青空文庫2023年8月8日公開分。
遠野物語と同日だが、こちらは読了まで随分時間がかかった。
現代語訳のみ読むつもりだったのが、ふとした気紛れで原文も読むことにしたためだ。
今で言う短編集の体裁に中編サイズの「蛇性の婬」を放り込んだり、終盤に別ジャンルの物語を配したりとその姿勢はアナーキーですらあるが、特に原文を読むと淀みなく紡がれる文体のおかげで統一感が顕著だ。
日中古典文学の翻案につき、実はかなり高度な教養主義的ハイコンテクストが要求されるところ、そこまで踏み込まなくても充分面白いのはさすが古典的名著。
劈頭の「白峯」でいきなり西行&崇徳院のビッグネームを召喚して読者を惹きつける手腕はお見事。
「蛇性の婬」の真女児(まなご)が原文だと真女子(読みは同じ)になっていて、何故子→児に置き換える必要があるのかよく判らなかったが、Wikipediaも真女児だし、そもそも真女子で検索してもほとんど出てこないので真女児がデフォなのか。
あと霊的な話や祟り話が多い中、ラストの「貧福論」のみテイストがおかしい。
明らかに浮いている。
ボーナストラックみたいだ。
ていうか本当におまけの一編だったのかもしれないなこれ。