「一日1万歩」というのは、健康的な習慣の一つとして耳にしたことがある方も多いかと思います。
身体活動が増えることは病気を予防するため、健康を手に入れるために必要な行為です。
デスクワークなど座ることの多い現代では、活動によるメリットよりも動かないことによるデメリットを得てしまっている人が多いと推測できます。
海外の研究者チームは、一日に一定以上歩くことによって、座ることで得る心血管疾患(CVD)を含む多くの死亡リスクを低減可能であることを明らかにしました。
今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・Scientists Reveal Optimal Number of Daily Steps to Offset Sitting Down(2024/03/15)
参考研究)
シドニー大学が行った7万人以上を対象としたバイオバンクのデータ分析から、毎日9,000~10,500歩のステップを踏むことで、座ることに起因するとされる死亡リスクが低下することが分かりました。
オーストラリアのシドニー大学の人口健康科学者マシュー・アフマディ氏は、「この結果は、運動をすることが重要であることを示している。毎日の歩数を増やすことで座ることによる健康被害を相殺することができ、またそうすべきであるというメッセージになる」と述べています。
研究では、英国バイオバンクに登録されている72,174人(およそ30年間分のデータ)を対象に平均6.9年分の健康データについて分析を行いました。
参加者は、歩いた歩数や座っている時間などの身体活動を推定するため、手首に加速度計による計測装置を7日間着用しました。
測定から、座っている時間の中央値は一日10.6時間だったため、この値よりも多くの時間座っていた人は「座る時間が多いグループ」とみなされ、値よりも座っている時間が少ない人は「座る時間が短いグループ」とみなされました。
データの正確性を高めるため、最初の2年間において検査の中で“健康状態が悪い可能性がある”参加者はこの研究に含まれていません。
そのため、調査結果は少なくとも“研究スタートの2年間において一般的に健康だった人にのみ”に適用されます。
ただし、潜在的に歩数に影響を与える障害などがある参加者が含まれていたかどうかは不明です。
これらの条件の上でチームが導き出した結果は、座り過ぎによる健康リスクを低下させるのに最も効果的な歩数は、毎日9,000~10,500歩だということでした。
このおよそ1万歩の歩数は、CVD(心血管疾患)リスクを21%、全体的な死亡リスクを39%低下させることが示されました。
また、参加者の座っている時間に関係なく、1日あたり約4,000〜4,500歩のステップでも上記結果半分程度の効果を得られることも分かりました。
この研究によって、座っている時間が長い人は、死亡率と罹患率のリスクが増加する傾向にある(関連性が高い)ことへの証拠を強めるとともに、死亡率と罹患率を減らすための重要な介入方法として、毎日歩くことを治療の一つとして処方する根拠の一助になると考えられます。
この研究はBritish Journal of Sports Medicineにて詳細を確認することができます。