狐憑、山月記、文字禍と錚々たる作品が連なる『古譚』4篇の中では如何せんマイナーな感じだが、見ていて惚れ惚れするような字面のバランスは相変わらずだし、パリスカスの謎が次第に明らかになる過程の求心力も凄まじい。
〈前々々世〉なるワードにはあの映画の主題歌を想起せざるをえず、意外と現代的だったりする。
何より中島敦最大級の武器である寓話的な含みに関しても、他の3篇に引けを取らない。
無限遡及の根源的恐怖。
凡てを知るとはこれ即ち狂うこと。
単なる異国の転生譚では決してないのだ。