もの盗られ妄想をしてしまう、料理などの複雑な作業ができない、言葉の意味が分からなくなる……認知症の初期症状にみられるこれらの症状。
老化に伴って発症するリスクが高まる認知症ですが、若年層(65歳未満)でもその危険性は十分にあります。
最新の研究では、そういった認知症のリスクに関係するいくつかの行動が明らかになりました。
今回は、そんな若年性認知症(young-onset dementia)についての記事まとめです。
参考記事)
・Major Study Identifies 15 Factors Linked to Early Dementia Risk(2024/01/08)
参考研究)
・The Patterns of Inheritance in Early-Onset Dementia: Alzheimer’s Disease and Frontotemporal Dementia(2014/08/21)
エクセター大学、マーストリヒト大学は、英国の65歳未満の356,052人分のデータを対象に、若年性認知症のリスクについての分析を行いました。
分析の結果、社会経済的地位の低さ、社会からの孤立、聴覚障害、脳卒中、糖尿病、心臓病、うつ病はすべて、YOD(young-onset dementia:若年性認知症)のリスクと関連していたことを報告しました。
以下に、分析された若年性認知症のリスクを上げる因子をリストにします。
【リスクを増加させる要素】
・ビタミンDの欠乏
・C反応性タンパク質の増加(何らかの感染などによって増える)
・過度のアルコール
・身体的脆弱性(握力の強さによって計測)
・慢性的なストレス
・孤独
・うつ病
エクセター大学の疫学者デビッド・ルウェリン氏は、「発見された様々な要因をターゲットにすることで、YODのリスクを軽減する手助けになるかもしれない」と述べています。
ビタミンDの欠乏や何らかの感染によって広がる高レベルのC反応性タンパク質(炎症に反応して肝臓から産生されるタンパク質)も、ApoE4 ε4遺伝子変異体(アルツハイマーを引き起こすとされる因子)と同様に高いリスクがあることが分かりました。
また、研究者らは、アルコールと若年性認知症の関係はより複雑であると伝えています。
過度のアルコール乱用はリスクの増加につながりましたが、中程度の飲酒はリスクの低下と相関しました。
おそらく、中程度に飲酒をとどめている人々は一般的に健康であることが多いため、若年性認知症のリスクが低下しているのだろうとされています。
高いレベルの教育や身体的脆弱性が低いこと(握力強度によって測定される)も、若年性認知症リスクの低下と関連していました。
「高齢者による認知症の研究から、修正可能な危険因子があることはすでに知られていた」と、オランダのマーストリヒト大学の神経疫学者セバスチャン・ケーラー氏は語っています。
身体的要因に加えて、慢性的なストレス、社会からの孤独、うつ病などメンタルヘルスも重要な役割を果たしています。
ここまでの結果は、これらの要因によって認知症が引き起こされることを証明しているわけではありませんが、より良い治療法や予防策の開発に役立ちます。
また、これらの要因の多くは運動や食事、メンタルの管理など個人の努力によってある程度コントロール可能です。
リスクを知ることで最終的には認知症から遠ざかり、より健康的な生活を送ることができるかもしれません。
マーストリヒト大学の神経科学者スティービー・ヘンドリックス氏は、「若年性認知症の影響を受ける人は通常、仕事や子育てなど生活を常に管理しなければいけないため、発症した場合は深刻な影響を受ける」と述べています。
また、「認知症の原因はしばしば遺伝的であると考えられているが、実際は何が原因なのかを正確に把握できていない。研究を続け、他の危険因子も調査したいと」とまとめています。
研究の詳細はJAMA Neurologyにて確認することができます。