駐妻 & ドS女と楽しむ「トルコ風ピザ」

ニューヨークの日系お料理会でMALISは、富豪女性およびアッパーウェスト在住の駐妻ひとみさんと仲良くなる。ひとみさんから女子会に誘われうきうきのMALISのもとに、深夜メッセージが届く。（前回）

時刻は夜1時をまわったところ。

お茶会後、まじめなMALISは学校に戻り大量の宿題を確認、いつものごとく図書館に籠ることになった。

「MALISさん、僕もう帰りますね」

同じ学校に通う日本人が声をかけてくれる。整った顔だち、嫌みのない爽やかな服装、徹底したレディーファースト、控えめながら自信のある態度ーー。育ちの良さを具現化したような人だ。彼のおかげで校内における日本人への好感度は爆上げと言ってよい。

お疲れさまーと手を振る。気が付けばフロアにはあと2人しかいない。

はあ、、、

そこに届いたひとみさんからのLINE。

明日のディナー、何か変更になったかな。

開いてみる。

ん？

あ、あれ？

私、疲れてるのかな、、、

LINEって、メッセージが吹き出しで届くと思ってたんだけど、、、

画面いっぱい広がる真っ白な世界。

目がおかしいのか？ 上を見上げる。

この図書館、ヨーロッパ風で超きれい。頭の上にはろうそく型の明かりが灯っている。

って、それはどうでもいい。

もう一度確認する。ああ、これメッセージ長すぎて画面に収まってないだけじゃん、びっくりしたよーもう。

って、何故に長文！？

スクロールする。

！？！？！？

画面に収まりきらぬ吹き出しを5つ確認。
恐る恐る先頭に戻り内容を確認する。

その夜、MALISは恐怖に怯え、人気のない図書館で何度も後ろを振り返ることになるのであった。

内容は、富豪のペントハウスについてだった。

簡単にいうと、富豪との会話からマンションの位置を特定し各種ウェブサイトで価格を推測。買ったと思われる年からして、実はあんまり高くないし古い物件だし富豪が住むにはいまいちだよね、ってことが言いたいらしい。

これを深夜1時に？

まともじゃねぇよ。

しかし、時間は無常にも過ぎる。

ほぼ徹夜でレポートを仕上げ提出。昼の授業は眠気にひとみダメージも加わり散々だった。そこからの、ひとみ女子会だ。

「ドタキャンするのもなぁ。。。」

地下鉄1番線に乗り、集合場所へ向かう。

到着したのはミッドタウンのトルコ料理屋さん。

「初めまして！ミキって言います」

ひとみさんが連れてきたのはショートカットのミキさん。ピタッとしたブルーのワンピースにヒール。いかにもニューヨークで働く女性という恰好だ。聞けば日系商社勤務、ワイン講座に通っていてひとみさんに会ったらしい。

「ひとみさんの旦那さんに比べたら、うちなんて小さいところだから」

ひらひらと手を振ってこたえるミキさん。たしかに、ひとみ夫氏は最大手。しかしミキさんとこも十分大手だ。

あんなメールの後だが、ひとみさんとはにこやかに会話。MALIS、自分の適応能力を心の中でべた褒めする。

美味しいレストランは？カフェは？エステは？といった話題から、徐々に話はプライベートな話題へ。そしてついに、ひとみ夫氏の話に。

ひとみさんによると男を捕まえるのは確率論であり、

・とにかくコンパに参加、これは義務
・優良株を連れてきてくれる女友達確保
・一部上場企業勤務は彼氏の必須資格

らしい。

「結果、私は商社マンを捕まえたのよ」と。

ただ、結婚した途端にお姫様扱いが終焉、すっかり冷めきった夫氏との関係を聞くに、あまり良い戦略ではないかもしれない。

「冷めてるけど、稼いでくれるからメンテナンスはしてあげないとね？」

、、、やはりこの人怖くないですか。

ここでトルコ流ピザが到着。

サラダを載せて、

くるくる巻いて食べるスタイル。
これをピザって呼ぶのは無理があるけど美味しい。少しミンチ肉の臭みが残っているのをレモンを絞ってとばす。

「私、ぶたれて喜ぶくらいのドMな人が好きで」

ミキさん突然の告白にMALIS、ピザをふきそうになる。

詳しく聞かせてもらっていいかな！？

聞けばミキさんはドS。最近ドMのアメリカ人と婚約したばかり、同棲生活でも暴君ぶりを発揮しているらしい。

盛り上がる女3人のもとに、トルコ流デザートが到着。

手前はいわゆるクリームブリュレとほぼ同じ味だが、ボリューミー。

でさ、職場でもミキさんドSなの？

「職場？日系だよ？ドSになってやるのも勿体ないわよあんな所！」

と、ここで急に職場をディスり始める。飛び出すトンデモエピソードに日本の将来が心配になるが、ミキさん話が面白すぎる。

特にお気に入りは、ニューヨーク支社に異動早々「景観が悪いので女性社員を近くに移動させるように」と指示したエリート社員の話。そんな会社に勤めていたらブログネタに困らないだろう。ぜひとも入社したいものだ。

すっかり聞き入ってしまった。

MALISは人心の機微を察するのが得意なタイプではない。むしろ苦手。だから気がついてなかったんだ。

ひとみさんが、黙っていることに。

（次へ）

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません

＜今日の舞台＞

「Sipsak」

トルコ人もお勧めの本格トルコ料理がいただけるミッドタウンのレストラン。
裏メニューのトルコ風ピザは一度はトライしてほしい一品。

住所：928 2nd Avenue, New York, NY 10022

 

MALIS

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