米川正夫訳が青空文庫に登録されて早二年。
暇を見て少しずつ読み進めていたが、終盤第六篇から急に面白くなってきたので一気に読了。
言わずもがなの世界文学最高峰だが、既に後期の傑作群を通過した身には、『悪霊』ほど深くなく、『カラマーゾフの兄弟』ほど汎くない本書に肯定的な評価を与えるのが躊躇われた。
贖罪なき煩悶や懊悩が反転し、救いの光が兆すエピローグを読むまでは。
葬式の場で悪しざまに罵り合うシーンやスヴィドリガイロフの自殺に全く理解が及ばなかった自分にも、この最後に希望が残された書が受け容れられた理由は判る。