『マネジメント』で知られるドラッカーは、成果を上げる上で、「時間の管理」がいかに大切かを強調している。
これがとても面白い。読み返すたびに考えさせられ、しばしば耳に痛い。
今回は、ドラッカーを引用しつつ、「職場における時間の無駄遣い」についてまとめたい。
仕事における時間のムダは、個人やチームなど、いくつかのレベルで考えることができるが、この記事でまとめたいのは「間違ったマネジメントのせい」である場合だ。
つまり、時間を無駄遣いする仕組みが、組織の構造の中に備わってしまっているのである。
これについて、ドラッカーは四つの原因を挙げている。
いつも決まった時期や時間に混乱が起きたり、同じような混乱が繰り返されたりする場合、何が問題なのか。
これは「予測できるものを予測しようとしていない」せいだ。
すなわち、先見性の欠如である。
ドラッカーは「繰り返し起こる混乱はずさんさと怠慢の兆候である」と一刀両断する。
その上で、こう語る。
繰り返し起こる混乱は予知できる。したがって、予防するか、事務的に処理できる日常の仕事にルーティン化しなければならない。
ーードラッカー著『経営者の条件』P65
予測できるはずことに、きちんと対応しないのは、せっかくの経験を生かさず、無駄に捨てているのと同じことだ。
ルーティン化すること、すなわち、蓄積した経験を、体系的かつ段階的なプロセスにまとめることによって、判断力のない未熟練の人でも天才を必要とする仕事を処理できるようになる。
よくマネジメントされた組織は、日常はむしろ退屈な組織である。そのような組織では、真に劇的なことは、昨日の尻ぬぐいのための空騒ぎではない。それは、明日をつくるための意思決定である。
ーードラッカー著『経営者の条件』P66
つまり、いい組織は、しょっちゅう起こる問題のために、頭脳や労力を割いたりしないのだ。
人が多すぎると、余計な仕事が増える。
まず、連絡や調整に時間を取られる。
ドラッカーの言うところでは、仕事の時間の一割を、人間同士の協力や、反目、摩擦などに関わる問題に割いているならば、人が多すぎることは確実である。
組織は、大きければ大きいほどいいわけではない。「適度な規模」があるのだ。
ドラッカーは、「至難なことだが」と前置きした上で、「理想的に設計された組織とは会議のない組織である」と言い切る。
会議に出ている間、その人の仕事は止まっている。誰もが会議をしている組織は、なにごともなし得ない組織である。
会議の過多は職務の組み立て、組織の単位に欠陥があることを示している。例えば一つの仕事や組織単位に属すべき仕事がいくつかの仕事や組織単位に振り分けられていること、責任が分散され情報が必要な人間に与えられていないことを示す。
ーードラッカー著『経営者の条件』P69
情報の不全には、まず、情報に関わる機能障害がある。つまり、必要な部署に必要な情報が届いていない場合である。
さらに悪く、しかもよく見られるのが、不適切な情報である。使い物にならない情報の整理やその伝達のために、労力が割かれている事態である。
システムの欠陥や先見性の欠如、人員の過剰、組織構造の欠陥、情報の不全など、時間の浪費を招くマネジメント上の問題は直ちに改善する必要がある。もちろん粘り強い努力を要するものもある。だが成果は大きい。特に時間に関わる成果が大きい。
ーードラッカー著『経営者の条件』P71
こうした組織上の問題は、個人の努力で改善するのは難しい。やはり、チームでの取り組みや、経営陣の積極的な関与が不可欠である。
以上は、私の勤めている職場で、いちいち思い当たるので、今回まとめてみた。
ドラッカーは、いつ読み返しても、発見や気づきがある。
ドラッカーは、つねに新しい。
(2020年3月11日)