これは傑作。
最初の一文でタイトルの真意を仄めかせ、「蕁草(いらくさ)の刺毛で弄(いら)われ」なんて地口も覗かせる。
直木賞作「鈴木主水」と同時期とのことで、ノリノリで書いていたに相違ない。
つまりは肥大化した殿様のアレをどうにかせねばという滑稽譚なのだが、生真面目な文体に乗せて語られる当事者らの懊悩、医学界の嘆きといったあらゆるシリアスな要素が笑いに帰着するという見事すぎる展開。
澁澤龍彥、都筑道夫、向井敏ら本読みのプロ中のプロに絶賛されたのも納得の【珠玉】の短編。