した背景には、こういった原因があると考えられています。
しかし、どういった環境の都市がうつ病のリスクと関係しているのかについてはあまり知られていません。
これについて調べたイエール大学(ストックホルム大学、ゲーブル大学ら……)による最新の研究(2023/05/24掲載)では、郊外に住む人の方が都心に住む人よりもうつ病になりやすいことが判明しました。
ここで言う郊外とは、都市に隣接した地域、市街地周辺の地帯とします。
研究では衛星画像と機械学習を用いて、1987〜2017年の過去30年間の建物の密集度合いや建物自体の高さなどの都市形態を定量化しました。
平成から得られた年データと個人レベルの住居、健康状態、社会経済などを組み合わせ、75,650にのぼるうつ病に関する症例を調査しました。
その結果、最もうつ病のリスクが高かったのは、都市に隣接し、無秩序に広がった郊外で生活する人した。
逆に、最もリスクが低かったのは、周辺にオープンスペースがある都心の多層ビルで生活する人でした。
郊外で生活する人のうつ病のリスクが相対的に高くなるのは、車での通勤時間が長いこと、公共のオープンスペースが少ないこと、ショップやカフェレストランなどの商業施設が多くできるほど住居密度が高くないことが一因でないかと考えられています。
しかし、郊外に住むメリットがないわけではありません。
プライバシーの保護や静寂、自分の庭があることを好む人もいます。
目的があって郊外を選択する場合は、その人にとってより良い選択肢になるでしょう。
また、都心の密集度合がうつ病に影響を与えるという明確な相関は見られませんでした。
これは密集した都心部では社会的なネットワークや交流の機会が比較的多く、それが精神的な健康に役立つ可能性があるためだと考えられています。
これらのことから、自動車に依存しないライフスタイルや海岸線、湖、または都市公園などのオープンスペースへのアクセスを向上させる空間デザイン都市計画の一つとして取り入れる根拠となり得ます。
そういった状況への移転、居住は経済状況にも左右されます。
デンマークで行われたこの調査がすべての国で当てはまるとは限りませんが、より良いオープンスペースがある地域は、他と比べてより高価になることは明白です。
低所得者に対して不平等さを助長させないような都市創りを考えるきっかけとなることが期待されています。
・都心より郊外に住む人の方がうつ病のリスクが高い
・オープンスペースを有する都心はうつ病のリスクが少ない
・これは社会的な交流をとれるスペースが多いことが一因と考えられる
・うつ病のリスクの低減は社会的交流があるかどうかに深く関係がある
都会はストレスが多いと言われますが、環境の整った場所があると話は別なようですね。
以前まとめた“他人に親切にすることについての研究”では、社会との接点をもつことがメンタルの安定につながるということが分かっているようです。
今回の研究も都心でかつ社会的なコミュニティが身の回りにあることによって、うつ病のリスクが下がることと関連しているようですね。