朝、ラウンジで本を読むのが好きだ。
読むといっても最近はまっているのはAudible。
アマゾンのサービスで本を読み上げしてくれる。
今日もiPhoneを握りしめラウンジに向かう。
ドアを開けて、息をのんだ。
まずい。
本日のラウンジ、華やか具合が3割増し。
そう、麗しの駐妻会が開催されていたのだ。
そこには、日本的カジュアルに身を包んだメイクばっちり女性が3名。
A)黄色ニット+デニム
B)ピンクTシャツ+ベージュのプリーツスカート
C)紺ニット+白のパンツ
日本だ、、、ここは日本。
別に避けているわけでもなんでもないのだけど、同じアパートなのに絡んだことがない。いやむしろ私は日本人として認識されているのか。当方、ユニクロ短パンにカメラ屋さんでもらったパーカー、ビーサン、もちろんノーメイク。
気まずいなぁ、、、
若干空気が止まった気がしたけど、ソファ席に陣取りトランプ暴露本「Fear」を聞く。中身は完全にコメディ。コメディだったらどれだけよかったか。いやーこんな大統領まじでやだな、、、アメリカ人お疲れ様、、、という気持ちになる。
が、集中できない。
最近気が付いたけど、母国語のパワーはやっぱりすごい。大音量で英語を聞いているのに、僅かに聞こえる日本語に意識が持っていかれる。
諦めて、Audibleを止める。
「やること、ないんだよねー」
黄色ニットの話を聞く。
彼女はインドネシア、オーストラリア、そしてニューヨークと3か国目らしい。英語が話せず、幼稚園へのお迎え時にアメリカ人に話しかけられるのが苦痛とのこと。
「もう飽きちゃって、、、」
そうだよねー、とピンクTシャツがうなずく。
「1か国目は新鮮だったけど、ニューヨークって飽きるよねー」
紺ニットもうなずく。
確かに、ニューヨークって先進国の都市部だし、生活に慣れたらなんら新鮮味はないかも。英語が話せないってことは友人も日本人のみだろう。ぶっちゃけ、東京の方が楽しいよね。
「やること、ないよねー」
このセリフ、何度目になるだろう。
進まない会話にこちらが飽きて席を立った。
外に出て、結局いつものカフェに移動する。
「Fear」の続きを聞く。あまりに酷い内容にちょっと笑いそうになる。そして、ふと彼女たちの会話を思い出す。
「やることがない」
今日の私も同じく「やることがない」人だ。
違いはすっぴんで一人でカフェに出て「Fear」を聞いてニヤニヤしているくらい。だけど、心のどこかで彼女たちを見下しかけていることに気が付く。
見知らぬ地を転々とする生活を考える。言葉が通じないストレスを考える。「やることがない」しか会話のない生活を考える。それがどれだけ大変なことか。
いや、大変なのかもわからない。
黄色ニットは鬱かもしれない。
ピンクTは十分に幸せかもしれない。
紺ニットは野心家かもしれない。
同じように見える彼女たちの人生にも、それぞれ全く異なる経験が隠されているんだろう。
他人の人生を評価する。
その馬鹿さ加減に気が付く。
姿勢を正し、本の続きを聞く。
人生の評価なんて、トランプくらいかけ離れている人間に対してくだすのがちょうどいいんだろう。
本当のことなんて、誰にもわからないんだ。
MALIS