思い出「現状打破」

【2人の先輩】

俺がデニーズに勤めていた19歳の時。

俺より先に入社していた、1つ上の先輩がいた。

名前は、聖電さん。

俺は、その先輩と凄く怖い本間先輩の下で働いていた。

この聖電先輩は、凄く優しくて相談にもよく乗ってくれた。

確か、北海道から来たと言っていた。

この時期のデニーズの社員は、なぜか北海道出身者が多かった。

この聖電先輩は、仕事も凄くまじめで人間性も良い。

あの恐ろしい本間先輩とは、大違いだった。

先輩なのに友達みたいに話せて、解らない事があると助けてくれた。

非常に頼りになる良い人だった。

本間さんからも、あまり怒られる事がなかったので頭も良かったのだろう。

毎日10回は本間さんに怒鳴られている俺とは大違いだった。

【予感】

俺はある時、気になる事を本間さんから聞いた。

聖電みたいな生活はするなよと。

この時俺は、何のことかさっぱり解らなかった。

本間さんは、俺と聖電先輩が話しているのをよく見ていた。

そこで、聖電先輩に何か吹き込まれたのかと思ったのかもしれない。

でも俺から見れば聖電先輩は、全く問題がない普通の人に見えた。

そして、事件が起きた。

聖電先輩が出勤時間になっても出社してこない。

30分待っても、1時間待っても、連絡すらない。

そこで、本間さんが社宅に電話してみたが、電話に出ない。

本間さんは、嫌な予感がしたのか今から聖電さんの家に行くと言い出した。

そして我々を残し、出かけて行ってしまった。

1時間たっても本間さんが戻ってこないので、俺は心配になってきた。

そこで、本間さんに電話してみる事にした。

俺はこの時、携帯電話を持っていなかったので、事務所から連絡してみた。

【逃亡者】

本間さんに電話がつながり、状況を聞いてみる。

そうしたら、家の中は家具も無く、もぬけの空だという。

どうやら夜逃げをしたらしい。

本間さんは、キレまくって「社会人として絶対に許さん！」と吠えていた。

その後、本間さんはいったんデニーズに戻り、この日は普通に仕事をした。

でも終始機嫌が悪く、俺の方もこんな状況で恐れながら仕事をした。

その後、本間さんは同期に入社した聖電さんの友達に連絡を取っていた。

その友達から、新事実が発覚した。

どうやら聖電さんは、友達複数人からかなりの借金をしていたらしい。

その借金を返せなくなったから、夜逃げする事を友達に話していたそうだ。

これで、夜逃げが確定した。

もう行き場所もすぐにばれる。

なぜなら当時は、住民票を登録すれば自動的に電話帳に載るからだ。

そして1月後。

聖電を言う名前を、役所に依頼して国民台帳を調べてもらった結果が来た。

聖電なんて名前は、日本に滅多にいない。

案の定すぐに発見されてしまったようだ。

【後悔から学ぶ事】

聖電さんの引っ越し先は、静岡県の掛川市。

そこに連絡を取り、1度デニーズに来るように伝えた。

それから1週間後、聖電さんがデニーズに現れた。

聖電さんは、事情を話し、めちゃくちゃ叱られていた。

そして会社を辞める事になってしまった。

俺はこの時、洗い場にいて事務所がそばにあり、話の内容が聞こえていた。

聖電さんが帰る時、俺に挨拶を入していった。

俺の様に借金は絶対するなよと。

こんな退職の仕方は、凄く残念でならなかった。

後、本間さんが昔言っていた聖電のような生活はするなよの意味も解った。

本間さんは、聖電さんがギャンブル好きで借金をしている事を知っていた。

だからあんな事を言ったのだと。

俺はこの時、立派に見える人ほど失敗の大きさがでかいんだなと感じた。

良い人に見えて実は、ではなく失敗をし後悔しないと良い人にはなれない。

そう感じる事が出来た。