勃起不全(Erectile Dysfunction)の治療薬として代表的なバイアグラ。
EDの治療薬といえば有名すぎるほど有名な薬です。
バイアグラの有効成分であるシルデナフィルは、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)という酵素を阻害することによって効果を発揮します。
勃起のメカニズムとしては、陰茎の海綿体内においてシクリックグアノシンモノリン酸(cGMP)というシグナル伝達物質が作用し、平滑筋の血管を拡張させることで勃起を誘発や持続といった反応が起こります。
PED5はこのcGMPを抑制してしまう効果があります。
PED5が多く存在することによって性行為中に勃起の持続ができなかったりと、いわゆる勃起不全を引き起こしてしまいます。
バイアグラもといフィルデナシルは、このPED5を阻害する薬です。
PED5が阻害されることで、海面体中のcGMPレベルの減少を防ぎ、血管拡張を持続させる(勃起を持続)させることができるのです。
バイアグラの成分は本来、狭心症に対する治療薬として使われてきましたが、勃起不全にも効果があるとう作用(副作用)が発見されるようになってから、EDの治療に使われるようになったという経緯があります。
この血管の拡張作用は、陰茎や心臓、各種内臓を含む様々な血管に作用することが分かっています。
そして、その効果は“脳”にも及んでいますが、それらによる脳への影響は未だ明らかになっていません。
これまでの研究では、シルデナフィルなどのPED5阻害薬が、陰茎の血流を促進させるだけでなく、認知症の原因となる神経変性を防ぐことが可能なことも示されています。
今回はそんなED治療薬とアルツハイマー病に関する研究まとめです。
参考記事)
・Huge Study Confirms Viagra Cuts Alzheimer's Risk by Over 50%(2024/03/25)
参考研究)
クリーヴランドクリニックやインディアナ大学(他)の研究者らは、FDA承認の勃起不全の治療薬は、アルツハイマー病のリスクを減らすための治療法のひとつとして選択可能なことを発表しました。
米国の研究者は、バイアグラ(シルデナフィル)の遺伝的および神経学的影響に関する膨大なデータを分析し、それらの成分がアルツハイマー病など脳内の神経変性を防ぐ可能性について検証しました。
これまでの研究でも、シルデナフィルをはじめとするホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤と呼ばれる酵素遮断薬が、認知症の原因となる神経変性の防止につながる可能性が指摘されており、今回の研究はその裏付けのひとつとして考えることができます。
動物を対象とした過去の研究では、シルデナフィルが神経細胞内のタウタンパク質の過剰なリン酸化を減少させ、認知能力や記憶を改善に役立つことが示されています。
研究者らは、アルツハイマー病患者の幹細胞から作成されたニューロンの細胞培養を使用して、シルデナフィルの治療効果やそれに関連する代謝および遺伝的活動を分析しました。
5日間の処置の後、実験室で管理されたニューロンは、過剰な濃度のリンを伴うタウタンパク質の生成が有意に低いレベルになったことを確認しました。
これらの影響がアルツハイマー病のメカニズムにどのように関与しているかを明らかにするためにはさらなる研究が必要になりますが、シルデナフィルの影響を受ける遺伝子たちを理解することは、なぜアルツハイマー病を発症するのかを理解するための助けとなるだろうと研究者らは述べています。。
続く研究では、シルデナフィルを処方された患者を含んだ医療保険データを基に、AIによる統計的な分析を行いました。
その結果、シルデナフィルがアルツハイマー病のリスクを約60%減らすことができることを発見しました。
しかし、これらは一部の保険データベースのみを対象としており、相関関係の域を超えないことに注意が必要です。
クリーブランド・クリニックの生物医学情報学者であるFeixiong Cheng氏は、「我々の調査結果は、アルツハイマー病患者におけるシルデナフィルの潜在的な有効性をさらに検討するための証拠を提供するものだと信じている」と述べています。
世界的な高齢化によって、認知症の数は20年ごとにほぼ倍増しています。
今後10年間では8000万人弱、2050年頃にはおよそ1億4000万人になると予想されます。
シルデナフィルがこれらの世界的な病気に歯止めをかける可能性があるなら、この分野を研究する価値は大きいと考えられます。
この研究はIOS Press Content Libraryにて詳細を確認することができます。