9歳の時の運動会の事。
俺はクラスで1番か2番目に足が速く、リレーの選手に選ばれた。
特に練習もしてなかった。
でも、1番足が速いと言う事は、みんな走るのが疲れるから嫌だったのだろう。
多分そんな理由で、みんなやる気がなく嫌いだったと思われる。
今思えば 俺は特別足が速い訳では無かった。
でもクラスで1番早いのだから、選ばれて嬉しい。
そして俺は天狗になった。
当時、同じ学年で桁違いに足が速い人が1人いた。
名前は、とばりあつし君。
背が高くが体位も良い子だった。
何度か彼と走った事があったが、俺の2倍以上速かった記憶がある。
この時、彼にだけは勝てないと完全い諦めていた。
当然彼もリレーの選手に選ばれていた。
俺はどう頑張っても2番だと諦めていた。
でもクラスの子たちの期待度が半端ない。
そして、運動会の当日。
特に対策も無く、特に練習もせず、 俺のリレーの出番が来てしまった。
俺が選ばれたのは、個人リレーと、バトンリレーだった。
最初は個人リレーに出場した。
そしてリレーのスタートがきっておとされた。
とばりあつし君は、スタートで先頭に来ず、あえて1番後ろについていた。
彼は毎回、足が速すぎて、みんなにコースを邪魔されるからだ。
その対策を、おのずとしていた。
この時俺は、ある事がひらめいた。
後ろから抜かして来た所に、脇からわざと出て走るコースを邪魔してやろう。
そんな、卑怯な事が頭の中をよぎった。
そして彼は、内側から追い上げてきた。
俺はさりげなく内側に行き、彼と接触に成功!
とばりあつし君は思惑通りコケて 遥か後方へコースダウン!
俺は、これで追い抜かれないと確信した。
だが、彼は外側から、はやての様に我々全員を追い抜いて行った…。
その光景を見て、一緒に走っていた全員が、走りながらあっけに囚われていた。
そして圧倒的な速、で彼はゴールイン!
完全にお手上げだった。
コケさせたのに…。
とばりあつし君は1番で、しかも圧倒的な速さで、ゴールした。
俺は、とばりあつし君を見て、何をやっても無駄だったんだと気が付いた。
そして、圧倒的な実力差を思い知らされた。
今でも俺は、彼のあの速さは化け物並みだと感じる。
逆に、俺が彼に勝っていたら、卑怯な手を使った事に一生悔いただろう。
おかげで今は、悔いた辛い思い出になってはいない。
俺は、とばりあつし君に感謝してる。