赤煉瓦の西洋館に住む裕福な一家が、十六ミリフィルムの映写を観賞するシーンから物語は始まる。
不吉な前兆に導かれるように起こる怪事の数々。
若く美しい御曹司の一郎にも危難が及び、我らが名探偵・明智小五郎の出陣と相成るが、遂には一家の内に犠牲者が現れ、名探偵も凶弾に倒れる。
洋館を跳梁する怪人の正体やいかに。
明智小五郎シリーズ後期の長編で、大した活躍はないが助手の小林少年も出てくる。
暗黒星に喩えられる意外な犯人は割とあっさり見当がつくものの、事件は解決しても定番の大団円には程遠い後味の悪さは特筆もの。
終盤にある〈アメリカのある非常に聡明な殺人犯人の話〉は、どうやらヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』らしい。